170-2.千里と悠花①
お待たせ致しましたー
クロノさんは、私が日本で死んだ時の記憶を蘇らせるって言っていたけど。
その記憶の中にいる感じではあるが、死ぬ場面じゃなくて少し前の時に戻されたのかもしれない。
周千里。
いくつで死んだかは、『チャロナ』へ転生した後はわかってなかったが……多分、だけど。仕事風景を見る限り二十六歳くらい?
悠花さんの場合は聞いていないけど……同じくらいだったんだろうか?
「千里ちゃん、クロワッサンサンド出来上がったから品出しお願い出来るかしら?」
「わかりました!」
先輩に頼まれて、店に品出し……出来上がったパンを出していくのは手がすいた職員がしていくのが普通だ。年齢も経験も関係ない。
大き過ぎずと小さすぎず、けど自社ビルがある勤め先はそれなりに人気の高いパン屋だった。出来るだけ無添加、マーガリンやショートニングなどもほとんど使わない。湯種なども、こだわった製法で作っているパン達は大人から子供、会社員や中学生など職種問わずに買いにくるお客が多い。
なので、私が入社する前くらいからスタッフを増員して、簡単なイートインコーナーと陳列棚の拡大。あと、年中無休状態にさせていた。辞めるスタッフもほとんど無くて、美味しいパンを買いに来てくださるお客さんが多いから出来ることだ。
「来たわよ〜?」
品出しをしていると、『私』の体はその声に振り返った。
「いらっしゃい、悠花さん!」
「今日も元気いっぱいね? チーちゃん」
悠花さんと呼んだお客様。
『私』も意識を向ければ、そこにいたのはマックスさんじゃなくて、美人のOLさんだった。綺麗な黒髪にけばくないくらいに整えているメイク。
その姿を見て、私の記憶が弾けた気がした。カイルキア様との封印させられた記憶が戻ったかのように、悠花さんとの前世での関係も。
「今クロワッサンサンド出来たよ!!」
「ナイスタイミングね!? ミートタイムが遅くなったんで、買えないと思ってたのに!!」
「ふふ。ハムとスクランブルエッグにエビアボカドだよ?」
「どっちも買うわ!!」
悠花さんは近くの広告代理店で働いている、ベテランのOLさんだ。この時は恋人も別れたばかりで、フリーだと言っていた気がする。だから、パン屋の店員でしかない私が同い年とわかるとよく話しかけてくれたのだ。呼びかけは、前も今も変わらなかったが。
悠花さんはパンを買った直後に、私に何かのチケットを差し出してきた。
「映画?」
「ほんとは元彼と行く予定だったけど、別れてからすっかり忘れてたのよ? チーちゃんでよければ一緒に行かない??」
「いつ?」
「そうね? あたしの有給が火曜に取れたからその辺で」
「大丈夫!! ちょうど私のシフトも休みだったから」
「決まりね!」
そう。これくらい仲が良かった。
なのに、何故『私』も悠花さんも死んでしまい、同じ異世界に転生してしまったのか。
次の場面が移り変わるように、私の意識が揺れて……今度は悠花さんとアイスを食べながら歩いているところに変わったのだ。
次回は金曜日〜




