184-1.男女の事
お待たせ致しましたー
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夕飯には帰って来るって、悠花さんには聞いているけど……いいのかな、とも思う。
現代日本とは違うんだから、もっとゆっくりのんびりして来ればいいのに。私も言えたことじゃないけど。
(いや……いやいやいや!? 私前世でも未経験だったのに!?)
悠花さんとは違って、ガチでマジで経験皆無!!
キスも……実は、カイルキア様が初めて。あれもこれも全部!!
悠花さんは今は男の人だけど……そこのところどうなんだろう? エイマーさん一筋って言うのは充分過ぎるくらいわかってはいるけど。
その事実を知った上で、お付き合い以上に結婚の約束までしているエイマーさんも凄い……。
(結婚……婚約したから、そりゃそう言う話もあるけど……)
私はこの世界で、誰かと付き合おうとか言われることはなかったし……カイルキア様もお付き合い自体が初めてらしいので……少し、いや、だいぶ嬉しい。キスはお上手なのに初めてと言うのが信じ難い部分もあるけど。
「チャロナ」
誰かに教え込まれた? にしては、悠花さんとかフィーガスさん辺りならしそうだが。
「チャロナ?」
「うぇ、はい!?」
そう言えば、今はカイルキア様にアップルデニッシュをお持ちしたところだった。もう食べ終えてくださったのか、持ってきた三つともすべてなくなっていた。
「……何か考え事か?」
こちらに来るように、と手を伸ばしてきたので……私は少し恥ずかしいがその手を掴んで、導かれるまま彼の隣に腰掛けた。
「あの……ちょっとだけ、悠花さん達のことを」
「心配か?」
「えっと……それもですが、その」
「なんだ?」
言っていいのか、わからなくなってきた。
自分達のことではないけれど、男女のそう言う話題について……カイルキア様はどれくらい知識としてわかっているのか。流石にこの年齢でいろはについてわからないとは思うけど。
「その…………お付き合いをしているから。男の人として、悠花さんがどれくらいスマートかな……とか」
「……それか」
今のだけでわかってくださったのか!? とちょっとびっくりしたら……カイルキア様は大きなため息を吐いていた。
「?!」
「俺達が冒険者だった時期に、フィーガスを中心に男女の付き合いについては色々聞かされた。俺が、幼い時以来しか知らないチャロナへの気遣いがどうとかも……色々言い含められた」
やっぱり、フィーガスさん中心でそう言う教育については知っていたようだ。ちょっとだけ……ほっと出来たけど。私から一から十まで教えてと言われたら無理だから!!
「そ、そうですよね! 男の人同士だとそう言う話題」
「……チャロナはどうだった?」
「はい!?」
いきなり、囁くように聞かれたので声がうわずった。カイルキア様を見ると、少し熱っぽい瞳で私を見てきている。これは、まずいと流石に冷や汗が流れていく。
「お前には、前世の記憶があるとわかってはいる。ならば……以前のマックス以外に、そう言う話題を女同士でしたのか?」
「な、なくはないですけど!?」
「経験は?」
「な……ない、です」
誘導されるがままに答えれば……カイルキア様は握ったままの私の手を引き、私ご自分の懐に入れて強く抱きしめてきた。
「……そうか。それは嬉しい」
と、口にすると私の顎をくいっと上げた。視界いっぱいに、カイルキア様の眩しい笑顔が飛び込んできて心臓がバクバクと速くなっていく。
そして、お約束と言わんばかりにキスの嵐を受け……終わってから、自分達の事はせめて結婚してからにしようとなった。
悠花さんとエイマーさんの事を心配している場合じゃなかった……。
次回は木曜日〜




