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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Missing Comfort
106/596

015

『おかけになった番号は、現在電波の届かないところにあるか、電源が――』


 いい加減にしなさいよ。


 さっきから何回かけたと思ってるの?

 さっさと出てほしいんだけど。返すくらいできるでしょ。


 メール一通くらい遅れるでしょ。

 壊れたわけじゃないんだから。


(美咲のことが分かったら連絡するって話はどこにいったのよ。何も分かってないならそう言えばいいじゃない)


 こっちも聞けるだけ聞いて回ってるのに。

 どういう神経してるのよ。おかげで電話がなりっぱなしなんだけど。


「……あったまきた」


 私だって今すぐ探しに行きたいくらいなのに。


 駅前で()()()()()()()()()なんて話が広がったせいで出たくても出られない。

 まだ犯人が捕まってないのに出掛けるのは危ない、って。


 それなら別のところにかけてやるわよ。


 絶対逃げられないようにしてやればいいだけだし。


 丁度、去年の連絡網も見つかったし。


『――はい、もしもし? 天条ですけど……』


 家電にかけたらきっと誰かが出ると思ったら、天条のお母さんだった。


 丁度いいっていうか、最高。

 親に呼ばれたらさすがに大人しく出てくるでしょ。


「こんにちは。クラスメイト……じゃなくて……えっと、桐葉君の友達の深山静乃です」

『深山さん……もしかして、あの深山さん? いつもお世話になっております』


 ……どうして天条のお母さんにまで話がいってるわけ?

 一年の時はクラスも同じだったけど、話した覚えなんてないのに。


『美咲ちゃんがいつも話してたのよ。仲のいい子がいるって』

「は、はぁ……」


 家族ぐるみの付き合いって? そんなレベルじゃないじゃない。


 何がお隣さんよ。お隣さんどころじゃないじゃない。

 ただ家を二つもってるだけの一家よ、こんなの。


 まさか天条のお母さん、知らないなんてことないわよね?

 普段どうなのか知らないから、全然――


『ところで、なんだけど……深山さん、美咲ちゃんが行きそうな場所に心当たりとかない? 思い付く場所ならどこでもいいから』

「……その話なら知ってます。天じょ……桐葉君に聞きましたから。でも……ごめんなさい」

『ううん、謝らないで。私達も今探してるから』


 ……そんなわけないか。


 誰かが帰ってきたみたいで、声が聞こえた。

 聞き覚えのない声だったけど、それでも絶対、疲れてた。


「それでその、桐葉君は? 少し話を聞きたくて」

『え、桐葉? あの子なら今、探すのを手伝ってくれる人と一緒みたいだけど――……だったわよね?』


 声が遠かった。

 でも、なんとか少しだけ聞き取れた。


 多分、天条のお父さんの声。さっき帰ってきたのも、多分この人。

 低い声で『巣越前にも連絡があった』って言ってた。


 しかも、天条じゃなくてその人達から。……そんなこと、ある?


(捜索を手伝うって……なんのつもり?)


 というか……一体、どこの誰?






