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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Soaring Chick
24/596

002

 薄暗い倉庫みたいな部屋。


 隅に積まれた段ボールに隠れながら、顔を少しだけ覗かせてた。


「よかった。そこにいたんだな。待ってろよ。今行くから」

「っ……!」

「……俺、もしかしなくてもまた怖がられてる?」


 師匠か。やっぱり師匠のせいか。

 それか橘さん。


 どっちも目つきキツいんだよなぁ……黙ってたらイケメンの部類なのに。

 しかも態度も高圧的。どうにかした方がいいってあれ。


 ……でもそういうことなら、あの二人が来たらもっと悲惨なことになるよな?


「俺だよ、桐葉だよー? 誰も何もしないから。そんな隅っこにいると性格まで暗くなるぞー?」

「きり、は……?」


 見えてないのかよ。

 確かに光源になりそうなものすらないかも。でもそんなことある?


 ……っていうか何だここ。独房の方がまだマシに見えるんだけど。


「大丈夫。危なくない、危なくない……そのまま抜けて、こっちにおいでー?」

「ぅ……」

「そうそう、そのままそのまま」


 なにやってるんだろう俺。ベビーシッター?


 本当に大丈夫なんだろうか。あの子。

 いくらなんでもいろいろ難があり過ぎる。


 冗談抜きで知識量は子供といい勝負なんじゃ――って!


「危ない伏せて!」

「ぴ――っ!?」


 段ボールの山が崩れかけてた。


 整理してあっても所詮サイズはバラバラ。もし中身なんて入ってたら――!


「ぎ、ギリギリセーフ……」


 なだれ落ちてきたけどそんなの関係ない。俺のせいじゃない。

 四つん這いで支えなきゃいけなくなった被害者だ。むしろ。


 右も左もほぼ全部ダンボールで埋まってた。

 投げてダンボール合戦でもしろってかやかましい。


 背中にかなりの量が乗ってるけど痛くはない。大丈夫。

 実はほんの少し痛いけど言うほどじゃない。あの子も無事だ。


(あ、危なぁー……! 誰だよこんなところに雑にダンボール積み上げたバカは!)


 空箱だからって限度がある。

 怪我してたら治療費請求してやるとこだぞこの野郎。


「――は……」


 それにこの山、よく見たら俺より高いじゃん。

 辛うじて崩れなかった部分を隙間から見ただけだけど、ほぼ天井スレスレまで積み上がってる。


 このくらいだと……大体三メートルくらい? やっぱりバカか。

 こんなになる前に処分しとけよ。ゴミじゃん。


「――り、は……!」


 そう言えばどうしようこのゴミの山。派手に崩れちゃったけど。

 いっそ人のこと置いて行った罰って、全部片づけさせて――


「きり、は……!」


「……うん? どした?」

「んっ! んー……っ!」

「いや『ん』とだけ言われても。俺、美咲みたいにエスパーなわけじゃないんだよ。ごめんな?」


 あとこの体勢地味にキツイ。

 下手に動いたら一気に全部崩れそうだった。


 この子、なんでさっきから俺の名前以外『ん』とか『っ』とかばっかりなんだか。

 あ、そういえば山の中で逃げるって聞かれたっけ。


(でも靴のことも知らなかったよな……)


 最初はあり得ないと思ったけどこの反応、本気っぽいし。

 となると……


「……もしかして、このゴミのこと言ってた?」

「ご、み?」

「ごめん今のなし。分かったから大丈夫」


(なんて、口では言ってみたけど……)


 どうしようもない。このゴミの山、本当にどうしようもない。


 振り返れないからどこがどうなってるのかほとんど分からなかった。

 この子に訊きたくてもまた暗号解読ゲームが始まるし。


「師匠ー! 橘さーん? どっちでもいいからいたら来てくれませんかー?」


 ちっ、役立たず。

 真面目に探せよ二人とも。魔力探知の話はどこいったんだか。


 手と足だけで支えるのもそろそろ限界なのに。

 さすがに無理だな。この姿勢のままじゃ。


「……ごめん、ちょっと体勢変えるからジッとしてて」

「?」

「あ、動かなくていいから。そのままそのまま。――っと、肘つかせてもらって……」

「!?」


 俺一人なら抜け出せないこともないんだけど。

 せめて床をもうちょっと柔らかい素材にしてくれてたらなぁ……


(今のままじゃこの子も頭が痛いだろうし、腕を枕代わりに、っと)


 そう思って、首の裏に手を回したのが間違いだった。


「~っ!!」

「わっ!? ちょっ、どうしたんだよいきなり! 暴れるなって危ないから!」

「きり、は! きり、は!!」

「名前だけ呼ばれても! 崩れる! 上の段ボールが崩れるから!」


 やばいやばいやばいやばい!


