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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Fateful Encounter
11/596

011

「くそっ、てめっ、このっ!!」


 当たらないな本当に……!


 右も左も使ってるのに全然当たらない。本当にどうなってるんだこの野郎。


「威勢ばっかで掠りもしねぇなテメェ。やる気あんのか?」

「あるに……っ、決まってんでしょうが!!」

「なら当てろや一発くらい」

「悪かったですねノーコンで!」


 影分身でもしてるのかよ。


 当たったと思えば消えるし。残像でも出せるのかこの人。

 いやありそう。普通にありそう。やりかねないわ師匠なら。


「そうじゃねぇっつの。テメェがトロいだけだろうがよ」

「んなっ……!」


 うわ、また言いやがったこの人。

 毎回毎回、遅いだの何だの好き放題言ってくれてさぁ……

 一回くらい、なんとかギャフンと言わせて――


「だからこんな簡単に後ろ取られんだろ?」

「ぁえ?」


 ……なんで?


 なんで抑え込まれてるんだ、俺?

 腕一本だけなのに。別に滅茶苦茶痛いわけでもないのに。

 身体も全く動かない。


「ったく、こんなあっさり捕まりやがって。張り合いねぇよ」

「でしょうね。……だったらこれはどうですか!!?」


 手を離した直後なら――!


「不合格。遅い。無駄が多い。威力が足りない」

「ないないづくしじゃないですか」

「事実その通りだから言ってんだよ」


 そう思ったのが間違いだった。


 呆れ顔で手を離したからチャンスだと思うじゃん。

 振り向きざまに一発やってやった筈なのに。どこに三つ目の目がついてるんだ?


「どうしたそんな身構えて」

「いや、てっきり不意打ちしたことあれこれ言って来るかと思って」

「はぁ? オマエの目にはこの俺がそんな器の小さい奴に映ってんのか?」

「空から落ちて来た日の事を思い出したら分かると思いますよ大エース様」

「そういうテメェの減らず口も変わらねぇなウスノロ」


 今まで何回ヘッドロックしたと思ってるんだろう、この人。

 そりゃまあ何割かは俺の責任だったと思うけど。

 でも絶対あそこまでやる必要なかった。この暴れ馬め。


「んで、なんだって? 不意打ち? 上等じゃねぇか。やれよいくらでも。むしろよくやった」

「うわ……筋金入り……」

「ったり前だろうが。卑怯だの何だの、そんなの全部避けられもしねぇやつの言い訳なんだよ。そもそも、そんな綺麗事言える立場か?」

「うぐ……」


 例によって正論だった。


 あの化け犬相手にはそのくらいしないとこっちが危ない。

 師匠はもっと強いモンスターを操るやつもいるって言ってた。

 もうそこまで行くとお手上げだ。どうしたらいいのか分からない。


 だから必要な戦術。それは分かるんだけど……


「クソ白共は人質脅迫何でもありだっつったろ忘れんな。ヌルいこと言ってやられるのはテメェだぞ」

「同レベルに落ちるのはいいんですかね……」

「ハッ、誰が人質なんざとるかよ。あのろくでなし共ならただの捕虜だ」

「まあ、それはそうかもしれませんけど」


 なんならあの連中、お構いなしにやってきそう。


 民間人なら平気で巻き込むって言ってたし。

 倫理観の欠片もない。そんなのが社会に紛れてるって思うだけでぞっとする。


「守りたいヤツがいるならまず生き延びろ。話はそれからだ」

「……はい」


 俺が、なんて言わない。言えない。

 でも、それでもなんとかしないと。次は誰が狙われるかも分からないのに。


 ……あの勉強会にいたやつらだって、もしかしたら。


「っつーか問題はそこじゃねぇよ。どうすんだよこんな調子で。オマエほんとにやれんのか?」

「やれますよ、やりますよ! というわけで次お願いします!!」

「却下」


 即答された。なんでだよ。

 不意打ちも当てられなかったからってそこまでガッカリする? いつもとそんなに変わらないのに。

 ……自分で言ってて悲しくなってきた。


「またあれやれとか言いませんよね。褒め称えながら懇願してほしいんですか?」

「テメェがふざけるだけだろうが」

「そもそもあんなことさせる方が悪いと思うんですけど」


 やってみろよって言い出したのは師匠なのに。何この理不尽の塊。

 だからちょっと大げさにそれっぽい単語連呼しただけじゃないですか。

 というか一体いつの話を。


「ってそうじゃねぇよ。やけっぱちのバカとやったって無駄だって話だ」

「すみませんね進歩がなくて」

「本当にな」


 ここで気を遣ってくれるタイプの人なわけがないよな。知ってる。

 進歩があまりないのも事実だし。……でもムカつく。


「焦りもしますよ。あの化け犬に追い付かれたら絶対ヤバいのに攻撃も当たらないし」

「ホー、その程度の理解能力はあんのか。ならさっさと改善しろ」

「人間の身体ってそこまで便利にできてないんですよ。細胞単位でおかしい師匠でもそういう経験くらいありますよね?」

「あ? ねぇよそんなもん」

「このデタラメ野郎が……」


 ないだろ。普通ないだろそんなこと。

 一回も? 覚えてないとか都合の悪い記憶消去してるとかじゃなくて?


