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無人島に放り出された転生おっさん、スキル【AI】でサバイバルも気付けば快適な理想郷!  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第13話 石斧


「おおっ、竹はそんなにすごい植物なのか!」


「そいつはすげえな!」


 アイの説明を聞いて納得だ。どうやら竹はサバイバル環境においてとんでもなく優秀な素材となるらしい。


 ペットボトル以外に水筒の代わりにできるのも大きいな。これで雨水など水を確保したらそれを保存することも可能だ。


 そしてタケノコの存在を完全に忘れていた。確かにあれはおいしい食材にもなる。


「よっしゃあ。倒して川の方へ持っていこうぜ」


『賛成します。太すぎる竹は非常に硬く、マスターの作った石斧やルナの爪では切り倒せないかもしれませんので、ある程度の太さの竹を狙うといいでしょう』


 全員一致で竹を確保することになった。拠点をどこにするかを決めていないので、とりあえずそこそこの太さの竹を1本だけ切り倒すことにした。


「ルナ、もう少し下がってくれ」


「あいよ。おっさんは心配性だな」


 竹の前に立ち、昨日作った石斧をベルトから引き抜き、横に構える。


 この斧を使うのは初めてだ。石同士を叩きつけて割ったものをさらに磨いて形を整え、丈夫な枝の上の部分に切れ目を入れ、そこに石を固定して社員証の紐で結び付けたものになる。


 アイの指示に従って作ったため、見た目はまともな石斧に見えるが、いかんせん作ったのが日曜大工すらまともにやったの事のない俺だから不安で仕方がない。打ち付けた衝撃で紐が外れて石のナイフが飛んでいった時に備えてルナに離れてもらう。


「よいしょっと! ……おお、ちゃんと切れ目が入ったな」


 まずは半分くらいの力で石斧を振るう。野球のスイングのように振った斧は狙いと若干ズレたが、竹の節と節の間に当たり傷をつけた。石斧をチェックしてみたが、持ち手の枝の部分も割れることなく、紐も固く結んでいたため石の部分は外れなかった。


 続いて石斧を思い切り振ってみる。先ほどよりも大きな衝撃が両手に走ったが、石斧は壊れておらず、竹の方には先ほどよりも大きな切れ目が入った。


 素人が作ったにしてはなかなかじゃないか。ただし、問題は石斧を振るう俺がの腕が悪く、先ほどの切れ目とはズレてしまった。力を入れたぶん狙いがズレたのだろう。


「やるじゃねえか。よし、あとは任せてくれよ」


「……すまんがよろしく頼む」


 このままのペースで行けばかなりの時間がかかることは火を見るよりも明らかだったので、俺よりも力のあるルナに石斧を渡す。


 男として情けない限りだが、ルナに任せた方が早いのである。



 

「はあ……はあ……。確かこの辺りだったよな」


『先ほど見た地形から逆算すると、あともう少しです、マスター』


「ほらおっさん、あと少しだから頑張れ」


 ルナが竹を切り倒し、先端の不要な部分を切り取ってルナと一緒に丘の上から見えた川の方へ運んでいく。


 お昼にまともな食事をとって多少体力が回復したとはいえ、午前中はだいぶ歩いたし、昨日の疲れもまだ残っている。おっさんである俺の体力的にはすでに限界を迎えているが、アイとルナの励ましをもらって頑張って歩く。


 重い下の部分をルナが担いでくれて、俺が上の軽い部分を担いでいるのだが、それでも俺の方が疲れ切っているのだから体力がなさすぎて悲しい。


「おっ、水の音が聞こえてきたぜ」


「本当か!」


 前を進むルナの耳がピクリと動く。どうやら川の水の音が聞こえてきたみたいだ。


 さらに進むと木々の隙間から美しい川が見えてきた。


「川だ!」


『マスター、お疲れさまです』


 陽光を反射して銀色に輝く水面は透き通り、底の石がはっきり見えるほど澄んでいる。川の幅は思ったよりも広く、数メートルはあった。


 無人島に来てからたった2日で皮を発見できたことはとてつもなく幸運だ。ルナの視力があってこそでもあるが、高い場所から周囲を見回して本当によかったぞ。

 

「ひゃあ~冷たくて気持ちがいいぜ」


「ああ、冷たくて生き返るな」


 早速革靴と靴下を脱いでズボンをまくり、冷たく澄んだ川の水に足を浸ける。流れる川の水はとても冷たく、暑い日差しの存在を忘れさせてくれた。


 両手で川の水をすくい顔を洗うと冷たい水が一瞬で火照った顔を冷やしてくれる。頭も汗まみれだったので、直接頭を川の水に沈めると最高に気持ちが良かった。


『川の水は流れによって水の層が混ざり合うため、表面だけが温まることがなく、全体として温度が上がりにくくなっています』


「科学的なことは別としても、昨日は汗をかいたままシャワーも浴びられなかったからな。やはり川があるとだいぶ違う」


 たった一日だが暑かったこともあって、体中がベトベトしている。川があれば水浴びもできるし、これでようやく一息つくことができそうだ。


「ぶはあ~うめえ! ヤシの実の水もうめえけれど、こっちの方が冷えていてうめえな!」


「ルナ、川の水はあまり飲んじゃ駄目だよ」


『川の水は綺麗に見えても動物の糞便や死骸などが含まれている可能性があり、目には見えない多くの細菌があります。川の水をろ過して煮沸消毒してから飲んだ方がよいです』


「……よくわからねえけれど、あんまし綺麗じゃねえことはわかった」


 川の水は非常に澄んでいて飲んでも問題ないように見えるが、実際には細菌などが多く含まれているらしい。ちゃんとした処理をしてからじゃないと飲むことができないようだ。


 とはいえ、水源を確保することができた。これからどうするかを相談するとしよう。


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