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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Fateful Encounter
19/596

019

『おかけになった電話番号は現在電波の届かないところにあるか――』


 だろうと思ったよ!


 非常事態なんだよ。まさに今、掛けるべきタイミングなんだよこっちは。

 クソ、こんなことならもうちょっと捕まえておくんだった。


 他に誰を頼ればいいのか分からない。

 結局、この前の騒ぎでも他のメンバーには会えなかった。


 そもそも師匠はどうしてこんなやり方を続けてるんだか。

 組織の施設なら設備も整ってるって言ってたくせに。


 訓練を受けたっていうその人達の姿はどこにもない。

 あんな真っ白い服で歩いてるのに。目立ちたがりかよ。


 ここからでもよく見える。あの趣味の悪い白いのがはっきりと。


(いや、どういうこと? ほんとになんで?)


 この前一気に捕まえたって話は? もう解放したとか言わないよな?


 人除けの魔法みたいなものがあるって言ってた。

 どんな格好をしても気にも留められないとか、そんな感じの魔法。


 この前のやつらみたいに普通の格好の方が良さそうだけど。

 あれは特に未熟な証らしい。人除けの魔法すら使えない連中だって師匠が言ってた。


 つまり、遠くに見えてる連中はあの大学生みたいなやつらより強い。

 ひょっとしたら、人の首絞めてくれやがったあいつと同じくらいかも。


 そんなやつらがまた街の中に。


(……見逃したらマズい、よな)


 何を企んでるか分かったもんじゃない。

 師匠もいつメール見てくれるか分からないし。


 このまま放っておいたらきっと後悔する。






(おいおいおい……)


 追いかけた結果、桐葉は全く別の後悔をすることになってしまった。


 山と呼ぶにはやや低い自然の中。


 桐葉の周りには木。木、木、木。


 道は全くと言っていいほど舗装されておらず、桐葉にはどこが正規のルートなのかさえ分からなかった。


 既に日は傾きかけ、鬱蒼とした茂みが桐葉の視界を塞ぐ。

 今の桐葉には数メートル先すらはっきり見えなかった。


 その上、少しでも気を抜けばすぐ足を取られそうになるほどの傾斜。

 今どこに自身の敵がいるかも分からない桐葉は下手にライトも点けられない中を進んでいた。


 山の周りにはポツンポツンと家があるだけ。人通りもほとんどない。


 市の中心部から大きく離れた地区。

 生まれて以降、この街に住み続けている桐葉も今までほとんど近付いたこともないような場所だった。


 桐葉の目には、教団が何かを探してるように映った。


 山に入っていったのは全部で五人。

 桐葉からは遠く、その詳細までは見えなかったものの、何度も大きな紙を広げていた。


 教団は探すべき対象に夢中になるあまり、桐葉に気付いていない。


 しかし桐葉も理解していた。

 安心してこれ以上距離を詰めてしまったらその瞬間に見つかってしまうことを。


(師匠も気付けよ早く……!)


 大まかな場所まで何度も神堂にメールを送っていた。

 しかし返信はただの一度もない。


 山へ入る前、最後のチャンスと思ってかけた電話。

 しかしそれに応じたのは無機質な留守電サービスの音声だった。


「どうだ? 見つかったか?」

「いえ、まだ……」

「反応もありません。どこかに逃げたのでは……」

「いいや、必ずこの山の中にいる筈だ。木を根絶やしにしてでも探せ!」

「「「はっ!!」」」


(怖っ)


 桐葉には信じられなかった。

 こいつらそこまでやるのかよ、と。


 桐葉が息を潜める辺りまで問答無用で焼き払ってしまうのではないか。


 声が近いからこそ余計に桐葉へ恐怖を与えた。


 何度も隠れる木を変えながら移動を続けていた桐葉。

 幸いにもそちらに教団の視線が向けられることはなかった。


(『いる』ってことは人だよな……? こんな山中に? 誰が?)


 教団を追っている最中、桐葉は一度もそんな人物を見なかった。


(ってやば。全員奥に向かうつもりかよ)


 足元に気を付けておかなければ、簡単に気づかれてしまう。

 見つかれば命も危うい状況下で桐葉はひどく冷静だった。


(こんなに大勢集めてなに考えてるんだ、あいつら……?)


