表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Awaking Tempest
152/596

018

「ほ、保健室……? そっか。あそこなら、少しくらい……」

「そういう、こと」


 いきなり『降りて』なんて言い出すからどうしたのかと思った。


 結界は壊せそうにないし、どこかに避難するしかない。

 いつの間に学校を覆ったんだよ。来た時はあんなものなかったのに。……あの化け物も。


(さっきの怪物、あの一撃で消えてたりしないかな……)


 最後のイリアの魔法は多分、直撃コース。威力もいつも通り。


 でも、当たったところまで見えなかった。

 魔法そのものの光が強すぎて、何がどうなってるのかほとんど分からなかった。


(おかげでなんとか、こっちの居場所も隠せたみたいだけど……まだいるよな、きっと)


 入り口から校舎まで遠いし、保健室は奥の方。

 あいつらが体勢を立て直しても、もう少し時間がかかる筈――


「だ、誰かいるのか!?」


 この声……誰? 他の信徒? いやでも、なんか向こうも焦ってる? ……って。


「天条君……!?」

「き、木村さん? どうしてあなたが、こんなところに……?」

「それはこっちの台詞だよ! 生きてたのか!?」

「は? な、なんですかそんな。縁起でもない……」


 勝手に殺さないでほしい。ついさっきまで本当の本当にやばかったんだから。


「そんなことより、ちょっと手を貸してもらえませんか。この人のこと、手当てしたくて」

「そちらの? そういえば、そっちの子も見覚えがない……なっ!?」


 あのバカみたいに強い怪物のせいで、篝さんが危ない状況なのに。


「奥のベッドが空いてるからそっちに! あと、寝かせたら向こうの棚からタオルをあるだけ持ってきて。濡らす必要はないから」

「はい!」


(……すぐ、ちゃんとした病院に連れて行きますから)


 あの男をなんとか出し抜いて、学校を包んでるあの壁をぶち破って、それから。

 やることは多くても、やるしかない。それ以外に手がないんだから。


 こんな状況じゃなかったら組織だってすぐに気付いてたのに。

 こんな状況だから、あんなことをしたんだろうけど。そもそもそのために騒ぎを起こしたっていうか。


(……いきなり繋がったりするわけないよな。やっぱり)


