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169-1.城の発酵器

お待たせ致しましたー






 *・*・*









 お城の……多分離れ、って感じかな?


 お兄さんに案内されてやってきた場所は、いかにも研究施設って言う扉と建物。お庭の中にある建物だったのだ。何故か、扉の近くには数カ所穴が空いていたんだけど。



「なはははは!? 俺の罠が作動してしまったんだぞ!!」


「へ? お兄さん!?」



 なんか今、めちゃくちゃ物騒な事言わなかった!?


 すると、穴の中から……白い手が出てきたんだよ!?



「く……っ、殿下!?」



 その声はフレイズ様だった。落ちないように気をつけて近づけば、土まみれのフレイズ様が落とし穴に落ちていたのだ。


 その横にはお師匠様まで!?



「なんで落とし穴に!?」


「いや……外の空気を吸いに行こうとしたら……こぅ」



 フレイズ様に手を貸すと、そんな返答をいただいた。お師匠様の方は、お兄さんが雑に引っ張っていたけど。



「研究に熱中しまくりに、良い刺激だと思うんだぞ!!」


「子供なの!?」



 カイルキア様と同い年なのに、相変わらず子供っぽい人だ。


 とりあえず、お師匠様達を引き上げて、お兄さんの魔法で汚れを綺麗にしてから……落とし穴の方はとりあえず放置。お兄さんしか残りの設置箇所はわからないし、重要なのはお師匠様の作った発酵器(ニーダーポット)だからだ。


 研究施設の中に入らせてもらうと……カレリアさんのお部屋とは違い、本格的な錬金術師の研究施設だった。科学部品とかがないように見えて、ある感じ。冷蔵庫や魔石コンロがあるくらいだから、日本と似てて不思議じゃない。


 もしくは、フィルドさん達がそこは発展させるように動いたのか。いないので聞けないけれど。


 とにかく、お師匠様が作った発酵器の試作を見せていただくことに。



「これじゃよ、チャロナちゃん」



 ぽんぽんと軽く叩いた、大きな業務用の箱。


 見た目だけだと、ロティのとそんなにも変わらないように見えるが……文字盤の部分がまだ埋め込まれていない。



「これ……あの説明だけで作ったんですか?」


「うむ。実際にロティちゃんのでも見させてもらったからのぉ。まだ文字を組み込む箇所の構造がさっぱりじゃが。上の段は温かく、下は冷たくするようにはさせておる」


「開けても?」


「構わんぞ?」



 まずは上。温度は具体的にはわからないけど……湿度がほとんど感じない。つまりは、暑いだけ。エアコンの中にいる感じだ。


 次に下の段。凍るまではいかないが、冷蔵庫くらいの冷たさだ。こちらも湿度が感じ取れない。


 ひとつの設定しか難しいのだろう。だからとは言え、実現出来るだけでも凄いが。



「……湿り気がないですね?」


「うーむ。そこも術式を組み込むのが難しいんじゃ……。魔石だけでなく、魔晶石も組み込んだ方がいいかもしれん」


「けど……国中に広めるには、お値段がかかりますよね?」


「まずはこの城だけで良いからの? そこは気にせんでいいと陛下もおっしゃってくれたんじゃ」


「なるほど……」



 たしかに、お父さん達が食べる分を思えば試作に贅沢を尽くしても問題ないかな?


 あとは、メイドさん達とか家臣さん達の食事についてはどうなっているのか? 特にメイドさんとかは常駐してそうだけど。



「私達が食べる分だけでも、色々試作してくださいな? チャロナのパンが美味し過ぎるのは本当だけど、少しずつでも出来るようになった方がいいですもの」


「そうですのぉ」



 お母さんの言葉に、お師匠様達はうんうんと頷いた。


 なので、私がローザリオンのお屋敷に帰るギリギリまでの間。ロティに出てきてもらって、発酵器に変換(チェンジ)して……お師匠様と何度も確認とメモ書きをする作業を頑張ったのだ。

次回はまた明日ー

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