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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
True Feelings
123/596

004

「ぅ~…………」


 どう説明したらよかったんだよ。

 橘さんからも口止めされてるのに。出禁になったってそんなの関係ない。


(そういえば、あの話だけは一度もしてなかったんだっけ……)


 一応、映像は見せてもらった。

 見せてもらったけど、まるで実感が湧かなかった。


 デカいサソリに向かって打った魔力砲。

 確かにやった。で、すぐに消えた。そこまでは俺もちゃんと見てた。


 まさか、最初の数秒で跡形もなく消し飛んでるなんて思いもしなかった。


(でも、あの力が思い通りに使えたら……)


 俺が使えるどの魔法と比べても強かった。

 あのデカいサソリも、今の俺には倒せないって言い切られた。


(……また、あいつらが何かやらかすかもしれないのに)


 美咲がまた巻き込まれるなんて論外。

 でも、あいつらはきっとまたやる。美咲以外の誰かを狙って、またやらかすに決まってる。


 あのとき見つけた記録にいた誰かみたいになる前に助けなきゃいけない。

 そんな人がどこかにいるって分かってるのに、いつまでも頼りきりじゃいられない。


 昨日の夜になって、橘さんはやっと教えてくれた。


 美咲の容態とか、色々教えてくれたメールの下の方。下も下。

 わざわざ最初にその話だって書いた上に、気分が落ち着いている時に見ろだのなんだの、やたら長い忠告まで添えられてあった。


 その後にもまた改行を挟んで、挟んで、その下にやっと書いてあった。


 中学生以外にも攫われた人がいたこと。

 その時の被害者も、美咲と同じような方法で連れ去られたこと。


 一年半前の抗争で教団の拠点を一度制圧していたこと。

 ただその時、今回と同じように信徒の大半には逃げられてしまっていたこと。


 活動が再開してからも、新しい根城の場所が分からなかったこと。

 調査に大勢の人員を投入したのに、発見まで二週間近くかかったこと。


 ようやく見つけて、いざ突入したら今度は教団の激しい抵抗に遭ったこと。

 その影響で進行は遅れて、組織の側に大勢の怪我人が出たこと。


 一晩中続いた攻防の果てに、ようやく最深部まで辿り着いたこと。


 機械に繋がれた人達が、別人かと思うほどに、やつれていたこと。


 その時にはもう……手の施しようが、なかったことも。


 連れ去られたその人達の中に、組織との関係が深い人はいなかったって、最後に書いてあった。

 数人、組織のメンバーと顔見知りくらいの間柄の人はいた……らしい。当然、魔法があるなんて知りもしない人ばっかり。


(……本当、最悪。消えてしまえばいいのに)


 魔力がなくなったら意味がない、とか下らないことを言う暇があったら勝手に潰れてくれ。

 これ以上、誰の迷惑もかけずに潰れてくれ。


 でもあの話、橘さんもはっきりとした答えは分からないって言ってた。

 魔力の有無で生じる差が多過ぎて答えられないって言ってた。


 ありきたりなところで言えば、教団を支える力がなくなる、とか。

 魔法が使えなく、というか魔力がなくなるとあの化け物も呼び出せないみたいだから。


 でも、それだけじゃないって橘さんは言ってた。正直、俺もそう思う。


 別に、そこまで魔法に精通してるわけでもないのに。

 持ってる魔力で、無関係な人を攻撃してばっかりなのに。……なんて、ある意味俺達も同じなんだろうけど。


 言われなくても、そのくらいは感じてた。

 相手が教団だっていうだけで。


 ――ドブにでもどこにでも捨てちまえよ、あんなもの!!


 多分あの時、俺がそうだったから。

 一晩中考えて、そんな当たり前のことしか気付けなかった。


 橘さんが止めてなかったらきっと何発も殴ってた。

 馬乗りになったまま、何発も。加減なんて出来たわけない。


(………そこまでしてたら、どうなってたんだろう)


 昨日は本当に落ち着いてた。頭の中が。

 全部しっかり思い出して、そのあと何をやらかしてたかもなんとなく分かるくらいに。


「……天条、今度は何しでかしたわけ? 唸られてるじゃん。あの目、相当怒ってるみたいだけど」


 美咲にも、親にも、深山みたいな友達にも合わせる顔がないだろうな、って。


「言うに止まれぬ事情がまあ、色々と」

「そんなの教室まで持ち込まないでくれる?」

「いつからこの教室までお前のものに……」


 でも、戦いたくないなんて甘いことを言ってたら、それこそ何も防げなくなるんだろうな、って。

 それが嫌だったから、師匠にも鍛えてもらってたのに。


「いいけど、あっちはちゃんとしてあるんでしょうね? あの子に気を取られて雑になってたら……」

「脅すな脅すな。イリアが授業中に余所見なんてするわけない。俺ならともかく」


 多分、そういうこともしっかり考え直した方がいい。

 そんなことまで考えながら特訓なんて出来っこないから。特に師匠が相手なら。


(……それに、あっちだと全体的にそういう方向に寄りそうだし)


 なんとなく、そんな気がする。

 つい資料を調べて、結局そういう方向に傾く姿が簡単に想像できる。


「天条? 聞いてる? 考え込むなら後にしてよ」

「あ、悪い悪い……ほい、これがご所望品。お納めくださりやがれよ、ほら」


 午前中にあった授業の分、全部。

 一枚一枚、深山は丁寧に捲ってた。隅から隅まで目を通して、その上更にもう一度。そこまでして、ようやく次。


 わざわざ昼休みに教室まで足を運んで、やることがこれ。……放課後でもよくないか、これ。

 言っても聞かないから仕方ないけど。


「…………こうも丁寧だとそれはそれでムカつくんだけど」

「見せる予定があるのに雑な書き方なんてしないっての。いい加減に諦めろって」


 もう何度目だと思ってるんだよ。通算何ページ目だと思ってるんだよ。

 こっちだってそれなりに気を遣って丁寧に書いてるのに。なんで俺の席なんか見てるんだか。


「ふーん、そういう……だったら机の中は? あるんでしょ、そっちのノート。……出してよ」

「カツアゲにでも来たのかよお前は」

「中学生同士でやる意味あると思う?」

「今、俺からノートを奪い取る意味ならあるだろ、深山には」


 美咲のを描き終えた後でメモ書きしてるんだから仕方ないじゃん。

 誰かに見せるわけでもないんだし、自分で分かればいいんだよ。


 友達相手になんて恐ろしい。

 俺が相手だからまだいいけど。


「……新手のプレイ?」

「天条はそういうタイプじゃないよ。見て分からない?」

「日常風景なんだよなぁ……綾河さん早く戻って来て……」


 ほら。ノートのチェックまではクラスメイトだって見向きもしてないのに。


「分かってるなら出せばいいのよ。ほらほら、早く」

「俺が出したくなり悠だって分かるだろ、それなら」


 ……でも、いたかもしれないんだよな。


 あの人達にも、冗談を言いあえるような友達が。

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