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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Fateful Encounter
16/596

016

(本っ当に迷惑かけることしかできないのかよあの連中は!)


 家が近くて本当に、本当に助かった。

 鍵も全部掛けたし多分大丈夫。……今はさすがに一人で家に戻る気になれない。


(母さんも父さんも無事だよな? 何もなけりゃいいけど……クソッ!)


 今はまだ仕事の時間。その筈。


 家からそんなに近くない。でもあの波みたいな何かが届いてたら……!


 さすがに周りの家までどうにかする時間なんてなかった。

 一応師匠が塀の向こうに移動させてくれたから大丈夫。多分。


 多分その人の家じゃないだろうけど非常事態だ。


「……おばさんもすみません。とんでもない迷惑かけちゃって」


 多分ここと同じで、家の中にいた人も皆ぶっ倒れてると思う。


 いくら目撃されたくないからって。

 こんな町中まで巻き込むことないだろ。


 他に害はないって師匠は言ってた。

 一応、美咲の呼吸も荒れてない。と、思う。


 ……まさか幼馴染をベッドに寝かせることになるなんて。

 おばさんもこっちに連れて来ておけばよかった。


(普段あれだけデタラメやってるんだから早く倒してこいよな……!)


 とにかくこうなったらもう師匠に頼るしかない。

 場所は分かってるみたいだし、戦って負ける筈ない。


 他の[アライアンス]の人も向かうだろうし、それでなんとか。


「きっ……くん…………?」


 その時美咲の目が半分、それから、ゆっくり開いた。


「美咲!? 気が付いたのか? どこか痛むところは!?」

「ふふ、変なの……きっくん、いつもより優しいね……?」

「そんなこと言ってる場合かっての! 無理して起きなくていいからな? 俺がずっと見てるから。……何があっても」


 もしかしたらあの化け犬がこっちにも来るかもしれない。


 言われなくてもそのくらいは予想できた。

 家から出るなってことは、外にいれば巻き込まれるかもしれないってこと。


 この前の大学生くらいならどうにかなるけど、化け犬はさすがにマズい。


「……そういうところ、昔から変わってないよね……」


 右手がくすぐったい。

 美咲の笑顔に元気はなかった。


「前に遠足の日に私が熱出したでしょ。あの時きっくんも休むって言い出して……実は結構、嬉しかったんだよ?」

「あの時は結局母さんに引き摺られて行っただろ。っていうかいつの話持ち出してるんだよ……」


 言われてやっと思い出せたレベル。


 あった。確かにあった。

 前々から一緒に行こうって約束してたっけ。


 その時だって他に友達もいた。

 なんとなくだけど、美咲がいなきゃつまらないとか言ったのも覚えてる。


「それでも嬉しかったの。もー……こんな時だから言ってるのに」

「止めろよそんな。今生の別れじゃないんだから。まだ修学旅行に高校受験にその先もいろいろあるだろ。縁起でもない」

「それ、その時も私に頼るって言ってるようなものだよ?」

「そりゃ甘えっぱなしのつもりはないけど……いや、やっぱり頼る。全力で当てにする」


 そうだよ。それがいい。

 高校なんて行き先も限られてるし。


 だから早く終わってくれ。こんな悪夢。


 攻撃を当てられるようになってたら。

 化け犬くらいは何とかなったかもしれないのに。


 今はただ待つしかできない。


「手の掛かる幼馴染だなー……その気になればできるくせに」

「買い被り過ぎだっての。美咲様に比べたら足元にも及ばない」

「でも体力は私よりあるでしょ?」

「毎日走ってるんだからそれはないと困る」


 師匠にどんな目に遭わされるか。


 キレる姿が目に浮かぶ。『俺が鍛えてやってんのになんだそのザマはコラ』とかなんとか。

 駄目だ。想像しただけで寒気が……


「……ごめんね。なんか急に思い出しちゃって。うん、本当になんでもない」

「こんな変な状況にしたやつらが悪い。……なんとなく、覚えてるんだろ?」

「あのお兄さんとの喧嘩もね」


 そこは覚えてなくていいのに。いや、その後も。


 あの時だって周りに人がいた。

 気絶する前に何かを見てたっておかしくない。


(……余計なこと、してくれやがって)


