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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
True Feelings
132/596

013

(こんな時になんだよ……!)


 本当は分かってた。なんとなく、あのいやらしい気配を感じてた。

 聞こえない筈なのに、あの化け物の叫び声が耳から離れなかった。


(やっぱり、あいつ――)


 まただ。また呼び出した。また何か企んでる。

 美咲だっているのに。美咲以外にも、大勢の人がここにいるのに。


「今の……何? なんなの? 悲鳴、みたいな……警察呼ぶ? 呼んだ方がいいよね、これ?」

「……いや、呼ばなくていい」


 あいつらがいるなら、呼んだってどうにもならない。

 前に声をかけてきたお巡りさんだってそうだった。不意打ちだったけど、本当にそれだけで動けなくなってた。

 一応、怪我は少しずつよくなってるみたいだけど。


「呼ばなくていいから、美咲は少しでも人が多いところに。……俺、ちょっと見てくる」


 とにかくなんとかしないと。怪物だけはさっさとぶっ飛ばしてしまわないと。


 組織の人を向かわせた、なんて話も聞いてない。

 もしかしたら俺に伝えてないだけかもしれないけど、近くに誰も――


「……見てくるだけじゃ、ないんだよね?」


「へ、は? いやいや、別に俺、そんな……」

「もー……ほんとに嘘が下手なんだから。誤魔化せると思った? 見てれば分かるよ?」

「いや、だから、俺は本当に……」


 組織の人に頼んで誤魔化してもらう? いやでも、軽い処置だけじゃ美咲は結局……

 そもそもどこからバレたんだ? 最近はトレーニングだってほとんどできなかったのに。


「誤魔化すんじゃありません。……今は、全部話してなんて言わないから。行くんだよね?」


 ……どうしてそこまで言えるんだよ。

 美咲だって、聞きたいことはたくさんある筈なのに。


「……どうして、そう思った?」

「どうしてって言われても……なんとなく? でも、大事なことなのは分かるよ。……もしかして、止められると思った?」

「俺が変なことに首を突っ込んでたらどうするんだよ」

「……確かに、変かも。こんな騒ぎになってるんだもん」

「だ、だろ? だったら、どうしてそんな……」

「でも、決めたことなんだよね? なんとかしようって」


 ……どうして、こんなにはっきり言い切れちゃうんだろうな。


「それにきっくん、ちょっと意地が悪くてもそういうことできるタイプじゃないから。悪いことじゃないのは分かるよ。……それで、行くの?」


 なんだかんだいって、美咲にはかなわないってことなんだろうな。やっぱり。


 いつも、いつもそう。自分のことだけでもいいのに、わざわざ俺のことまで。

 分かりやすかったり、直接じゃなくても、その方が多いくらい、俺のこと……


「行く。ついでに、その原因もなんとかできる……と、思う。とりあえずさっきの人だけはそっち逃がすから」

「だけ、じゃないでしょ。きっくんも帰って来るの。……約束、だからね?」

「そりゃ勿論。でもほら、殿的な? ああいうのは必要かなと思って」

「そこまで考えなくていいから。無茶だけはしないでよ? ……応援、してるから」

「保証はしかねます」

「あのね……」


 だって、しょうがない。相手はあんな化け物なんだから。

 本当はすぐにでも行かなきゃいけない。行って、あの化け物をぶっ飛ばして、巻き込まれた人達を逃がさなきゃいけない。


「……きっくんは違うって言うと思うけど、昔からそうだったよね」

「昔? 近所の悪ガキだったイメージしかないんだけど」

「探し物。……よく手伝ってあげてたでしょ。危ないところにまで入り込んだりして。それ以外にも――」

「待って。やめて。そういう恥ずかしエピソードなら今すぐやめて。緊急事態だから。一刻を争う状況だから」


 何を急にそんなこと。そんなの全然、これっぽっちも覚えがない。

 覚えはないけど、このままどんどん美咲に妙なエピソードを持ち出されたら困る。状況的に。


 別に、それ以外に問題があるとかじゃない。絶対違う。


「分かってる。……でも、結局そういうこと。この前だって、鈴木君から聞いたんでしょ? 何か」

「あんにゃろう………堅く口止めしておいたのに……」


 あれか。脅したせいか。

 取引を持ち掛けたのが悪かったのか。反故にしたときの事、まさか忘れたなんて言わないだろうな。


「あんな分かりやすい反応、私じゃなくても分かるからね? ……鈴木君からお礼を頼まれたのはほんとだけど」

「ほらやっぱり情報漏洩。……あいつ後でぶっ飛ばす」

「やめてね。絶対にやめてね。止める方の身にもなってね? ……それに今は――」


 美咲の視線。……そろそろ、やばい。さすがにやばい。


「もちろん。……絶対、変な人について行くなよ。それから後ろにも注意して。あとは――」

「大丈夫だから。そこまで子供じゃないから。……お願い、きっくん」

「任せとけ!」


 さすがにちょっと、喋り過ぎた。秒単位で数えてる場合じゃないくらい。


(間に合う、よな……!)


 師匠に鍛えてもらったんだ。こんな時くらい、全力で走れなくてどうする!


 多分、裏側の出入り口。

 狭い通りに面した、ほとんど誰も使わない通路。もしかしたら搬入口かも。


(……任せとけ、か)


 偉そうにあんなこと言っちゃって。

 別にそんな態度をとれるような力があるわけじゃないのに。


(でも……)


 できる気がする。今なら、多少じゃない化け物でもどうにでもなりそうな気がする。


 あのデカいサソリとか、鳥とか、俺もまだ見たことないやつが相手だったりとか。


「我ながら現金なヤツ……!」


 でも、いける。きっといける。ちょっとやそっとの化け物が出て来たってどうにでもできそうな気がする。


(って、人多……っ!? なんでこんなに大混雑してるんだよ、エキストラかよ!)


 ぶつかる! ぶつかるから! 勢いよく突進してくるなって!


「こっちに! 向こうなら安全ですから! 早く!」


 ああもう、子供がこけて……! こんなところに残ったって危ないだけなのに!


(でも、近い――……見えた!)


 やっぱり一番多いあのタイプか! そんなことだろうと思ったよ!


「っとと、とぉ……! そこまでにしろ、この犬ッコロ! その人を離してもらおうか!」


 思いっきり叫ぶとき、ほんのちょっとだけ魔力をちらつかせてやれば――


(ッ、来た……!)


 思いっきり飛び掛かって来るから――


「お前はお呼びじゃないんだよ!」


 脇に回って、蹴り飛ばす!


(っし、離れた……!)


 チョロ。さすが馬鹿モンスター。本当にこんな簡単な手に引っかかってくれるなんて。


「立てますか? 立てますね、立って早く! あいつが来る前に!」

「で、でも君は……と言うか、蹴っ飛ばして……」

「いいから向こうに! すぐに助けが来ますから!」

「は、はい……っ!?」


 おかげで、すぐに男の人から離れてくれた。

 大きな怪我をする前に、引き離すことができた。さっきの人も魔力はないんだから、それでいい。


「《火炎》!」


 あとは、この化け物をどうにかするだけ。

 魔法で牽制して、一気に倒す。


(って、でっか……!? いつ育ったんだよ。どこから養分かき集めたんだよ。育ち盛りかよこいつ……!)


 でも、そんなの関係ない。


 美咲のところにも、誰の所にも行かせない。


(襲われる人を、一人でも少なく……!)


 そう思って、もっと強くなろうって思ったんだから。


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