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怪獣少女のいるところ  作者: 七志野代人
終わりなき未来(あす)
48/49

未来(あす)へ

 遂に完結です(本編が)。

 ――一瞬、目の前の笑顔を、夢と疑った。

「おはよう、ジュラ」

「あ……」

 硬直してしまう。

 だって、だって……、

「セリ……ザワ……?」

「ああ」

「本当に本物の?」

「本当に本物の俺だよ」

「あ、あぁ……――!」


 ばっ!


 たまらず抱きついてしまう。

 彼も少し微笑んで、わたしを抱きしめてくれた。

 その温もりで、これが夢じゃないと、やっと信じられた。

「あい、たかった……!」

 帰ってきてくれた。

 彼が。

 また、一緒に居てくれる。

 約束を守ってくれる。

 嬉しい。

「セリザワ……っ!」

「ただいま、ジュラ」

「ん、……ん、お帰り、セリザワ」

「ごめん。心配、かけたよな?」

「ん」

「不安に、させちまったよな?」

「……ん」

 きゅっ、と腕に力を籠める。

 もう、絶対に放さない。

「……もう、どこにも行かないから」

 

「――……ん。セリザワ、ありがとう」

「礼を言うことないだろ? ……そろそろ、みんなを起こしに行こう。」

「ん……」

 ジュラが頷く。

 彼女の手を握って、俺は、歩き始めた。


 ……


「結局、またいつも通りに戻ったね」

「いつも通りでいいだろ。あんな面倒ごとはもうたくさんだ」

 ジュリのセリフに、俺は苦笑した。

 本当に、あんなイベントは人生で一回くらいでも多いだろう。

「俺、これでもただの高校生だったんだぞ?」

「……このままが一番」

 ジュラも頷く。

「怖いのはもういい」

「……そうだね。今は楽しいことを考えよう」

 あれ以来、国は何の干渉もしない。

 ただ一回、謝罪の文書が来ただけだったのだ。

 「今回の騒動は彼の独断であり、政府は関与していない」。この文章に嘘はないだろう。

 やろうと思えば、食事に薬を仕込むくらいは、軍隊を送り込むくらいは、平気で出来たはずだ。

「まったく、本当に迷惑だよ!」

 ふんす、と怒っているのはゼロだ。

 起きる時に暴走時の余剰エネルギーで体を生成したから、彼女はこうして起きていられるわけである。

「お姉ちゃん、お腹すいたー」

 少女がジュラに擦り寄ってくる。

 背格好は瓜二つだが、表情が判りづらいジュラとは対照的に、ころころと感情が表に出ている。青い目とは真逆の赤い目。

 シンカである。

「シンカ、まだご飯じゃない」

 その彼女を追って出てきた、短い銀髪の少女。

 キリだ。

「二人とも、すっかり馴染んだよね」

「いいことだろ」

 ドクターイクスの洗脳モドキが解けた後、彼女たちは俺の方で引き取ることとなった。

 二人とも、ジュリの細胞を元に造られた、言わば親戚のような関係だったというのが大きな理由だ。

 ザナと呼ばれていた少女も、同じような理由でルモさんが引き取った。

 ドクターイクスと共に町を襲った彼女達だが、洗脳が解けた今は危険性はないということだったし、何より操られていただけで、彼女達には罪がない。

 そんなわけで、彼女たちは今はすっかりと打ち解け、我が家でこうして過ごしている。

 食いしん坊のシンカに、物静かなキリ。

 彼女たちの加わった日常も、中々楽しいものだ。


 がちゃり


「……うぅ……ただいまぁ……」

 げっそりとした顔で、ディアが帰ってきた。

 何故か服装がメイド服であるが、これにはれっきとした理由がある。

「あ、おかえりー、ディア」

「つ、疲れた……」

「お疲れ。シャラナ、やっぱ修羅場だったか?」

「ああ、うん……。小説家って、大変なんだね……」

 シャラナの修羅場に一晩中付き合うバイトである。

 ちなみに自給五千円。

 しかしながら、俺はあの地獄は一回だけで十分である。

「まさか、出版社さんと連携して、絶対に部屋から出さないようにするなんて……」

「凄まじいものがあるよな……」

 遠い目をしながら、そんな話をする。

 彼女も結局同居している。

 というか、俺が目を覚ます前から家にいたらしい。

 ジュラもジュリもめちゃくちゃ仲良くなってて、少しだけうらやましかったのは、ここだけの話である。

「さて、そろそろ昼飯作らないとな」

「あ、ボクも手伝うよ」

「……わたしも」

 俺が椅子から立ち上がると、ジュラとジュリも着いてくる。

「由人君、ごめん、今日は手伝えない……」

「大丈夫なの?」

 ディアはぐったりと机に突っ伏している。

 心配そうに、ゼロがその背中を優しく撫でている。

「ごっはん! ごっはん!」

「シンカ……落ち着いて」

 はしゃぐシンカと、それを宥めるキリ。

 もうこの光景も見慣れたものになった。

 特別何が幸せとは、まあ表現は難しいだろう。

 強いて言うなら、誰かが共に生活している温かみとか、好きな人が一緒に居る幸福感とか、そんな具合になるだろう。

「……照れくさくて、言えたもんじゃないか」

「?」

「……?」

「ああ、いや、何でもない」

 とにかく、俺は今幸せなんだろう。

 こうして彼女たちと、何も変わらないままとはいかないにしても、過ごしていける時間があるんだ。

 ……そう、

「さっさと昼飯作ろうぜ」

 何気ない、終わりのない未来あすへの日々が、始まる――

 ええ、遂に完結しました(本編は)。

 いやまあ……短い話はこれからも時々投稿するんですけどね!

 完結済みにはいたしません。

 時折作者の書きたいお話を投稿していくスタイルとなります。

 中途半端かもしませんが、怪獣少女、よろしくお願いいたします!

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