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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Soaring Chick
33/596

011

『調査の結果、あの森の中に発生装置のようなものが仕掛けられていたことが分かった。


 次から次へと現れていたのも、召喚者が見当たらなかったのもおそらくそのためだ。ある程度位置を絞られているんだろう』


 分かる。

 大事な連絡だってことくらいは分かる。


 でも別にこんな時間に寄越さなくても。

 いいじゃん。学校終わるタイミング見計らって教えてくれればいいじゃん。


 それか朝。

 途中経過だけでも聞かせてくれてたらそれなりに話も変わってたと思うんだけど。


 美咲との約束をなんとか守れた翌々日。


 イリアには抱き着かれて、篝さんから無事を喜ばれて。

 何故か学校では佐藤と高橋からは睨まれた一日は本当にあっという間だった。


 襲われた日に比べたら本当にびっくりするくらい平穏な一日だった。

 日常万歳。なんなら教団の連中、どこかで自滅してくれればいいのに。


 さすがに一日空けたくらいじゃ襲われる事もなくて、今朝も拠点にお邪魔した。

 イリアと喋って、二人で朝ごはん食べてまた来るまで学校へ。

 実に贅沢なハードスケジュールだった。


 美咲も親も今のところは納得してくれてる。

 でも多分、いつまでもは続けられない。その辺りは橘さんも相談しながら決めるって言ってた。


 助かる。こういうことに関しては師匠よりあてにしてもいいかも。

 でもイリアからかと思ってトイレに駆け込んだ苦労は返せ。


(……あ、チャイム鳴った)


 一応拠点の所在までは特定されてない筈ってメールには書いてあった。


 でも逆に、あの道を通ってるのはバレたってこと。

 組織のメンバーが拠点を行き来する時は都度違う道を使ってるって話なのに。


(……って、俺のせいか)


 何が『他の地域では貴様と同年代でも訓練に参加している者はいる』だよ。

 こんな調子じゃ各所で場所特定され放題だろうが。


 教団の側にもそういうやつはいると思うんだけど、教えてもらえないから分からない。

 橘さんの話だとこの学校にはいないみたいだけど。


 今のところ、特に転校生が来たなんて話も聞いてない。

 さすがにそんな露骨な方法なんて使わないか。組織もさすがに気付くだろうし――


 ――prr♪


「へ? あ……イリア? もしもし?」

『げん、き?』

「いや眠い。退屈で今にも寝そう」

『じゃあ、げんき』

「イリアがボケの流し方を習得してて嬉しいよ俺は」


 どこの誰だイリアにあれこれ吹き込みやがったの。

 篝さんか。橘さんか。……どっちもありそうだけどないんだよな。


「ってそれはいいんだよ。どうした? 何かあった?」

『……あれ、うるさい』

「止めとけイリア。どっちのことか知らないけど、人のことを『あれ』呼ばわりは止めとけ」

『だって……しつ、こい』


 何したんだよ。どっちがやったんだよ。


 可能性としては篝さんの方がありそう。

 あの人、懲りずにイリアに絡もうとしてるみたいだし。

 イリアがもうちょっとだけ友好的に接してくれたらなあ……


「だってもへったくれもないだろー? 今日は俺もなるべく早く行けると思うから。もう少しだけ待ってくれよ」

『じゃあ……このまま、でんわで』

「それ俺が叱られる。もしケータイ取り上げられたらさ、学校の時間にこうやってイリアと話すこともできなくなるんだからな?」

『なんとか、ならない、の?』

「破るために用意された校則なんてさすがにないからな」


 今だって本当はバレたらヤバいし。

 おかげでいつもより声抑えなきゃだし。


 あと怖い。そんなことしたら美咲が怖い。

 昨日から機嫌はいいけど、もし電話しっぱなしだったなんてバレたら一気に鬼モードになるのが目に見えてる。






「何があったの天条。とうとう学力まで退行した?」


 おい。


「あのさ、深山。とりあえずみたいなノリで暴言吐くのそろそろ止めない? お前の家にはそういう挨拶する文化でもあるの?」

「そんなわけないじゃん。普通に考えなよ」

「じゃあもうちょっと普通の挨拶してくれよ」


 もう昼休みだけど今日はまだ顔合わせてなかった筈なんだけどな。


「……そんなだから深山女王とか呼ばれるんだろ……」

「だったらいっそ、天条も跪いてみる?」

「お前それクラスメイト全員にやってみろよ。俺に言う前に」

「大丈夫。天条以外にそんなことしないから」


 それを聞いてどう安心しろと?


