187-2.嫌だった下ごしらえ(シミット視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(シミット視点)
面倒事ではあったけど、リーダーのマシュラン達と決めたんだから異論はない。
この街のギルマスに提案された時はそう思ったのに……あたしは今くじけそうだったわ。
姫様……チャロナがいつもこなしていた調理とかが、自分達だけになった時もよく失敗したけど……さらに、失敗する回数が多くなった。
あの子が、この国に来てから……料理を教えていたと言うこの孤児院で。
同じパーティーメンバーであたし以外の女であるミッシュも参加しているが……飲み込みが早いのか今では芋の皮剥きを難なくこなすくらい。
あたしは……無残に終わるから、冷たい水で芋とか野菜を洗うことに徹した。
(……ほんと、ずっとこんな事を笑顔ひとつでこなしていただなんて)
自分が王女とか知らない間は、たまに困った表情にもなったが基本的に笑顔だった。
そして、いつも美味しいご飯を作ってくれた。
それを当たり前に思い過ぎて、感謝の言葉もかけないあたしは……馬鹿だった。戦闘とかに特化していなくても、あの子はあの子でちゃんとしたパーティーの一員だったのに……。今更会って、謝れるのかしら?
いつ来るかはわからないが、マシュランもギルマスの提案に頷いたし、あたし達はしばらくここで過ごすしかない。
一応、これも立派な依頼だから。内容は物凄く地味ではあるけれど。
「ん、出来た」
ミッシュは作業をこなすごとに。どんどんレベルアップしていく気がする。
もともと、弓者だから手先が器用だからかも。あたしは、言っちゃあなんだけど……ロッドとかがあれば魔法を繰り出すだけの冒険者。多少、体術訓練は受けていたがあんまり活躍したことはない。
「……早いわね」
「シミットも、慣れたら出来る」
「あたしの悲惨な芋の姿見たでしょう!?」
食用出来る部分と皮の部分の差が大きかった。なので、仕方なく野菜を洗う係に徹しているのだ。
「じゃ、練習」
ん、と渡された芋は凸凹が少ない丸の形だった。
そして、ナイフの刃を入れようとしたところで、ミッシュに待てと言われた。
「なによ?」
「薄く皮を剥く感じ。シミットは深く刃を入れ過ぎ」
「こう?」
「もっと薄く」
「んー?」
そんな薄く剥いて大丈夫かと思いかけたが……自分の悲惨さを思い出して、出来るだけ薄く刃を入れてみる。すると、ナイフも丁寧に研がれているお陰か……薄く皮が剥けた。
茶色の部分の下の、少し黄色くて白い部分がわずかに張り付いている程度。
これなら!? と、夢中になって皮を剥いていった。
「ん、コツ掴めば簡単」
ミッシュが言う通り、あたしが一個だけ剥けたじゃがいもの皮は……これ以上にないくらい薄く、自画自賛したいくらいだったわ!
なので、野菜を洗い終わってからふたりで一生懸命に芋の皮を剥いていく。
予想以上に早く終わり、さらに芋を剥いてからマザーのところに行けば。
「! 上出来ですね? 次から任せても大丈夫です」
まるで、母親が子供を褒めるような労いの言葉だったが悪い気はしない。
メルク達も子供達の相手で大変そうだが。あたしは、ちょっとだけ料理の楽しさがわかってきたので、ミッシュと色んな下ごしらえに挑戦することにした。
チャロナはもう二度と戻って来ないから、ここを旅立って何も得ないままでは良くない。
あたしは前だったら、嫌だと思っていた雑務が楽しくなってきたのだ。
次回はまた明日〜




