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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Soaring Chick
36/596

014

「ほんとに、へいき?」

「平気平気。なんとかなるって。さ、危ないから下がって下がって」

「……ん」


 そんな心配そうな顔しなくても。

 やっと『これだ』って思うものが見つかったんだ。試すしかない。


 手始めにイリアの部屋の近くにある階段の上から。

 ジャンプして、地面に着く前に翼で飛ぶ。完璧。


 別に踊り場から大ジャンプするわけじゃない。

 大丈夫だろうけど、念のため。高すぎると飛んだ勢いで頭ぶつけそうだし。


 例のヘンテコ機械はまだ使わせてもらえないから仕方ない。

 あんな状態でどうやればいいのかちょっと分からないけど。


 美咲にアイデアをもらった翌日。

 今日はイリアもついて来てくれてた。篝さんも。

 折角だからと思って篝さんに聞いてみたけど、篝さんも自分が使わない方法までは答えられないって言ってた。


 だから手探りで完成させるっきゃない。

 翼で飛ぶ人をとっ捕まえるわけにもいかないし、そもそも探すために時間を使うのはまだ早い。気がする。


(飛べ、飛べ、飛べ――)


 具体的な方法もまだ教えてもらってない。

 だからまず、今まで教えてもらった魔法の使い方を頼りに。


 昨日、庭でやったみたいにジャンプして勢いをつけながら――


「――飛べっ!!」


 仕上げには、思いっきり飛ぶ。


 でも。


「……とんだ」

「跳んだねー。確かに」


 飛び上がるどころかほんのちょっと先に着地しただけだった。

 こんなことしたってなんにもならない。無駄にジャンプしただけ損だ。子供でも分かる。


 でもまだ希望はある。

 今はまだ飛べないかもしれないけど、翼だけでも作れてたら。


「どうでしたか篝さん。翼とか」

「なかったよぉ。全然。やっぱり基礎的なところからやった方がいいんじゃない?」

「分かってます。分かってるんですけど、折角だから橘さんの度肝抜いてやりたいじゃないですか。こうして思いついたわけですし」

「……けっこう執念深いね?」

「? 何がですか?」


 物騒じゃない方法でやり返せるようになるかも、なんてこれっぽっちも思ってない。

 なんだかんだ言って、色々世話になってるのも本当だし。


 恩返し。そう、俺なりの恩返しだ。他意なんてない。


 でも、何も出てないなら諦めようっと。

 無理して続けたらまたエスパー美咲に余計な心配かけるし、大人しくコツとか――


「でて、た」


 ――聞こうと、思ってたんだけど。


「……マジ?」

「ぜったい、あった。いりあ、みえた」

「桐葉くんを励ましたいからって、嘘なんてついたら駄目だよ。余計に傷つけるだけなのに」

「うそ、ちがう。みえた」


 ……どういうこと?


 篝さんが嘘をついてるようには見えなかったけど、イリアが騙すなんてもっと信じられなかった。

 俺より経験豊富な篝さんが見えてなかったなら出てないだろうし……でもイリアの言葉も……うぅん?


「もう一回やってみてもいいですか? そうしたらはっきりすると思うんですよ」

「……みえた」

「いやいや、イリアを疑ってるとかじゃなくて。イリアにしか見えない翼だったかもしれないだろ? ほら、泣かない泣かない」

「えぇ……?」


 我ながらなんて無茶苦茶な言い訳。

 篝さんが引くのも分かる。言ってる俺もどうかと思ってるんだから。


 でも本当にそれくらいしか思いつかない。

 逆に、イリアの目が凄くいいってことになるけど……どうなんだろう。その辺り。


「念のために記録とっておこっか。桐葉くん、もうちょっと右行ってくれるぅ?」

「了解です。……じゃあ、いきますよ」


 神話の天使みたいな、お美しい感じじゃなくたっていい。

 いつかきっと必要になる。


 翼を広げて、大空へ。


(風を突き破って、高く、に――!?)