「ちなみにさ、今ファイルに青少年向け電話相談室のカードが入ってるんだけど」

「意外。天条ってそういうのはすぐに捨てると思ってた」

「普段ならな」


 合ってるよ。

 それに関しちゃ大当たりだよ。


 むしろなんでこんなものが残ってたんだか。


「で、結局なにしてんの? 子供向けみたいな問題とにらめっこして」

「聞くなら正解言うなよ。色々あって、ちょっと頼まれて。……言っておくけど、別に俺が解くわけじゃないからな?」

「そのくらい分かってるし。天条に頼むなんて変わった人もいるのね」

「ならなんで最初『学力まで退行した?』なんて言った? おい」


 悪意だよな。悪意以外の何物でもないよな。


 本当に俺にだけこんな態度とってるなら逆にヤバい。

 俺を相手にしてる時のあれこれだけで女王呼びされてるってことになる。


 そうじゃなかったらそれはそれで問題だし。

 ……本当に大丈夫なのか?


「なんでもないけど。やたら美咲が嬉しそうだったから話聞いたのに、結局天条が約束すっぽかしそうになったって分かっただけ」

「もう一回言ってくれよ。録音するから」

「でも事実じゃん」

「だからってそこだけ強調するのはどうなんだよ」


 ため息までつかなくたっていいだろ。


「したくもなるわよ。もうちょっと気を付けてくれない? 最近美咲、本当に天条のこと心配してるんだから」

「……分かってる」

「言質とったわよ」

「そこでどうしてそんなこと言うんだよお前は」


 怖ぇよ。って、本当にメモ用紙出してるし。


 そりゃ女王呼びもされるわ。

 気付いてないだけで絶対他でも何かやってる。


 さっきの忠告だけならただのいい友達なのに……


「なんで天条がため息ついてるわけ? 呆れてるのはこっちなんだけど」

「いや、美咲でもどうにもならないんだなって思うとつい……」

「天条の態度が?」

「深山の毒舌が」


 事実じゃん。

 睨むってことは思い当たる節あるってわけだろ。


「どしたの、二人とも。さっきいつもの三人が『ヘルプ』って言ってたんだけど」

「「その話詳しく聞かせて」」

「なんでそこだけ息ピッタリになるの!?」


 利害が一致したからに決まってるだろ。

 むしろそれ以外ない。


 深山も同じようなことを考えてるに決まってる。

 顔を見ればさすがに分かる。


「ところで何それ。手書きのテスト?」

「そ、頼まれたんだって。何故か天条が。変わった人もいるよね」

「見てくれてる人は見てくれてるんだよ。これでも」

「二人ともそこまでにして。お願いだから。問題作りなら手伝ってあげるから」

「だって。よかったね天条?」

「静乃ちゃん」

「分かってまーす」


 美咲がそこまで言うなら仕方ない。


 深山もそうくる筈――なんて、思ったのは完全な油断だった。


 いつの間に掠め取ったんだか、問題用紙を握ってる。

 当然、渡す相手は美咲だった。


「でも見てよ。この絵。何か分かる?」

「車じゃないの?」

「じゃあその隣」

「んー……多分だけど、猫?」

「最後。その次」

「…………」


 美咲は何も言わなかった。


 そこに描いたネズミを見て何度も首を傾げてる。


 嫌な予感がしたけどもう遅い。

 近づけ、遠ざけを繰り返していた美咲は結局、問題用紙を返してきた。


 どことなく諦めたような、申し訳なさそうな表情で。


「……ごめんね。きっくん」

「止めて。そこで謝らないで。その方がダメージデカいから。ほんとに」


 こんちくしょう。

 悪かったな。ド下手くそで。

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