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無人島に放り出された転生おっさん、スキル【AI】でサバイバルも気付けば快適な理想郷!  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第9話 はじめての魔物


「ふい~森の中に入るとだいぶ涼しいぜ」


『直射日光を防ぐだけでなく、木の葉が水蒸気を放出する蒸散の際の気化熱によって熱を奪います。また積み重なった落ち葉などが断熱材の役割を果たして熱がこもりにくくなります』


「お、おう……。よくわからねえけれど、アイはすげえんだな」


『ありがとうございます』


「ちょ、ちょっと待ってくれ……」


 森の中をスイスイと進むルナに待ったをかける。


「頑張れよ、おっさん。そんなんじゃ日が暮れちまうぞ」


「それはわかるんだけれど、少しでいいからペースを落としてくれ」


「わかったよ。まあ、おっさんも頑張っているみたいだしな」


「助かるよ」


 すでに俺は汗だくだ。もはや虫とか関係なく前のボタンを開けて袖をまくっている。


 昨日の疲れもあるが、それ以上に森の中なんてまともに歩いたことがないからルナのペースに全然ついていけない。よく道もない森の中をこのペースで歩いていけるものだな。おっさんの体力ではなかなか厳しい。


『マスター、根性です』


「……そうだな、根性しかないな」


 AIであるアイまで根性論しかアドバイスがないらしい。まったく、令和の時代に根性論なんて平成どころか昭和にまで戻ったようだ。


 とはいえアイの言う通り、今は根性しかない。道のない草で覆われた場所をルナが前を歩きつつ、邪魔になる枝なんかは爪で切り裂いてくれているので、歩き方のアドバイスも何もないだろう。道も岩壁に沿って進んでいるので迷う必要もない。あとは根性で頑張ろう。




「……おっさん、ちょっと待て!」


「むっ」


 前を歩くルナが立ち止まり、小声で待ったをかける。その場で俺は立ち止まった。


 何も感じられなかったが、ルナは両方の耳をピンと張って先の様子を窺っている。獣人であるルナは人族よりも聴覚や嗅覚が優れているらしい。


 そのまましゃがみ、少し前にある大きな木の陰に身を隠したので、俺もそれに従って同じ行動をとる。


「なんだ、()()()()か。ビビッて損をしたぜ」


 そう言いながらほっとしたように木の影から出る。するとそこには青色でゼリー状の生物がゆっくりと動いていた。


「こ、これが魔物か……」


『この世界では魔力を持った動物の総称を魔物と呼ぶそうです』


 アイも魔物のことについてはほんの少しだけデータがあるらしい。そしてこの魔物についてはおそらくだが、俺でも知っている魔物だ。


 某ゲームのような可愛らしい外見ではないが、50センチメートルほどのヌルヌルとゆっくり動く液体状の生物はスライムだった。


「動きは遅いみたいだけれど、危険はないの?」


「人に害はねえよ。中にある赤い核を壊せば簡単に死ぬしな。むしろゴミや害虫なんかを食ってくれるやつで、村じゃ放っておいていたぜ」


『こちらの世界では益獣のようですね。データに追加しておきます』


 どうやら人間にとって有益な働きをする益獣らしい。


 アイも魔物のデータを着々と学習してくれているようだ。


「触っても大丈夫かな?」


「ああ、問題ないぜ」


 ルナに確認を取ってから、スライムにゆっくりと触れる。プルプルとした感触でなんとも触り心地が良い。動きが本当にゆっくりで


 液体状の生物も思ったより可愛らしい。とはいえ状況が状況だし、一応聞いておかねばならない。


「……スライムって食べられたりするの?」


「いや、こいつは食ったら腹を壊すぜ」


「そっか、了解」


 スライムは食べられる魔物ではないようだ。食料にならなくて残念という思いとは裏腹に、プルプルとした可愛らしいスライムを殺さなくてよかったという気持ちが重なった。


 やはり俺はあまりサバイバルに向いていない性格のようだ。




「うん、これはうまい!」


「ああ、こいつは甘くてうめえな!」


 スライムと遭遇してから森の探索を再開した。そこでこの紫色の小さな実を発見する。


『桑の実、いわゆるマルベリーです。美容効果と健康効果があり、近年ではスーパーフードとしても注目されております。ビタミンや鉄分なども豊富で栄養もありますが、食物繊維が多いので、食べ過ぎるとお腹を壊してしまう可能性があるので注意してください』


「こんなにうまい物が自生しているとは驚いたよ。甘くていけるな」


 昨日食べたヤシの実の白い果肉よりも甘くて遥かにおいしい。それで栄養もあるんだから、ありがたい。


 この無人島に来てから満足に食べられていないということもあるが、身体に沁みわたるうまさだ。


「俺も匂いで毒があるかは多少分かるんだが、そこまで細かい判別はできないから助かるぜ」


『マスターとルナのお役に立ててなによりです。ベリー類はラズベリーなどもありますが、ヤマゴボウの実やトリカブトの実など似ていて有毒なものも多いので注意が必要となりますのでお気を付けください』


 アイは俺がいた世界にないものは判別できないが、あるものはこのように判別が可能となる。トリカブトとかは俺でも知っているくらい危険な植物だし、そういったものを判別できる能力は非常にありがたい。


 無人島に放り出されて初めはどうなることかと思ったが、アイとルナのおかげで希望が出てきたぞ。


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