165-5.真実の記憶(カイルキア視点)
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*・*・*(カイルキア視点)
ダンスの途中で、チャロナの様子が少しおかしかった。すぐに、大丈夫だと笑顔になってくれたのだが……顔色が少し普通ではない。
俺を見て、赤くなったのだ。
今まで幾度もあったが、それは……。
(……それは?)
それは、何だったか。
俺の頭の中で、音が聞こえたような気がした。何かが破裂したような音が……。
『ご、ご迷惑かもしれませんが、聞いていただきたいことがあります!』
『あり得るぜ。俺達の記憶をいじったり出来るのはあの神らだけだ。異能込みでチーちゃんの操作をしてるかもしんねー』
『せっかく……せっかくお姉様がお兄様にお気持ちを告げれるとお思いましたのに!』
『それを止めたっつーことは、チーちゃんとカイルをまだくっつけたくねー理由があんだろうな』
チャロナが告げようとしてくれて、俺もだが皆が忘れさせられていた記憶達。
それが、泡のように浮かんでは弾けて……頭の中に蘇ってきた。もしや、チャロナも戻ったのだとわかると……妙に照れ臭くなってしまった。そうだとしたら……俺が遠出などで告げようとしていた気持ちまで、思い出しただろうから。
ダンスが終わっても、俺達は互いに無言になってしまい。チャロナはリーン達のところに、俺はレクターやマックスらがいる方に自然と足を向けた。
「カイル、良かったじゃねーか?」
あとから来たフィーガスはワインをかなり飲んでて顔が赤い。妻に迎える予定でいるカレリアがいるのに、呑気なものだ。そう言えば、チャロナに結婚式でのケーキを頼んではいたな?
「……屋敷で生活するのは……だけだ」
「けど、あれだろ? 姫様は姫様でお前を選んだも同然じゃねーか?」
「……記憶が戻ったのか?」
「俺だけじゃねーぜ?」
「僕も」
「俺もだ」
その割には、マックスの方が浮かない顔をしている。
「……マックス、どうした?」
俺が声をかければ、マックスは頭を掻いたが。
「俺とチーちゃんの前世……実は結構な共通点があったんだ」
「それは今更だろー?」
「ちげーよ、フィー。俺らが気絶させられてる間に、俺だけ……別で意識を引っ張られたんだ。そん時に、伝えられたんだよ。俺もだが、チーちゃんがこの世界に転生させたられた理由を」
「「「なに!?」」」
それは一大事ですまない!?
「……まだチーちゃんには言えねーが。……俺は人身事故で死んだ記憶は作られたもんだ。実際はチーちゃんとほぼ同時に殺された」
「……誰にだ」
俺は、かつてない怒りが込み上がってきた。
今はもちろん生きて笑ったりしているが……チャロナが一度でも誰かに殺されたなどと。
冷静でいられるわけがない!?
「……怒り沸騰は当然だろーが。カイル、その顔チーちゃんに見せんじゃねーぞ?」
「…………」
どれだけ恐ろしい顔になっているかは自分でもわからないが。チャロナに見せて、恐れられるのは……出来れば避けたい。
酒を煽って、ひと息吐くことにした。
「とりあえず、まずお前らには言うが。……俺とチーちゃんはあっちでも親友に近い女同士だった。チーちゃんはパン屋で俺は以前言ったように、勤め人。チーちゃんんとこのパン屋には常連だったから、親しくなったってわけ」
「……それが何故、殺された?」
「絶対的とは言い難いが、治安が良い国でも犯罪は起きる。俺とチーちゃんはそんなひとつに巻き込まれた。二人で出かけた時に……無差別の襲撃みたいな野郎に刺されたことで死んだ」
その記憶を、神によってマックスは戻されたらしい。チャロナにはまだだが、マックスの判断次第で戻るか否かが決まるそうだ。
この記憶を出来ればチャロナには知られたくはないが……マックスは告げると決めたらしい。今のチャロナからなら大丈夫だろうと。
(俺の……方は)
チャロナへの想いを、いつ告げるかどうか。
彼女も俺との記憶が戻っていたとしたら……歩み寄ってくるかわからない。
だが、男としては。
俺が決意を固めなくては!
次回はまた明日〜




