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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Awaking Tempest
136/596

002

「……それはちょっと、危ないんじゃなぁい?」


 でしょうね。だと思いました。俺が真っ先にそう思ったんだから、篝さんがそう思わないわけがない。

 でも、全く納得できないわけじゃなかった。


「俺も最初はそう思いましたよ?思ったんですけど、イリア的には退けないところだったみたいで……」

「それにしたって突飛だよねぇ。力をつけたら、逆に危険だって増えるかもしれないのに……」


 言えない。さすがに、言い出したきっかけそのものは篝さんに言えない。


 ばったり出くわした橘さんが、話を聞いて思わず頭を抱えたレベル。俺だって一度は本気で耳を疑った。

 でも、イリアの目は本気そのもの。だから余計に止め辛い。


 それから、もう一つ。

 イリアがそれを見越していたのか分からないけど、真っ当な理由。

 そういう事態に遭ってほしくないことに変わりはないけど、させるつもりもないけど、そうなってからじゃ遅いもの。


「そこはほら、あれですよ。あれ。逃げようと思った時、イリアにも何かちょっとくらいあれば 思うんです。封魔石は重いじゃないですか」

「他は他で一癖あるもんねぇ。アレもうちにはほとんどないんだよねぇ……」

「アレ? 確か、前に一通り教えてもらいましたよね? まだあるんですか。何か」

「勿論あるよぉ。銃とか」

「橘さんから『拳銃だけではどうにもならん』って聞いたんですけど。俺」


 対物ライフルとかならどうにかなるのかな。

 どっちにしても、逃げながら使うようなものではないけど。


 そもそも衣璃亜になんてもの持たせようとしてるんだよ。この人。

 どうやって用意するつもりだったんだよ。


 いよいよ本格的にやばい方向に傾きかけてるよ。この組織も。


「そのくらい分かってるよぉ。今言ったのはそっちじゃなくてぇ、魔力を弾丸にして撃ち出す方。持ち主の魔力をちょっとだけ増幅させてぇ、どーんって」

「……なんか、聞いちゃいけない話を聞いちゃった気がするんですけど。今」

「秘匿事項でもなんでもないよぉ? 私だって知ってるんだから。資料室になかったぁ? 報告書」


 ……あったっけ? 見てたらとっくに突っ込んでいそうな気がする。


 だって、やばい。絶対にヤバい。

 自分の魔力を使うにしても、そんな武器があるなんて。どこの誰だよ。最初にそんなものを思い付いたマッドサイエンティストは。


「じゃあ、それがあれば……」

「あんまり期待はしちゃだめだよぉ? まだ開発も途中段階だし……どれだけ込めても、まだ《エノルムクレール》の半分の威力も出せないからぁ」

「あんなの撃てたらそれこそ洒落にならないですよ」


 どうせ、いつかはそのくらいの威力も出せるようになると思う。なんとなく、そんな気がした。

 そのくらい技術が発展する頃になっても、まだ終わってないんだろうなって。


「いい。そんなの、なくても。」

「でもぉ……衣璃亜ちゃん、魔法使えたっけぇ? 練習してないなら、基本的なところから始めないといけないんだよぉ?」

「余裕」

「桐葉くんと、しばらく別の内容をやることになるんだよぉ?」

「……スキップ」

「そういうルールじゃないから。これ。丁寧に段階を踏んで行かないといけないやつだから。しっかりやらないといけないものだから」


 見たことない。今まで、衣璃亜が魔法を使ってるところなんてただの一度も見たことがない。


 魔力を宿してる。一応、そんな話は聞いた。実際その通りだった。

 でも、やっぱり使ってるところなんて見たことない。使おうとする素振りすら見せなかったんだから。


「……だったら、使えればいい?」


 そんなことを突然言われたって、一体俺にどうしろと。


 魔法の練習どころか、誰かが使ってるところを見たのかどうか。

