165-3.父親としての葛藤(アインズバック視点)
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*・*・*(アインズバック視点)
夢のようだと思っていた。
マンシェリー……いや、チャロナがこの城に戻ってきただけでなく。あの子が神の御前で選んだ選択により、我が最愛の人であるアクシアも戻ってきた!?
しかも、失った当時とは違い、今の俺と同じくらいの年頃にまで成長した姿で。……美しくないわけがない!!
(ああ……ああ!? 本当に夢のようだ!!)
チャロナが戻ってきてくれるだけでも、俺は歓喜の涙に溺れてしまうと思っていたのに……アクシアまで復活したとなれば……俺だけでなく、デュファン達も涙を溢れさせずにはいられなかった。
男の大半は、チャロナの生誕祭なのにアクシアが戻ってきた事実に形なし状態だ。
「……王妃様ぁ!?」
「アクシア様ぁあ!?」
「よく……よく!!」
「姫様も美しくなられて……!」
アーネスト殿もだが、じじい連中も含めて男前が台無しになってしまっている。まあ、俺もそうだがな!?
(しかし、娘が望んだとは言え……城では過ごせないだなんて!?)
たしかに、神が仰られたように……【枯渇の悪食】による悪影響は食文化以外はチャロナの選択で解決は出来た。しかし、その食文化はそのままだ。
コメやパンなどの主食のレシピに関しては、ほとんど元のままらしく。チャロナが正しいレシピを広めなければ、悪食以前のようにはならない。
そのためには、城に篭るよりも……想いを寄せているカイルキアの屋敷でこれまで通りに作って行った方がいい。城よりも自由に作れるからな?
フレイズ殿率いる、宮廷料理人達に混じるのでは緊張感が半端ないだろうから。
「…………カイルキア、か」
これまで、神によって互いに想いを寄せ合っていたのに……アクシア達の復活に必要とする力の糧として、それらを実らないように封印されていた。
だが、今は。
アクシアもだが、契約精霊らしいロティも救うことが出来た。
であれば、近いうちにカイルキアは『仮』ではなく、本物の婚約者になるだろう。
結婚はさせていないが、もう嫁入りさせた気分になり……俺は、複雑な気持ちになった。
一年どころか、ひと月も一緒に過ごしていないんだぞ!?
「兄さん、声に半分以上出てるよ」
「む!」
デュファンがワインのグラスを持ってきてから、俺の肩を叩いてきた。
俺は慌ててチャロナ達を見たが、チャロナはアイリーン達と楽しそうにおしゃべりをしていたので聞こえていないようだ。
「兄さん? 姫は我が息子を選んだんだ。息子とて、幼い頃の約束以上に姫を好いているんだよ。それは邪魔をしない方がいいと思うんだけど」
「……わかってはいる。俺だって、わかってはいるんだ!!」
「けど。頭では認めてても、親としては寂しいんだよね?」
「お前も分かってて追い打ちをかけるな!?」
今日だけは、とりあえず城で過ごしてもらえるが。……明日からは、あの子はまたローザリオンの屋敷に戻っていく。
残念だが、あの子自身の意志を無駄にはさせたくない。
次回はまた明日〜