 今ので完全に崩れた。

 その上この子が暴れるからもう何がどうなってるんだか分からない。


 っていうか殴るな、殴るなって!


「……こんなとこでお楽しみか? オマエ」

「んなわけないでしょうが助けてください!」


 誰か見つかったらどうしようと思ってたら一番めんどくさい人に見つかったし。






「ぅ……」


 結局続きは、段ボールを隅に避けてそのまま倉庫で。


 でも、気の毒なくらい女の子は怯えてた。


 でも服は引っ張らないで。破れる。

 さっき教団の連中に追いかけられたせいで大変だったから。


「ほら、二人が威嚇するからですよ。離れてください」

「悪かったな。この顔は生まれつきだ」

「オドオドしてんのが悪いんだよ」

「無茶言わないでくださいよ。あの白ローブに追われてたんですから」


 化け犬も魔法もありで。


 あんな恫喝紛いの叫び声聞かされたら怖くもなる。

 この子だって本当なら普通に生活してた筈なのに。


「(……それと、もしかしたらなんですけど。この子一般常識すら怪しいかもしれません。名前はもちろん他の何もかもがさっぱりで)」

「(確かなんだろうな?)」

「(上とか避けての一言も出ないなんて普通、ありえないじゃないですか)」

「(証拠としちゃ弱いがな)」

「(分かってますよそんなこと)」


 何もそこまで疑わなくたっていいじゃないか。


 少し前まで得体の知れない連中に追い回されてたっていうのに。

 どいつもこいつも、俺が会ったやつよりずっと攻撃的だった。


「記憶喪失……いや、或いはそれ以上に深刻な状態か。とんでもないものを連れて来てくれたな、貴様」

「だからそういう態度やめてくださいって。多分、全部筒抜けですよ。この子にも」

「関係のないことだ」


 じゃあもう向こう行けばいいじゃん。


「天条もキレんなよ。特別にこっちで生活するスペース用意してやってんだ。それなら文句ねぇだろ?」

「大ありですけど。師匠が面倒見たら俺の時みたいなことするじゃないですか」

「ハッ、誰がするかよ」

「神堂……貴様まさかこんな中学生相手に……」

「そこじゃないでしょうが」


 今の立派な問題発言だよ。

 偉いんだか知らないけど誰か止めろって。まともな大人もいないのかよ。


「っていうかなんなんですか? 生活するスペースって。まさかこの倉庫みたいな場所で寝かせる気ですか」

「もう少しは考えろ。たわけめ。既に部屋を用意してある」

「用意したっていう部屋の内装がここと同レベルだったら意味ないんですけどね?」


 さすがにないだろうけど。

 こんな自信満々の顔で言うくらいだし。ドヤってんじゃねぇよ。


「納得できないのならついて来い。貴様も見れば納得するだろう」

「そりゃご丁寧にどうも。……これから君が使う部屋に行くんだけど、どう?」

「?」

「またか。まあいいけど。とりあえず、手」

「ん……」


 よかった。今度は通じた。


 いまいちセーフとアウトの境目が分からない。

 なんとなくのニュアンスで受け取ってることもあるだろうし。俺がそうしてるみたいに。


「……なァ橘。俺いいこと思いついたんだけどよ」

「却下だ」

「ンでだよ」

「どうせ天条桐葉にあの少女を任せようとでもいう気だろう。貴様は」

「それが一番だろうが。断言してもいいぜ。あのガキ、しばらく天条以外は信頼しねぇぞ」

「……分かっている」


 丸聞こえなんですけど。いやわざとか。


「俺はそのつもりですよ。乗り掛かった舟だし、ここに任せておくと何するか分からないし」

「今すぐその何かやってやろうか? え?」

「そうやってすぐ脅すの止めましょうよ。暴力はんたーい」

「はん、たーい?」

「テメェも便乗してんじゃねぇぞコラ」

「貴様が向きになってどうするんだ馬鹿者が……」


 今更だけどなんなんだろう。この集団。

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