 まさかゲームで見たのをそのまま再現するつもりじゃないだろうし。あの手のゲーム、イリアはそこまで好きじゃなかったみたいだから。


「魔法。ちゃんと使えるなら、いい? 簡単な、もの」

「それはまあ、確かにそうだろうけど……ど、どうですか。篝さん」

「そ、そこで私に振るのぉ? でも……ん~……どれか一つだけでも使えるならいい、かなぁ?」

「分かった」


 だから、どんな魔法を使おうとしているのか想像もつかなかった。


「――……」


 目を閉じて、そっと両手を合わせたその姿は綺麗だった。

 なんて言えばいいのか分からないくらい、信じられないほど綺麗だった。


 イリアの手の中に生まれた青白い光も、スパークを迸らせながら大きくなって――……大きく、なり過ぎていて。


 誰がどう見てもヤバそう。というか、ヤバい。絶対にヤバい!

 あんなの真正面からぶっ放したらどうなるか分かったもんじゃない!!


「い、イリア。イリア! さすがにそれはちょっと待っ――」


 止める間もなく、辺りは白い光に包まれた。






「……だから、第一レーンの障害物は勿論、仕切りさえ木っ端微塵になっていたと……そう言いたいんだな、貴様等は?」

「ちょっと? 橘さん?あれだけ説明したのにまさかまだ疑ってるんですか?」

「ほ、本当なんですぅ! 信じてください!」


「その前に止めろと言っとるんだこの馬鹿者どもがァ!!」


 だと思いましたよ! そりゃそうもなるでしょうよ!

 でも、俺達にも留める時間なんてなかったんですよ、残念ながら!


「貴様も貴様だ! 威力を抑えることくらい考えろ。誰が吹き飛ばせと言った?」

「……? 誰も、言ってない」

「そういう話をしているわけではないことも理解できんのか貴様は……ッ!」


 辞めて。イリアもそれ以上煽らないで。

 煽ってるつもりがなくてもちょっと待って。さすがに駄目。


 怒ってるから。橘さん、額に青筋が浮かぶレベルで怒っちゃってるから。


「待って、待って。ちょっと待ってください橘さん。イリアはさっき初めて魔法を使ったんです。魔法が使えるなら基礎の段階はやらなくても、って」

「つまり、以前の貴様よりはるかに優秀だと」

「あの時は殴りやがってくれてどうもありがとうございましたよこの野郎」


 改めて思い出したら久し振りにムカついて来た。超ムカついて来た。

 こんな状況じゃなかったらもう少しくらい言えるんだけど。


「じゃなくて、橘さん言ってたじゃないですか。いざって時に最低限の自衛手段はあった方がいいって」

「ならばまずは威力を抑えるところから始めろ。これを『使える』とは言わん」

「じゃあ橘さんも、これからよろしくお願いしますね」


「…………何?」


 なんで首を傾げてるんだろう。この人。

 ちょっと当たり前のことを頼んだだけなのに。


「やだなぁ橘さん。俺のレベルで誰かに教えられるわけないじゃないですか。今だって、いろんな人に見てもらいながらなんとかやってる状態なのに」

「素直に認める事と開き直る事は別物だということさえ教えてやらねばわからんのか。貴様」

「分かった上で言ってるんですよ?」


 篝さんに俺とイリアの二人を任せるなんてしない筈。

 篝さんだって、自分のトレーニングもあるんだから。


 でも、他のメンバーじゃ無理。そもそもイリアが顔すら覚えてない。

 迎えに来てくれた人も何人かいるんだけどな。


「毎日は無理だって分かってます。ほんのちょっとだけでいいんです。なんとかなりませんかね?」


 いざって時に止められる人は一人でも多い方がいい。絶対。


「くっ……また爆発事故を起こされても仕事が増えるだけか……」


 師匠は捕まえたくても捕まえられないし。

 なんだかんだ言って、この人ならまあ安全。多分大丈夫。


「だが、私の授業は高くつくぞ。いいな?」

「出世払いでお願いします」

「少しは躊躇しろ、馬鹿者」


 ……なんか俺がターゲットになってない? 気のせい?

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