158-1.念のため(アーネスト視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(アーネスト視点)
今日を入れてあと三日。
姫様がこのセルディアス城に戻って来られる日が、格段に近くなってきたわい。
そして、痴れ者であるイシューとやらが表に出て来る日も。
(……王女殿下やカレリアを亡き者にしようとしてまで、儂の弟子になりたい意味がわからんわい)
そんな愚か者、儂は弟子にするつもりなどこれっぽっちも思わんわい。
血に濡れた手で、魔物ではなく、人間の血にまみれた手で、儂の弟子になりたい?
絶対、断固、お断りじゃ!!
「……儂は。カレリアや姫様じゃからこそ、弟子にしたいと思ったんじゃ」
カレリアの純粋無垢な、錬金術への好奇心に。
姫様は、この国……いいや、この世界では誰よりも技量があるパン作りの技術に。
儂が惚れたから弟子にしたんじゃ。
私利私欲のために、肩書きをほいほいと与えるわけにはいかん。
先先代国王陛下との約束もあるからのお?
『アーネスト。私はこの国の再興に力を尽くすつもりでいる。あなたにも、錬金術の発展のために、この国にいて欲しい』
居場所がなかった、ハーフエルフでも流れ者だった父を持つ儂に。
この国は、儂に居場所を与えてくださったんじゃ。じゃから、寿命が尽きるまでこの国に尽くすつもりじゃ。
その誠意を知らぬ愚か者を、そうそう弟子にするつもりは毛頭ない。
ああ、あと三日で姫様のパンが食べられると思うと。
思考とは別に、どうしてもよだれが出てしまうわい。
「サンドイッチと聞いたが……」
儂が最初にいただいた卵のサンドイッチか?
はたまた全然違うものか。
どちらにしても楽しみじゃわい。
だが、式典を利用してイシューを含める愚かな強固派の連中をすべて捕らえる計画を、漏らしてはいけない。
表向きは、姫様への勲章授与とかじゃが。
本当の目的は、成人の儀ときちんとした生誕祭じゃ。
この間は、姫様のこれまでの誕生日を急遽祝うことになったが。
儂は、アミュレットを贈らせていただいた。イシューなどに万が一襲撃を受けても、そのアミュレットが肩代わりしてくれるように。
「と言っても、当日は暗部部隊も控えておる」
フィセル将軍お抱えの、裏部隊。彼らなら、信頼出来るから安心は出来るが。
何が起こるかわからんから、念のため、じゃ。
「さて、今日のフレイズのパンの出来栄えはどうかのぉ?」
最近の儂の仕事は。
まだ試運転中の魔導具。発酵器の試作機で作られるパンを、試食することくらいじゃ。一緒に作ってもいいが、あんまり城内で怪しまれたくないからの?
少しはマシになってきたパンを試食するために、儂は重い腰を上げて研究室を出ることにした。
次回は木曜日〜