 改善しようって思ってすぐにできたらだれも苦労しないっての。


「身体が思い通りに動かなかったことなんざねぇ。思い通りの結果になるかは別だけどな」


 ……なのに師匠は、全然そのことを誇ろうともしなかった。


「……師匠、それって」

「なんでもねぇよ。なんでも。忘れろ五秒以内に。じゃなきゃ忘れさせる」

「他までおかしくなったらどう責任取ってくれるんですかね」

「心配すんなよ。そこも含めて忘れさせてやる」


 無茶苦茶。ひたすらに無茶苦茶。

 そんな理屈で押し通されてたまるかっての。


 ……何かあったんだ。昔に。

 多分、あの戦い関係。白ローブか聞いた時と同じような顔だった。


「忘れますよ。分かってます。代わりに師匠がパンチ空ぶって道路ぶっ壊したって記憶にすり替えておきますから」

「事実じゃねぇか」

「本当にやらかしたのかよ」


 ……せっかく冗談でオトそうと思ったのに。


 どれだけ力があればグーでコンクリートに穴が開けられるんだよ。

 もうどこかに監禁しておいた方がいいんじゃないのかこの人。馬鹿力なんてもんじゃない。


「何やってるんですかまったく。自首しましょう? 今なら付き添ってあることないこと吹き込n%#△$〇¥@――!!?」

「空気の変え方一つ知らねぇのかこのクソガキは。えぇ??」


 締まる! 締まってる!!


 心が広い云々どこ言ったこいつ!


「っぇ……今回悪いの師匠じゃないですか。やったのは本当なんでしょう?」

「もう全部修復済みだっつの。終わったことゴチャゴチャ言うな」

「バレなきゃ大丈夫って極論が過ぎますよ」


 そういう考えで戦ってるから身に着くんだろうなぁ。気を付けとこ。


「けどバレたらもっとヤバいんだよ。何回言ったと思ってんだ」

「分かってますよそれくらい。……でも大丈夫なんですか? 噂話とか普通に出てますけど」

「んなもんテメェが考えることじゃねぇよ。老いぼれ共の仕事だ。黙ってさっさと続き始めろ」


 丸投げですかそうですか。

 わざとやってるんじゃないだろうな。完全には抑え込めないからって。


 ……まあいいけど。休憩はできたし。


「やっぱ待った。予定変更。今から走って来い」


 でもそれは聞いてない。


「……は? 急に何言ってるんですか。無茶苦茶ですよ」

「いいから行け。いつものコース一〇周な。サボったら埋める」

「埋まる前に首の骨が折れますよ。師匠の力で殴られたら」

「分かってんならとっとと行け。蹴り飛ばすぞ」

「わぁ横暴ー」


 行けばいいんでしょ行けば。分かってますよ。

 いきなりメニュー変えるなんて珍しい。今まで何だかんだ言って決めた通りっぽかったのに。


(しかも一〇周とか。ほんと何考えてるんだあの人)


 やったのに。もうやったのに。

 慣れてきたからいいけどそろそろまた厳しくしてきそうなんだよなぁ……


 その予行演習じゃないだろうな。

 とりあえず後が怖いから走ろうっと。どこから見てるか分からないし。


「――おーい、そこのお兄さーん!!」

「……うん?」


 誰だあの人。


 振り返ってみたけど見覚えなんてない。大学生くらい?

 なんていうか、派手な若者集団って感じ。多分俺より年上だけど。


「どうしたんですか? 見ての通りランニング中なんですけど」

「だろうね。ごめんよいきなり呼び止めて。一つ聞きたいことがあって」


 聞きたいこと? 今まで会ったこともないのに何を――


「君ってひょっとして……[アライアンス]?」


「っ!?」


 その、名前。


「な、なんのことだか……」

「誤魔化さなくていいよ。魔力溢れてるし。さっき神堂零次と一緒だったでしょ?」

「……じゃあ、お兄さん達も?」


 聞いたけど、本当は薄々分かってた。


「残念だけどそうじゃないんだよね。……ちょっと、来てもらっていい?」

「お断りだよ!!」


 こいつらは敵だって。あの白ローブの仲間だって。


 知らないやつに呼び止められても足は止めるな。そう言われてたからなんとかすぐに走り出せた。

 あと少し距離が近かったら、止まってたら、きっとあいつらに捕まってた。


(日が出てる間は仕掛けてこないんじゃなかったのかよ……!)


 でも、問題もあった。


 後ろから呼び止められたせいで、師匠の方に戻ることもできなかったんだ。

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