私、やりきった!(?)
しんと静まり返る部屋。
王妃様はなぜか黙り込み、でも笑みを浮かべたままじっとこちらを見ている。
「…………」
「…………」
「…………」
誰も何も言わない。
え?もしかして王妃様はすでに竜のことをご存じだった!?
私を気遣って「知っています」とおっしゃらないとか!?
どうしようどうしよう!
ここから何か話題を変えるには何かきっかけが欲しいけど見つからない!
こういうときは、にこっと笑う!
グランディナさんが「困ったら笑っておきましょう」と言っていたもの。
沈黙が続く中、メイドのひとりがそっと王妃様に耳打ちする。
王妃様は真顔になり、「わかったわ」と答えた。
何か緊急事態でも起きたのかしら?
私は黙って様子を見守る。
「急用ができたの。私は失礼するわ」
王妃様がそう言うとメイドがスッと椅子を引き、瞬く間に王妃様は扉まで移動した。
そのあまりの速さに私は目を瞠る。
「あの!」
思わず呼び止めてしまった。
どうしても伝えたいことがあったから。
立ち上がった私を、王妃様は扉の前で目線だけ振り返る。
「アルフレイド様のことは私にお任せを。王妃様のご心配には及びません」
だからもう放っておいてください!
アルフレイド様は王位なんて狙ってないし、私が幸せにします!
王妃様の目をしっかり見つめて気持ちが伝わるよう念じた。
「……また折を見て報告に来なさい」
「は、はい!」
報告?わかりました、幸せだって報告に来ます!
私はにっこり笑って力強く頷いた。
王妃様はドレスの長いトレーンを靡かせ去っていく。
よほど急ぎの用事が入ったのか、あっという間に見えなくなってしまった。
予定より短い時間だったけれど、言いたいことは言えた。
どっと押し寄せる疲労を感じながら、私は再び席についた。
「せっかくなのでいただきましょう」
ペトラ嬢が私にそう告げる。
目の前にはまだたくさんのお菓子が残っていて、メイドたちが私たちのカップに紅茶のおかわりを注いでくれた。
そうよね。食べなきゃもったいないよね?
解放感からつい頬が緩む。
「では、お言葉に甘えて」
緊張が解れたらお腹が空いていたことを実感する。
ああ、マイラとグランディナさんにも食べさせてあげたいな。今頃心配してるだろうし、「うまくできたよ」と早く教えたい。
私ははちみつがかかったスコーンを口にしながら、そんなことを考えていた。