 ぶっ飛ばす。いつか絶対ぶっ飛ばす。


 本当に理解できない。

 どんな理由があったらこんなことできるようになるって言うんだ。

 どうせろくでもない理由だろうけど。


「少し私もムキになってたかも。なんか、きっくんが取られちゃいそうな気がして」

「取られるって。ないない。あの人そこまで俺に執着してない。してたら怖い」

「……へー、そんな人に着いて行ったんだ?」

「俺もだから。お互い様だから。利害が一致した的なあれだから。とりあえずその怖い目やめて?」


 夢に出てきそう。


 一人、また一人と増えて逃げた先にはもっといて……ヤバい。普通に怖い。


「……ふふっ」

「……ははっ」


 でもなんだか無性に安心した。


 こんな状況なのにくだらないやり取りをして、気分を落ち着けてた。


「今どうなってるか、分かる?」

「んー……集団失神?」

「大事件だよ。それ」

「とりあえず顔色は大丈夫そうだったから。さっきおばさんもソファに寝てもらっておいたし」

「……本当に皆倒れてるんだ」


 とんでもない状況なことに変わりはないんだけど。


 どうしよう。本当に。

 声は聞こえてこないし、多分起きたのはまだ美咲だけ。


 運がよかったのか歳の差か。


 それに、師匠が打ち消せなくてよかったところもある。

 あそこにいたら絶対倒れた人をなんとかしようって言ってただろうし。


 不吉な鐘がなったのはその直後の事だった。


「ね、今チャイム鳴らなかった? 警察じゃない?」

「なわけ。サイレンも聞こえなかったし。……このままジッとしておくしかないだろ」


 もしかして気付かれた?


 師匠は大人しくしていれば大丈夫って言ってたけど。

 そう言えばあの時も声かける前から気付いてたよな……


 それでも多分、動かない方がいい。

 扉を叩かれても、きっと。


「……かなり荒っぽいね? あのお兄さんが戻って来たんじゃないかな」

「美咲はあの人にどんな印象持って――……いや、やりそうだけど。でも違う。あの人ならもうその窓の外まで来てる」

「いくらなんでもそれは非常識すぎない?」

「非常識が服着て歩いてるような人なんだからそうもなるだろ」


 そもそも玄関から入る必要ないだろうし。

 今なら師匠にバレるわけない。気分転換だから仕方ない。


 正直、そのまま待っていれば諦めて引き返すと思ってた。


「きっくん、これ……」

「……念のため俺が見てくる。ドア開けなきゃ多分大丈夫だろ。美咲は念のためここで待っててくれよ」

「待って。私も行く。……なんか嫌な予感がするから」

「だったら余計にここに隠れてほしいんだけどな、俺」


 同じだよ。俺も絶賛嫌な予感してる真っ最中だよ。


 多分そこまで[創世白教]の連中が来てる。

 下手に動けば気付かれるだろうし窓も開けられない。


 もっと感知能力を優先して鍛えてもらっておけば――


「――いの」

「……は?」

「ひ、一人ぼっちは怖いの! 言わせないでよこんなこと!」

「待った待った静かに! 声が大きいっ」


 気付かれるかもしれないだろ!


 まだ俺達以外の声は聞こえない。

 確証がないならそのまま帰ってしまえよ本当に!


「(と、とにかくお願い! こんな時に一人にしないでよ!)」

「分かった。分かったから。……そういうことなら俺もこのまま部屋にいる。向こうも諦めて帰ると思うし」

「いいの? 見に行かなくて」

「この状況、サスペンスなら確実に襲われる場面だろ」

「……あるかも」


 でもおばさんが目を覚ますのも時間の問題。そうなったら結局アウト。


 やっぱり今からでもおばさんを二階に運ぼう。美咲にも来てもらえば完璧。


「ん……? ね、きっくん。窓の外――」


「こっち来い!!」


 でも、あの白ローブがそんなに甘いわけなかった。


 間一髪。

 後ろからは窓ガラスの割れた音。


(あいつだ……!)


 やっぱりけしかけてやがったな!


「な、何!? 何あれ!?」

「こっちが聞きたい! 窓ガラス破るとか正気かあの化け物!」

「わっ、ちょっ、速いってば!」

「分かってる!」


 ちょっと我慢してくれよ……!


「…………ふえっ?」


 よかった。鍛えてもらって本当に良かった。

 お姫様抱っこしても全然重くない。


 師匠なんて待ってられない。とにかく階段を下りないと追いつかれる。

 おばさんも起こして壁際で堪えるしかない。


「あれって黒い犬……確かきっくん――」

「伏せるぞ!!」


 凝りもせずに飛び掛かりかこいつ!


 やると思った。絶対、やると思った!


「ちょっと!? こんな時に普通押し倒す!?」

「お前こそ何考えてるんだよ!? ほら早k――うおっ!?」


 またか!


 でも見える。師匠の足元にも及ばないくらい遅い。


 なら、選択肢は一つ。


「完全に獲物扱いかよこの野郎……!」


 俺がなんとかするしかない。

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