 部屋の中にあったんだから、多分そうだろうと思ってた。


「……開けますね?」


 でもまさか本当にぴったりだったなんて。

 正直自分でも驚いた。こんなことあるんだ、って。


 ガラクタの中に隠れてた、四角の切れ目。

 鍵穴に差し込んだら、後は簡単に開けられた。


「うわ……っ」


 開けて真っ先に目に飛び込んできたのは真っ暗闇。

 それと、すぐ近くに置いてあった細い梯子。


 資料が散乱している以外は綺麗だった部屋と違って、思いっきり錆びついてたのを覚えてる。

 なんなら、掴んだ拍子にそのまま折れそうな状態だった。


「これ……下まで飛行魔法で降りられませんかね? 上手い具合に減速しながら」

「確かにできそうだけどー……何もないし、今はこれでいっか」

「あの、篝さん? まさかマウスを命綱にするとか言いませんよね?」

「違うよぉ。これを捨てて――……」


 教団の備品だったんだと思う。

 地面に落ちてたそれを拾った篝さんは、何の躊躇いもなくそれを穴に向かって投げ込んだ。


 そこまでしなくてもって言おうにも、マウスはもう闇の中。

 待てど暮らせど音は聞こえてこない。


「……消し飛んだんですかね?」

「それならそういう音がしてたんじゃなぁい? ……できることならこんなことしたくないんだけどなぁ……」

「そう思ってるなら手に持ってるそれ置きましょうよ!?」


 だから篝さんが手に持った本を投げ込んだところで結果は同じだろうと思った。


 そのくらい篝さんも分かってた。分かってたはず。

 それなのに、次から次へと投げ込みそうな勢いだった。


「――今! 今聞こえました確かに! 遠いですけど大丈夫! 多分大丈夫なんで行きましょう!? ね!?」

「そぉ? やっぱり念のため、もういっこだけ――……」

「聞こえましたから! 行きますからね!」


 止めてなかったら多分、本気で全部投げ込んでた。 


 直前まで焦りまくってたのに、その時はまた別の理由で焦りっぱなしだった。

 だから何も考えずに、ほとんど勢い任せで穴に飛び込んだ。


 その時も、上の方から篝さんの悲鳴が聞こえた気がした。

 それでも速度は緩められなかった。上昇なんてもっての外。


 戻ったらまた確認作業が始まるに決まってる。

 もしかしたら組織のメンバーが有効活用してくれるかもしれないのに、って。


 そんなもったいないこと、たとえ篝さんであってもしてほしくなかった。

 その時は他に、情報源になりそうなものもなかったから。


 ただ、その時はすぐにそれどころじゃなくなった。


(長いな、おい……一体どこまで続くんだよこれ……)


 あの時も、本当は音なんて聞こえちゃいなかった。


 そのくらいしないと本当に篝さんが聞こえるまでやりそうだったから、咄嗟についた嘘だった。


 でも、実際に降りてみて、聞こえなかった理由もすぐに分かった。

 篝さんが何回投げても結果は同じだっただろうって、思わずにはいられなかった。


(翼を、小さく……っと……いくらなんでもデカいって、あれ)


 両手を広げると、壁に引っかかりそうなくらい。

 前に倣えをしても、まだ少し余裕はある。少しだけ


 そんな場所で《飛翼》をいつも通りのサイズで展開する事なんてできるわけなかった。


 何回ぶつかったって俺は痛くない。あの頃も今も、それは同じ。


(小さく、小さく……動きは止めずに、もっと速く……でも、上には行かないように、だっけ……)


 あまりよくないって橘さんに言われてた。

 なんとなく、そういう感覚はその頃からあった。


 少しでも小さく展開できるようにって言われたのも、大体その頃。

 それまでで一番うまく行ったのがあの日だった。


 それでもすぐに篝さんには追い付かれた。

 少し広くなったと思ったら、すぐに篝さんに追いつかれた。


「もぉ、無茶しすぎだよぉ。びっくりしたんだからねぇ?」

「俺は篝さんが放り投げたことに驚きでしたよ……」


 本当に、まさか突然あんなことをするなんて。


 結果的にそうならなかったからよかったものの、下に人がいたらどうするつもりだったんだろうか。


 何度か考えはしたけど、あっちゃけない答え以外に何も出てこなかった。

 当の篝さんからは何度聞いてもはぐらかされる始末。……多分、そういうことだったんだと思う。


「それにしても、なんだろうねぇ……通路、かなぁ? ――こほっ! こほっ!?」


 その時、地面が見えた。

 やっと見えた。


 それだけ近付いたせいで、俺達の飛行魔法の影響は積もり積もった埃にも及んだ。

 巡り巡って、俺達にも返ってきた。


「な、なんなのここぉ? 埃っぽいし、変な臭いはするし……」


 しかも。


「いつものあれも出てくるし……」

「ですね……」


 狼モドキやら、何やら。

 あいつらがいたのにどうしてあそこまで埃が溜まっていたのか、今でも不思議で仕方がない。


「仕方ないから倒しちゃおっかぁ。……桐葉くん、準備は言い?」

「勿論、いつでも」


 その時は倒す事ばかり考えていたから、調べようとも思えなかった。

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