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17.恋愛相談

 アランは順調に模擬戦を進めていき、見事優勝した。最後の試合で勝利すると走ってクリスティーナの方へと向かった。クリスティーナも目を涙ぐませてアランへと駆け寄って行った。


「おめでとうございます!アラン様!」

「クリスティーナ!」


 二人は手を握り見つめ合っている。交わす言葉は少ないが、二人にはそれだけで充分であった。

 そんな二人の様子を、シルフィーはうっとりと見ていた。シルフィーだってヒューズと二人のような日々を送るのだと信じていた。今となってはもう過去のことなのだが。

 だからこそ、クリスティーナとアランの仲睦まじい様子に憧れてしまうのだ。


「シルフィーもああいうの、憧れる?」


シルフィーの隣に寄り添っていたルークは、耳元で囁いた。その声に思わず顔が熱くなる。

 じっと見つめるルークの視線が真剣そのもので、シルフィーは落ち着かない気持ちになった。


「え?う、うん。そうだね。」

「ふうん。」


慌てた様子のシルフィーをルークはじっと見つめた。




◆◆◆




 学園の生徒会は、各学年の優秀な生徒から選ばれる。何かに特出した生徒には研究室を与えられるが、特出した事はなく全ての教科において成績が優秀な生徒は生徒会に選出される。

 そんな生徒たちが集う生徒会室は、広々としており、机をはじめとした家具もかなり豪華なものが使用されている。特に生徒会長の机周りは充実していた。生徒会室の中でも個室が用意されて、部屋の中にはふかふかの椅子に広々とした机、書類を敷き詰めた本棚が壁一面に置かれている。

 普段一般生徒が立ち入らない、むしろ避けている生徒会室に、アランはいた。

 何故自分がここに、と誰よりもアランが思っていた。確実に騎士採用試験の時以上に緊張していた。

 けれどそんなアランの事など気にする素振りもなく、ニコニコと機嫌良さそうにルークが笑っていた。


「アラン先輩、模擬戦で優勝、おめでとうございます。」

「あ、ありがとうございます。」


魔王と称されるルークに呼び出されたアランはしどろもどろしていた。入学してまだ僅かながら多くの逸話を残すルークを前にすると、先輩とは言え、緊張してしまう。

 さすが魔王。

 迫力が違う。


「ところでアラン先輩。クリスティーナ=バーバル嬢と婚約しているそうですね。結婚したらバーバル家に婿入りして騎士を目指すと聞きました。」


そういえば、模擬戦にもルークがいたように思う。クリスティーナが話したのだろうか、と思いながら、アランは頷いた。


「生徒会長としても優秀な生徒を応援したい気持ちです。我がイエガー家からアラン先輩を推薦したいと考えているのですが、どうでしょうか。」

「え。」


イエガー家といえば王国でも七家しかいない公爵家の一つ。そんなイエガー家から推薦された人物ならばバーバル伯爵を継ぐ者としても箔がつく。


「勿論!それは嬉しいです。……でも、何故。」


アランには願ったり叶ったりである。しかしルークがそこまでする義理もメリットもないはずである。

 アランが不思議そうにしていると、ルークが話してくれた。


「クリスティーナ嬢が、俺のシルフィーと仲良くしてくれているのでね。」

「シルフィー、様?」

「俺の妻なんですよ。」


 魔王の妻!!あの噂の!!

 アランは目を丸くした。

 確かにクリスティーナが友人と一緒に来ていて、その近くにルークがいた事も覚えている。しかし、その友人の顔はぼんやりとしか覚えていない。まさか、学園の注目の的である魔王の妻だったとは思いもしなかった。探しても探しても誰もわからなかった人物。

 そんな人物とクリスティーナが仲良くなっているとは予想外であった。


「お、奥様でしたか。」

「これは他言無用で頼みますよ。」

「は、はい。」


 ルークが怖い。

 笑顔なのに何故か迫力が凄い。年下とは思えないルークの素振りにアランはすっかり萎縮していた。


「シルフィーはハットン家らしく人見知りでね。目立つ事はなるべく避けたいんだ。」

「ハットン!?シルフィー嬢はあのハットン魔法伯爵のご令嬢でしたか!」


魔法伯爵として有名なハットン家の名前に、アランはまた目を丸くした。


「そうですよ。」


ルークはふと表情を消した。


「だから絶対、誰にも言うなよ。」


 言ったら殺される。

 アランはそう直感した。

 そして必死に何度も首を縦に振った。


「話が早くて助かります。」


ルークの雰囲気が少し和らいだ。それに、アランもようやく息できる心地になった。


「それと、」


 ルークが話を続けた。

 話は終わったものだと思っていたアランは、再び背筋を伸ばした。


「シルフィーはクリスティーナ嬢とアラン先輩のような恋に憧れがあるようなんです。」

「は、はあ。」

「そこでアラン先輩にお願いなのですがあります。」

「な、何でしょう?」

「アラン先輩。俺の恋愛相談役になっていただけませんか?」

「……え?」


 思いもよらなかったルークの依頼に、アランはもう頭がついていけなかった。



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