189-1.歓迎
お待たせ致しましたー
*・*・*
いよいよ、孤児院に行く日。
元パーティーのメンバー達が、今依頼と言う形で滞在しているところ。
元パーティーメンバーではなく、私は王女として孤児院に行かなくちゃいけないんだけど。
子供達には、きっとマザー・ライアが伝えているはず。それに、気づいている子もいたらしい。
なら、堂々と彼らに会いに行かなくてはいけない。
差し入れも、今日もちゃんと用意しましたとも。
ただ、移動は転移ではなく馬車でだが。
「大丈夫なんだぞ、チャロナ?」
王家が使える馬車で、一度公爵家にやってきたお兄さんが、私を励ますように言ってくれた。
「子供達にはきちんと説明してある。俺は、君の元メンバーには会ってはいないが……盛大に子供達からの洗礼を受けているらしいんだぞ?」
「洗礼?」
「冒険者とは違った、体力を消耗させる『遊び』をさせられているんだ。へとへとだと思うんだぞ」
「……ああ」
女の子達はわからないが、マシュランやメルクキス達は付き合わされているかもしれない。
私も、ホムラにいた時はそんな生活をしていたから……よくわかった。
(……大丈夫かなあ??)
前世でもだが、子供達の相手はとても大変だ。学年がひとつ違うだけでも体力の差を思い知らされてしまう。今の私もだが、彼らは普段冒険者でいても……すぐにバテてしまうだろうなあ?
そうこうしているうちに、馬車が到着して……お兄さんと一緒に降りると、外では盛大に声を上げる音が響いてきた。
『『『王女殿下!!』』』
『『『王太子殿下!!』』』
街中が騒がしくなっていた。
お兄さんが事前に来るのを知らせたかはわからないけど……すごい人混みだ。この中を歩いて、孤児院に行くのはちょっと大変どころじゃない!!
「皆、ありがとう。我が妹も無事に戻ってきた!!」
お兄さんがひと声かけると、街の人達は一瞬で歓声を落ち着かせた。なんだかんだで、お兄さんは王太子だから王族としての貫禄もあるからだろう。
すると、お兄さんから『簡単に挨拶』と囁かれたので……私は、思いつく言葉で皆さんに声をかけることにした。
「……ありがとう。迎え入れてくれて」
すると、我慢出来なかったのか……また歓声が上がってしまい、お兄さんも苦笑いしたので……悠花さんも連れて転移で孤児院に移動することになった。
正面玄関に到着すると、マザー・ライアがすぐに出迎えてくださった。
「お待ちしておりました」
マザー・ライアは静かに深いお辞儀をしてくれたので、私も同じようにした。
「……知らなかったとは言え……ご迷惑をおかけいたしました」
王女であることを、この人は知っていただろう。もし気づいていたとしても、フィルドさん達によって記憶を封印させられていただろうが。
「いいえ。子供達にも、貴女様の事をきちんと伝えてあります。それでも……貴女様は貴女様です、チャロナ王女殿下」
「……はい」
本当に、私は恵まれている。優しい人達に、囲まれていることが嬉しかった。
「おーにさん、こちら!!」
子供の声が聞こえてくると、バタバタと大きな音を立てて誰かがやってきた。
そちらを振り返ると……見覚えのある姿に、私は目を丸くしてしまったと思う。
次回はまた明日〜




