190-2.不安と祝福(メルクキス視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(メルクキス視点)
あそこに付け入る隙はない。
俺は……今のチャロナを見て、それを痛いくらい思い知らされた。
(……無理、だな)
吹っ切るために、せめて振られても想いを告げようと……チャロナと再会する前は考えたりしたが。
マックスさん達との掛け合い、そして……ガキらへ指導する生き生きとした表情。
それに、チャロナの口から告げられた……公爵夫人になる未来。
そんな大事を知ったら、振られる確定でも尻込みしてしまうもんだ。あと、チャロナにも気づかれたはず。
俺が……幸せかどうかを聞いた時に、あいつも複雑な表情になったからだ。
なら、これでいいと想いを告げる事をやめた。
それに、報われないとわかっていても悪い気分じゃなかった。
(……ま、今はその気持ちに構ってやれねぇ)
なにせ、パーティーの一大事とも言い切れねぇ事態になったからだ。
「ら……ラト。ミッシュ、本当に?」
「「……ごめんなさい」」
「いや、謝ってほしいわけじゃないけど」
チャロナからのパンの差し入れがあると知らせがあった直後。
ラトもだが、常が無表情のミッシュも落ち込んだ表情になっていた。
その理由が……どうやら、ミッシュの懐妊らしい。今朝方からめちゃくちゃ吐いてたのは風邪ではなかったようだ。
「え!? おめでたじゃない!? なんで謝んの??」
のんきってわけじゃねーが、事の重大さを理解してねーようだな……この幼馴染みは。俺はシミットに軽く小突いた。
「阿呆。ミッシュもだが、ラトも結婚は避けられねぇ……それに、脱退前提だろ??」
「あ……」
マジでわかってなかったみてぇだ。チャロナと仲直り? 出来てから、心のしこりが取れて安心してたせいもあるなあ??
「戦力がふたりも……これは、本当にメルクの言う通りだ」
「……だから、ふたりがごめんって言ったの??」
「そう言うこと」
完全に戦力の半分が削られてしまう。
加えて、チャロナが抜けたことで女が減った分……ミッシュまで減ると、シミットへの負担も大きい。ただでさえ、このお転婆娘を抑えられる人間が減るのは辛い。
女側としての相談についても、ミッシュがいたことでここ数ヶ月はなんとかなった。その分、負担が大きくなるのは痛手だ。
「……けど。悪いことじゃない」
僧侶のジェラが……黙っていた口を開けた。あんまり普段からしゃべらねーから、俺達は一斉に振り返った。
「ジェラ??」
「命が宿るのはいいこと。であれば、先に祝福すべき」
そういや、普段は聖魔法とか回復要員だが……こいつは、神の僕に近い職業だった。俺達より、神への信仰心は強い。
「……そう、だね?」
マシュランも、それはそうだと……不安は抜け切らねーが精一杯笑った。
なら、俺もだがシミットも同じようにした。
先行きについては、当然不安などが大きいが……新たに生まれる命については、摘むとかそんな馬鹿げた気持ちは出てこなかったからだ。
次回はまた明日〜