 その時、不思議なイメージが浮かんだ。


 どんどん地面が遠ざかって、真っ青な空の中を駆け上がっていって。

 白い雲も、手が届きそうなくらい近くにある。


 それだけじゃない。


 確かに、風を感じた。


 師匠に空から突き落とされた時と似ているけど、何かが違う。

 もっと心地のいい、清々しい……とにかく、違う。


「――っ!?」


 ……なんだ、今の。


 落ちたことなんてどうでもいい。痛くもかゆくもない。

 勝手に出た声なんてどうでもよかった。


 今もはっきり残ってる。

 一瞬だけ時間が止まって、まるで別の世界に放り出されたみたいな不思議なイメージ。


 でもあの中では、間違いなく飛べてた。

 あの時背中に感じた違和感はきっと翼だ。


「きりは!?」

「大丈夫、つい口から出ただけだから。……どうでした? 篝さん」

「……聞かない方がいいよ?」

「それが答えになってるじゃないですか。イリアは?」

「みえ、た」


 やっぱり。


 何がどうなってるのか分からないけど、やっぱりイリアには見えてる。

 それも多分、さっき俺の頭の中に浮かんだものがほぼそのまま。


「……何か掴めたって顔だね?」

「いいえ全く。むしろ余計に分からなくなっちゃって。あとで画像、見せてもらえません?」

「そんな顔には見えないけどぉ?」

「手掛かりみたいなものは掴めたかもしれないんです。……もうちょっとだけ、付き合ってもらえませんか?」






「……それでわざわざマットを引っ張り出して走り幅跳びを始めたというわけか、貴様は。時計も見ずに」

「その、ちょっとばかり熱中しちゃいまして……」


 いやはや怖いね。夢中になるって。


 本当に全然気づかなかった。

 っていうか篝さんどこ行った? 逃げたんじゃないだろうな、おい。


「熱中するのは勝手だが時間の確認を怠るな。馬鹿者が。そこの小娘まで連れ出して――」

「小娘じゃなくてイリアです」

「……とにかく、そいつまで連れ出してどうする。何かあっても貴様では責任が取れんだろう」

「……ハイ」


 呼べよ。呼びたくないのかよ。イリアが気にしてないからいいけど。


「それで首尾は? 少しは得るものがあったんだろうな」

「それが全く。さっきの感覚もあれ以来さっぱりで。……あれ、何だったんでしょうね?」

「何でも私に聞けばいいと思ったら大間違いだ。たわけめ」

「橘さんだったら何か知ってるかなって」

「無茶を言うな。はっきり映像が浮かんだなんて聞いた事もない」


 ちぇっ。またこのパターンか。


 でも、あまり文句を言う気にはなれなかった。

 魔法を扱い始めたから逆にはっきり分かる。あんなのおかしい。


 今まで覚えた魔法だってあんな方法で習得したわけじゃない。

 確かに炎を頭の中に浮かべたりはしたけど、あそこまではっきりとしたイメージは浮かばなかったから。


 ……本当になんだったんだろう。一気に怖くなってきた。


「何かないんですか? ちょっとくらい。こう、空を一気に駆け上がっていくっていうか……とにかく風を突っ切る感覚が気持ちよかったんですけど」

「神堂のやり方でとうとう頭までおかしくなったか……」

「ありそうですけど。確かにちょっとありそうですけどそれは止めましょうよ。あとで怒られるの俺かもしれないのに」

「まるで私だったら問題ないかのような言い草だな」

「だって橘さんは実際に言ったじゃないですか」


 俺は今回関係ない。

 しかも人の事頭おかしいとか言いやがって。


 もういい。喧嘩になっても放っておいてやる。


 もしかしなくてもそのせいか。

 篝さんが逃げたのも。勘弁して。


「しかし何故、走り幅跳びを始めた? 同じ方法で再現ができただろう」

「できなくなったから別の方法で試すしかなかったんです。何か手掛かりがあればなー?」

「……バンジージャンプ程度なら提供してやれるが?」

「そういうところだけ似るの止めません? 師匠も橘さんも」


 どこに需要があるんだよ。即刻返品希望だよ。むしろお詫びの品が欲しいくらいだよ。


 やれってか。またあの地獄のような体験を味わえってか。ふざけんな。


 安全装置がある分まだマシ。比較的。辛うじて。なんとか。

 ……でも、確実に回収してくれるって意味なら師匠もあまり変わらないような。


 っていうか、この田舎町のどこにそんなもの作る気だ。この人は。

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