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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Fateful Encounter
14/596

014


 最近、きっくんの様子がおかしい。


 どうやって帰ったか分からないなんて言ったあの日からほとんどずっと。

 いつもの冗談なんて比べものにならないくらい変だった。


 だけど何もかもが変わったわけじゃなくて、学校や家にいる間はいつもと変わらないきっくんだった。

 おかしいのは休日とか、登下校中とか、特に外を歩いてる時。


 何かに怯えるみたいに周りを見てた。何回も、何回も。

 裏道までほとんど使わなくなるなんていくらなんでも不自然だよ。


 あの時もそうだった。

 きっくんの知り合いにあんな場所に用がある人なんていない。おばさんも知らないくらいだから、絶対に。


 だからきっと、最近知り合ったっていうお兄さんも本当はあの時どこかにいた。

 余計に怪しい。あんな場所に連れて行って走るだけなんて。


 でも、走ってたのは本当。

 まだ汗がほとんど乾いてなかった。


 ……あんなに早く電話を切らなきゃよかった。

 無理矢理にでも一緒に帰っておけば、こんなことになんてならなかったのに。


 そのことを詳しく知ってそうなのは一人だけ。

 どこにいるのかも分からない、顔も見たことない人だけ。

 きっくんが言ってた断片的な特徴しか知らない。


 でもあの時は、どういうわけかその人だってすぐに分かった。






「ところできっくん」


 いつも通りの帰り道。

 今日も今日とて延長と無駄話の混じった時間を乗り切ったと思ったら。


「何か、私に隠してることない?」


 これからもう半日分、なんなら授業の一〇〇倍キツイ時間が待ってるっていうのに。

 たった今、更に跳ね上がった。これ無理。どうしようもない。


「秘密は人に話さないから秘密だと思うんだけどな、俺」

「だよね。私もそう思うよ。でも今は、そんなこと言ってられないくらい気になることがあるから」


 心当たりはありまくりだった。

 この前の一見のせいでますます疑いの目が強まった気がする。


 師匠に相談しても『なんとかしろ』の一点張りだし。

 バレたらマズいって話はどこ行った。


「っていうと……ケータイの着信音、美咲のだけサイレンに変えたとか? あ、この前酔った父さんが酒飲ませようとした話も言ってなかったよな」

「そっちはあとでじっくり話し合おっか。今はもっと真面目な話がしたいから」

「…………」


 駄目か。

 できるだけ切りたくないカード全部切ったんだけど。我ながら手札少な過ぎるわ。雑魚かよ。


 もう雰囲気的にどうにもならない。違う意味でも。

 聞かれたからって答えられることじゃない。でも、下手な誤魔化しも効かない。


 どうあがいたところで言う以外の選択肢なんてない。


「……あると言えば、ある」

「素直でよろしい。それで、具体的には?」

「言えない」


 本当に本気で怒らせるかもしれない。

 そう思うといつもとは違う意味で怖かった。


 だってそうだ。

 美咲は大まじめに心配してくれてるっていうのに、こんな答えばっかり。


「どうしても?」

「……今はまだ、どうしても」

「今はまだ、ねぇ……?」


 言える日が来るなんて思ってない。

 ラッキーが重なって、あの悪趣味な真っ白連中が内部崩壊したとかなら別だけど。


 師匠の断片的な話を聞いても、ほんの一年二年でどうにかなるなんて思えないし――


 ――prr!