 それだけ強い相手がいるのでは。


 一瞬浮かんだ可能性を桐葉はすぐに否定した。

 もしそれだけの力を持っているなら、かつて自身を襲った怪物を呼び出している筈だと。


(なんで呼び出してないんだ? あいつ鼻も利くらしいし、速いのに)


 呼び出せない理由など桐葉に分かる筈がなかった。

 桐葉にとっては、教団が所かまわず呼び出せる存在という認識しかなかったのだ。


「ここにいることは分かっている! 早く出てこい!」

「逃げ場がないことくらい分かってんだろ! あぁ!?」

「逃げ場なくなるまで焼き払われてぇか!」

「(チンピラかよこいつら……)」


 その程度でないことは桐葉もよく知っていた。


 教団の行動はあまりに過激だった。

 思わず桐葉が、見つかった瞬間を想像して身を震わせてしまう程に。


 木を踏み潰す音が聞こえた。

 震え上がるような怒鳴り声も。


 教団は本気だった。本気でこの山をめちゃくちゃにしてでも探し出そうとしていた。


(あの白ローブがそこまでこだわるなんて……)


 桐葉の頭に浮かんだのはかつての彼と同じ立場の人物だった。


 しかし彼はすぐに否定した。


 こんな場所に逃げる必要がないのだ。

 教団が血眼になってまで探そうとする利点が思い浮かばなかった。


 脅しをかけ、放置しておけばいいのだから。


(っていうか、どうやって逃げたんだ……?)


 思考が巡る。明確な答えを得られないままひたすらに。


(クソ、こんなときばっかり中途半端に頭回ったってなぁもう……!)


 はっきりしたことは何一つとして分かっていなかった。

 答えまでたどり着けない自分自身への苛立ちが桐葉に募る。


(下手に追いかけるんじゃなかった……っ)


 今のままではどうにもならない。

 そのことを理解していたらこそのことだった。


(どうやって戦えばいいんだよあんなの……!)


 怪物であればまだなんとかなったかもしれない。

 まだ、人と戦うだけの意思は固まっていなかった。


「ほら出てこいよ!」


 そんな桐葉の脇を、炎が駆け抜けた。


(あ、危なっ……!?)


 一瞬でも遅れたら。


(見つかる……!)


 炎の魔法。


 飛来する火球を前に桐葉は身を潜める。

 その場を離れるチャンスは、攻撃の手が止んだわずかな時間だけだった。


「おい、今向こうに影が見えなかったか?」

「っ!?」


 走り出した桐葉。


 その姿をとうとう教団が視界の端に捕らえた。


「まさか。そんなわけがない。さっきも見間違えて時間を食ったのを忘れたか?」

「いや、いた。絶対にいた。……出てこいよ! 業火よ反逆者を焼き払え!」


 再び炎。


(って、しかも火炎放射!?)


「やっぱり何もいないじゃないか。眼鏡変えろよ」

「一ヶ月前に買ったばかりの新品だ! チッ、紛らわしい……!」


 教団が放った火炎放射は、桐葉の()()()()()()()()()


(あ、危なぁ――――っ!!?)


 屈んで動くな。

 師の教えにまたも桐葉は救われた。


「まったく、早く奥を探せば済むことなのに何故そんな無駄なことをするのだお前は。ほら行くぞ!」

「絶対いると思ったのに……」

「リーダーも焦りすぎですよ。ヤツは袋のネズミです。泣き叫んですぐにでてきますよ」


 声が遠ざかる。

 その中身は桐葉にとって聞くに耐えないものだった。


(性格最悪かよ……)


 すぐには追い駆けられなかった。

 捕まったら最後。勢い任せに何されるか分からなかったのだ。 


(このままなんとか少しずつ距離を保ちながら――)


 その時、茂みが揺れた。


「うそっ……!?」


 ――見つかった!?


 焦るあまり枝を踏み退く。


「っ……!」


 目を閉じ衝撃に備える。


 しかし、桐葉に追撃が及ぶことはなかった。


「お、女の子……!?」


 何故なら、そこに隠れていたのは怯えきった少女だったからだ。

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