閑話 魔王の恋愛相談相手
魔王・ルーク=イエガー公爵子息。
学園を表からも裏からも牛耳る最恐の生徒会長。
魔法の扱いも優秀で、なおかつ頭も良いので、こちらの考えなど全て見通されているような気分になる。一般生徒では彼に逆らうことなど到底出来ない。そんな底知れぬ人物であるからこそ、恐れられ魔王の異名を付けられた。
しかし彼の手腕は確かで、イエガー公爵家を担う次期当主として申し分ない。
そんな雲の上のような存在から呼び出された時、アランは死を覚悟した。
しかしルークから、イエガー家はアランとクリスティーナとの結婚を後押しすると告げられた。
そして、その代わりにルークがアランに突きつけた条件。
それは……ーー
「え!ルーク様の恋愛相談役ですか!?」
アランはルークとの交渉をクリスティーナに報告していた。アランが騎士採用試験に合格し、さらにイエガー家の後押しのおかげで婚約までする事ができたのだ。
報告しないわけにはいかなかった。
「ああ」
「アラン様に、ルーク様は一体恋愛の何を相談するというのですか?」
「……お、乙女心を掴む事についてだそうだ」
「まあ」
ルークはアランのどこを見てアランに白羽の矢を立てたのだろう。クリスティーナは素直にそう思った。
アランはどちらかと言えば不器用で、女性の扱いが上手いとは言えない。だが、不器用だからこそ、裏表のない、彼の本心なのだと理解できた。
まあ、掴まれてしまったクリスティーナには何も言えないのだが。
「クリスティーナ!お願いだ!手伝ってくれ!」
「ええ……とぉ……。」
しかし、アランは自分でもそれはわかっていたようで、泣きそうな表情でクリスティーナにすがりついた。
クリスティーナは、シルフィーのことを思い出してみた。
シルフィー=ハットン。
かの有名なハットン魔法伯爵の令嬢で、彼女自身もかなりの魔法の使い手で学園でも非常に優秀な生徒である。しかし、ハットン家は貴族の間でも有名な人見知りで、それはシルフィーも同じであった。
研究室にこもって魔法の勉強をしているせいか、世間知らずで純真無垢なシルフィー。
ルークの愛情表現に戸惑いつつも、嫌がっているようには見えなかった。経験が無さすぎて恥ずかしくてパニックになっているような感じである。
クリスティーナは言葉を選んで、微笑んだ。
「えっと、お二人は充分仲睦まじく見えましたよ?」
「最近、攻めすぎている気がするらしい。」
「……」
否定できない。
クリスティーナは令嬢の見本として有名な伯爵令嬢である。その名誉を守るためにも、クリスティーナは表情を作るのに全神経を集中させた。
「し、シルフィー様には駆け引きは危険かと思いますわ。純粋で無垢な方ですから、攻めるに尽きると思います。」
距離を取ったらシルフィーは引きこもってまたスタートラインに戻りそうだ。かわいそうな気もするが、シルフィーには耐えてもらうしかない。
「クリスティーナ。ルーク様にはそう伝えておくよ」
クリスティーナの意見に、アランは少し胸を撫で下ろした。
「でも心配いらないと思いますわ」
「?」
「だってシルフィー様もきっと、ルーク様のこと想ってらっしゃいますから。」
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