「……げっ」


 ……監視してるんじゃないだろうな。


 例によって狙いすましたようなタイミングの着信音。

 メールの差出人は、登録してあるなかでも数少ない年上のあの人。


「すごい顔してるねきっくん。どうかした?」

「あ、いや、メル友から……多分、毎月恒例の感想とか色々」

「ネットで掲示板とか使うんだっけ。そんなことやってたの? 危なくない?」

「家とか喋ったわけじゃないし。とりあえず本屋で見るだけ見てくるわ」

「下校中に? わざわざ道を引き返して?」


 ……これ完全に疑われてるな。


 実際正解だし。これだから名探偵美咲は怖い。

 緊急事態以外はメール。そう言って師匠が連絡先を教えてくれたのは知り合った少しあと。


 何故かボタンの位置すら把握し切れてなかった。

 あの怪力で何台無駄にしたんだろう。


「ないない。さすがに帰ってからだって。校則は絶対遵守の美咲委員長もいるし」

「それ、いなかったら行ってたって言ってるようなものなんだけど」

「……まあ、前科あるし」

「今夜は楽しみだねぇきっくん。明日は休みだし、昔みたいに泊っていく? 今日はおじさんもおばさんも遅いって聞いたけど」


 怖い怖い怖い怖い。


 間違っても冗談なんかじゃ返せない。

 ヤられる。そんなことしたら間違いなく一瞬でヤられる。


 夕食を頼んだって話は聞いてたけど。

 用意する時間もないからって。俺だって作れないわけじゃないのにな。


「本当になんなのお前。なんで息子の俺よりコミュ取ってるんだよ」

「んー……信頼度の差?」

「やめて。効く。さすがにそれは効く」


 割とありそうだから余計にたちが悪い。

 母さん美咲の事本当に気に入ってるからなぁ……いや、おばさん達からの覚えは俺も悪くない筈だけど。


 勝てっこない。当たり前だ。

 模範的な優等生とか教員連中も偉そうに言いやがってた美咲と比べられたら勝てるわけがない。


「とりあえず内容だけでも……あ、分かってる。分かってるから。歩きながら見たりしないから」


 ただでさえ美咲の雰囲気がヤバそうなのに。

 いつもならうっかりやった瞬間にケータイを無理矢理閉じられるくらいだけど、今日はどうなるやら。


 気を付けないと中身の確認くらいはやりかねない。

 それで済ませてくれるわけない。本気で予想がつかなかった。


 師匠もなんだってこんなタイミングに……


「…………は?」


 思わず目を疑った。


 電柱を盾に隠れて内容を確かめてみる。

 それでもやっぱり内容は全く変わってくれない。


『しばらく放課後の訓練は中止だ。

 てめえが文句言うの見越して理由書いといてやるぞ。感謝しやがれ。


 綾川美咲の母親の知り合いって婆さんに近付くな。もしあの小娘がまた会いそうになったら無理矢理にでも止めろ。休みもそのためだ。


 いいか絶対だぞ。止められないならお前も行け。すぐこっちにかけろ。いいな?』


 婆さん……って、この前の?

 あのちょっと口うるさいだけで実は生徒に駄々甘なあのおばあさん?


 意味が分からない。

 どうやって美咲の母親の知り合いだって調べたのかも、いきなりそんなことを言い出した理由も。


 すぐに返信を送ったけど、家に帰っても反応はなかった。


(やっぱり探しに行くか? でもそんなことしたってどこにいるか……ああもう!)


 本当に肝心な時に捕まらない。

 思い出したようなタイミングにいきなり顔を出す事もあるっていうのに、結局これだ。


(でも……)


 もし本当に、今外に出たら。

 冷静になって考えるほど、あの白ローブの仲間に見つかる瞬間しか思い浮かばなかった。


 ついこの前追い駆けられたばっかり。思い浮かべるなって師匠から言われてもできそうになかった。

 基本的には夜間にしか出てこないって話だったのに。一体どうして急にそんなことを。


 あいつらの考えなんて理解できるわけがない。師匠はそう言った。

 理解してやろうと思っても自分がおかしくなるだけだって。


 でも原因くらいはっきりさせないと、また美咲といる時に出くわしたり……最悪、美咲が一人でいるタイミングに――


「――っ!? 師匠!?」


 このバカみたいな魔力。間違いない。


 師匠が家の近くにやって来るなんてこと、滅多になかった。

 ないわけじゃなかったけどいきなり窓の外にいたりとか、そんなのばっかり。


 理由は俺の家族まで巻き込まないようにっていうビックリするくらい真っ当なもの。


 そんな師匠が、感知もド下手くそな俺が魔力をはっきり感じ取れるくらいに。

 まさかまた空から降ってきたりしたんじゃ――


 でも、その予想は外れだった。


 窓から見てもどこにも穴なんて開いてないし、人通りが突然途絶えたなんてこともなかった。

 もしかしたら、その方がまだよかったかもしれない。本気でそう思った。


「み、美咲……?」


 家の前で真正面から向かい合う二人。

 美咲と師匠の組み合わせは人目を遠ざけるどころか、逆に注目を集めまくってたんだ。

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