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162-1.吾味悠花と(マックス《悠花》視点)

お待たせ致しましたー






 *・*・*(マックス《悠花(ゆうか)》視点)









 動けない。



(……………………どーゆーことよ……??)



 チーちゃんとカイルがいきなりいなくなって。


 あたしも光に飛び込もうとしたが、間に合わなかった。


 その後に、どーゆーわけかフィルドが出て来て……強固派のイシューの前で何か言い渡したんだけど……今度は、あれだけ封じていた『神の名』を解放した。


 途端に、あたしやレクターもだけど。陛下や他の臣下、暗部部隊までもがその場で倒れる羽目になったのよ!?



「神よ……何故」



 ギリギリ意識を保とうとしていた陛下が、フィルドに声を掛けた時。フィルドはらしくないくらい高らかに笑い出した。



「すべてはこの世界とお前の娘のためよ」



 その言葉を告げた後、あたしは意識を失った……はず。


 なのに、暗闇の中でひとりぽつねんと立ってたわけ。服装は護衛のままの鎧とかを身につけ……じゃなくて、スーツを着ていたわ。


 レディースもんの、前世ではよく着ていたタイプ。


 まさか……と髪を触ればストレートヘアで暗闇なのに、黒髪が確認出来た。


 この姿は、前世の『吾味(ごみ)悠花(ゆうか)』のもんよ。



「あたし……生き返っちゃったわけ?」



 声まで、その時のままだ。


 一体全体意味がわからないわ!!?



「うーん? 正確には違うよ?」


「誰!?」



 フィルドじゃない、もっとガキのような男の声が響いて来た。


 そっちを向けば、ゾッとするくらい白い肌にこの暗闇に溶け込みそうな黒い短髪と独特な漆黒の服。


 背は、中学生くらいかしら?


 いかにも、神って感じの美少年ね? ショタコン勢には高嶺の花みたいな感じだわ。



「はじめまして、だね? 現在はマックス=ユーシェンシーで前は吾味悠花だった存在。僕はフィルザス。呼び名は君の幼馴染のフィーガスと同じだけど、どっちでもいいよ?」


「あんたも……神?」


「そ。シアの兄であり、伴侶であり。フィルドじい様達の孫でもある他の世界の主神だよ?」


「……チーちゃんじゃなくて、なんであたしに用があんの?」



 あたしだって転生者ではあるが、フィルド達が気にかけていたのはどうしたってチーちゃんの方だ。


 カイルも連れて行かれちゃったけど、なんでフィルドの孫っつー神があたしに用があんの? 意味わかんないわ。



「んー? 僕が聞いてる話だと、君の記憶の一部をもとに戻すってことだけかな?」


「は?」


「君と……マンシェリー? だっけ。あの子の前世の記憶は一部弄られているんだってさ」


「……あたしとチーちゃんが?」


「そ。だから、君の場合は魂を揺さぶり起こして、今だけ前世の形態になってるんだよ」


「じゃ、生き返ってはいないの?」


「それは無理だね? 君にはもう生涯の伴侶がいるんでしょ?」


「そうね?」



 今だけ前世の姿ではあっても、あたしの心はエイマー一筋に変わりないもの。


 それを告げれば、フィルザスは綺麗過ぎる顔で綺麗過ぎる笑顔になったわ。



「さて、戻す記憶についてだけど。君とマンシェリー……(あまね)千里(ちさと)の関係性なんだ」


「は? あたしとチーちゃんはこの世界での初対面じゃないわけ?」


「そーそー。そこが今封印しちゃってるとこ。君達はもともと知り合いだったらしいよ? こっちの世界での魂が固定するために忘れさせてたんだって」


「……じゃあ、なんでこんなタイミングで戻すわけ?」


「あの子は今特殊な立場にいるからね? 君は事情説明のために別口で戻すことになったのさ」


「……面倒だからじゃないわよね?」


「僕はあくまで頼まれただけだからね? この後合流予定だし」


「……戻したら、あたしまた気絶するの?」


「うん、そう」


「あ、そう」



 肝心なとこでチーちゃんの手助けをするわけじゃないそうだ。


 なので、都合関係であたしの前世の記憶が蘇ることになったんだけど。


 あたしとチーちゃんは前世でもマブダチだったことと。


 あたし達は同じタイミングで、通り魔に殺された記憶を見せられてしまうのだ。


 たしかに……これは、チーちゃんの場合すぐに戻したら大変な記憶だわ。


次回は火曜日〜

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