 メールも電話も全然駄目。そんなことだろうと思ったよ。

 さっきからもう何回も試した。おかげで充電もほとんど残ってない。


「基本的には俺がやっておくから、まず――」


 今出来ることって言ったら、木村さんの言う通りに動くだけ。

 俺達より詳しいんだから、もう今は任せるしかない。


「……ここはよし。それで、次だけど――」


 早い。本当に早い。本当にプロなんじゃないかってくらい、手際がいい。

 何がどうなっているのか分からないまま、気付けば手当も終わってた。


「橘より傷が浅くてよかったよ。……このまま寝かせておくわけにもいかないけど」


 あれで浅いって……そんな馬鹿な。

 木村さんのおかげで出血は止まってるけど、まだそれだけなのに……


「っ、そうだ、橘さん! 学校で会う約束してたんですよね? 一体、どこに……!」

「お、落ち着いて。隣のベッドだよ。……そっちの子より怪我も酷かった」


 これだけ手際よく応急処置ができるんだから、きっとそういう意味。

 カーテンに隠れたベッドに、ちゃんと橘さんはいる。いる筈。


「っ……」


 分かってるのに。そのくらい、ちゃんと分かってる筈なのに。


 だって、あの怪物の攻撃なんて、喰らったらきっとひとたまりもなくて。


「橘さん……!」


 篝さんより酷い状況って言う言葉の意味も、なんとなくだけど、見れば分かった。見ていられなかった。


「あまり揺らすなよ。……なんとか止血はできたけど、危ないことに変わりはないんだから」

「は、はい……でも、一体どうして、こんな酷い傷に……」

「君も見たんだろ。あの男が、何か得体の知れないものを呼び出したところ」

「……見ました」


 六本脚の、あの怪物。

 地面を引き裂くくらいに力が強くて、空高くまで届くジャンプ力もあって。


 前に、合体して出来上がったデカブツよりやばいんじゃないかって、思った。


「本当にいきなりだった。地面が小さく揺れたと思ったら、いきなり黒い水みたいなものが地面から噴き出して……」


 しかも、それだけ強い癖に地面の中に消えることもできる。

 あんな暗闇の中じゃ探しても見つからない。あの赤目も、結局一度も見えなかった。


「すぐに消えたから、その時は何とか逃げ出せた。でも、隠れられる場所もそんなになくて……」


 だから、きっと、橘さん達もそうだった。

 あんな奇襲、常に身体を固いバリアで守ってなきゃ防ぎようがない。


「……じゃあ、それでここまで? だったらどうして俺達が死んだなんて話に……」


 ……おかしいとおもった。


 一瞬だけ見えた橘さんには、上半身にも傷があったから。

 篝さんは、腰から下だけだったのに。それでも十分、酷い怪我。


「違う。問題はその後だよ。……二人で走って、逃げて、なんとか物陰に隠れたんだ。橘もその時はまだ意識はあったから」


 普通だったら走るどころか、立つこともできないくらいの。


「……そうしたら、あの男が赤い眼をした怪物を連れてきた。それで、君のことを指して言ったんだ。『彼の命も無駄だった』って」


 ……それを、橘さんが聞いた。


(フラフラの状態で、そんな話だけ聞かされたら……)


 なんとなくだけど、橘さんがどうするか分かる気がした。

 自分達の作戦だとか、そういう状況じゃなかったんだ。きっと。


「さっき、君を見て驚いたのもそのせいなんだ。……生きていて、よかった」

「ま、待ってください。それいつのことですか? 俺達が来たのは、ついさっきで……」

「いや、正確な時間は……でも、ここに来たのはもう一時間近く前のことだったよ」


 ……だったら、嘘だ。あいつからの電話を切ったのが、大体一時間前。

 あの男と戦ってもいない。


 俺への電話が先か、橘さんへの二回目の攻撃が先か、今のところは分からないけど。


 やっぱりあの男の言葉には嘘が混じってた。


「っ……」


 だから、腹が立って仕方がなかった。あの男の下衆さに。

 木村さんの家族のこととか、何もかも利用するところに。


「…………どうして、逃げられた、の?」

「い、イリア? どうしたんだよ。急に……」


 どう考えても、あいつらが原因。

 それなのに、イリアは木村さんを睨んでる。


「急じゃ、ない。変。襲われた時、近くにいた、なら……どうして無事、なの?」


 …………え?


「さっき、言った。あれを見た、って。……いた、よね?」

「あ、いや、それは……」


 また、イリアの雰囲気が変わった。

 毒を吐く時以上に、はっきり変わってる。……ほとんど、敵意に近い。


「待った待った! 落ち着けって。今ここで揉めたって、どうにもならなんだから」

「……でも、敵、かも」

「て――っ!?」


 ……考えもしなかった。そんなこと。思いたくもなかった。

 篝さんのことだって、ちゃんと手当てをしてくれたのに。


「ち、違う! 違うんだ! あの男と繋がってるわけじゃない! あの時までは、妻と子供のことがあるから、従うしかなかっただけで……!」

「じゃあ、あれから逃げられたのは、どうして?」

「ッ…………」


 まさかそんな、ここにきてまた木村さんがあの男に従うなんて。

 いくらなんでも、こんな来るかも分からないような場所で待ち構えておくなんて。


「傷も、ほとんどない。桐葉も、私も、怪我した。……どう、して?」


 止められない。

 そんなことないって思ってるのに、イリアを止められない。


 今まで一度も見たことない顔をしてるイリアを、どうやって止めたらいいのか分からない。


「黙ってないで、答えて。……私と、桐葉の、敵? 味方?」


 その理由が薄々分かっていたから、余計に。


「…………なかった」


「なに?」


 イリアに言われて、気付かされて。


「その場所から動けなかったんだよ! 一歩も!」


 あり得ないって思っていても、どこかで疑ってる自分がいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