162-5.本当の名前
お待たせ致しましたー
*・*・*
選べ。
なら、私はそのどちらも選ばない。
だから、最後の選択肢である……私の望み次第で未来が決まる方を選ぶ。
世界を助けるのもそうだけど。
ロティやお母さんを助けない選択だなんて嫌だ。
絶対嫌だ、と強く思いながらシアちゃん達に向かって叫ぶと……彼らは何故かにっこりと微笑んでいた。
「やっぱり……あなたはその選択を選んだのね?」
シアちゃんが右手を上に向けると、私がいるお母さん達の球体に向かって光を飛ばしてきた。
光がそれぞれにぶつかると、大きくヒビが入る音が聞こえてきて、ロティもだがお母さんが中から出てきたのだ。
「え、え、え!?」
どっちを抱えた方がいいかとあたふたしていると、いつのまにかやって来ていたカイルキア様がロティの方を抱えてくださった。
なので、私はお母さんの方を抱きしめた。
「お母さん!」
「……マンシェリー!」
お母さんも手を伸ばしてくれたので、お互いにきつく抱きしめあった。
お母さんに触れて思い出したけれど、あの号泣した夢の中でも今日の事を告げられた。
だけど、それが夢で終わらないで済んだ!
お母さんは……多分、生き返るんだ!
「お母さん……お母さん、良かった!!」
「マンシェリー……あなたの選んだ選択のお陰よ。……ありがとう」
お互いに痛いと思うくらい、ぎゅーぎゅーに抱き合っていると、後ろからトントンと誰かに肩を叩かれた。
振り返ると、ユリアさんが立っていた。
「感動の再会を邪魔して申し訳ないけれど。あなたにはまだしてほしいことがあるの」
「私……にですか?」
「ええ。その選択を選んだのなら……あなたに与えた異能を使って、【枯渇の悪食】を消滅させましょう?」
「で、出来るんですか?」
差し出す必要はないみたいだけど、出来る事があるのなら……この世界のために叶えてあげたい。
お母さんとロティを助けられたんなら、なんだって出来る気がするのだから!
私は決意を固めてから頷くと、お母さんから離れた。
ユリアさんも頷くと、カイルキア様の方を向いてロティに手を伸ばした。
「カイルキア、ロティをこちらに」
「……わかりました」
まだ目をつむったままのロティを抱えていたカイルキア様は、ユリアさんの指示通り私達の前に来ると……地面にロティを横たわらせてあげたのだ。
「チャロナ? あなたに与えた『幸福の錬金術』で培ったPTを使うの」
「あの……私のこの世界での名前。マンシェリーの方が本当みたいですけど」
「姓と名を入れ替えていたのは。孤児にさせていた間に狙われないためだったの。だけど……あなたはどちらがいい?」
「どちら……」
どちらも本当の名前。
けれど、ミドルネームとファーストネームでは全然違う。
だけど、でも。
私は……これまで大切にしていた方を選びたかった。
ユリアさんをもう一度見ると、彼女は変わらず微笑んでいた。
「選んだ?」
「はい。マンシェリーも大事ですけれど……ずっと『チャロナ』と呼んでくださった皆の思いを大切にしたいんです。お父さんやお母さんには申し訳ないですが」
お母さんを振り向くと、まだふらついているのかカイルキア様に支えてもらっていた。
私と目が合うと、にっこりと微笑んでくれたけれど。
「であれば、チャロナ。始めるわよ? ロティの腹部に手を載せて?」
「はい」
両手をゆっくりと、大きくなったロティのお腹の上に置くと……ロティの目がゆっくりと開いたのだった。
次回は日曜日〜




