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175-5.終わりの夏野菜ベーグル③(マックス《悠花》視点)

お待たせ致しましたー






 *・*・*(マックス《悠花(ゆうか)》視点)











 バカか、と流石にカイルの腕を振り切ってから、奴にゲンコツを食らわせた。



「い゛っ!?」


「アホか!? その婚約者の前で見せれねーくらいの顔晒すな!!?」



 ほんと、結ばれたにしたって……男ってバカなんだから!?(……あたしも今は男だから言えないけど)


 婚約者になった、チーちゃんの前で『氷の守護者』の顔晒すって阿呆極まりないわ!!



「……………………すまん」



 とりあえず、痛みに耐えながら顔を上げたカイルからはもう守護者の怒気は欠片もなかった。


 これには、チーちゃん達もほっとしていたけど。


 て言うか。



「俺とチーちゃんの仲だぜ? 今更だろーが?」


「……今更だがな。では、仮に俺がエイマーにしたらどうする」


「ぶっ殺す」


「……であれば、俺の気持ちも考えろ」


「……うぃー」



 まあね?


 たしかにね?


 そう言われちゃうと、自重するしかないわね!?


 カイルのいないところで、こっそりハグはしちゃうけど〜?



「あ、あの……おやつ、持ってきました」


『でふ! ベーグルでふ!!』


「んま!? ベーグルですって!!?」


「…………ベーコンを作ったパンとかか?」


「違うぜ、カイル。ドーナツ型のパンだ」


「…………面倒であれば、もう口調は問わん」


「あらそう? んじゃ、お言葉に甘えて〜?」



 男言葉って、使い分けるのちょーっと面倒なのよねん?


 エイマーの前は別だけど、チーちゃん達以外だと使うの億劫で……やめろやめろ言ってたカイルが諦めてくれたんなら遠慮なく!!



「こちらがベーグルです」



 チーちゃんがワゴンに乗せた皿をローテーブルに置くと、もう時期外れのコーンの粒が見え隠れしたベーグルがあったわ。横に切れ目があるから何か挟んだ感じねん?



「ドーナツ……にも見えるが」


「甘味はほとんどありません。生地にはペポロンを裏ごししたのを混ぜ込んで、仕上げにトウモロコシの粒をざっくり混ぜました。一度軽く湯通ししたら、焼きに入れます」


「……わざわざ茹でる??」


「もっちりした食感になるんです。間にはクリームチーズを挟んであるので、そのままどうぞ」


「わかった」


「んじゃ、さっそく〜!!」



 ベーグルにクリームチーズね?


 前世だと、専門店であらかじめ混ぜ込んで焼いたりとかはあったけど。チーちゃんの方はどうかしらん??


 カプって、カイルと一緒に食べ始めれば……もちっとした、餅とは違う食感がまずやってきた。



(美味しいわ〜〜!!)



 ほんのりペポロンの風味に加えて、味付けしていないけど甘味の強いシャキシャキしたコーンの食感。それがベーグル生地に入っているのに、全然喧嘩し合っていないわん?


 間のクリームチーズはたっぷりあるし、ちょっと塩気があるから甘めのベーグル生地と相性抜群!!



「……こんなパンが。美味いな?」


「ありがとうございます。そのパンですが、卵とかを使っていないんです。この世界では見かけないですが……アレルギー……体に合わない人へおすすめのパンなんです」


「あー、アレルギーねぇ? そう言えば、全然見かけないわ。枯渇の悪食のせいで、逆になかったんじゃない??」


「……そうだといいんだけど」



 チーちゃんのお陰で、後遺症的な部分は取り除かれた。


 ただし、食文化……レシピも改善とかはされていない。あたしもだけど、あと出来るのは……チーちゃんだけだもの。


 この子ひとりに荷を負わせるのは、あたしにとっては腹立たしいけど……無理ないもの。あたしはある意味おまけの存在……フィルド達の本命はチーちゃんだったからね?


 だから、チーちゃんが王女に戻っても、あたしは出来る限りのサポート力は惜しまないわ!!

次回は水曜日〜

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