157-4.友達だけど(エピア視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(エピア視点)
……美味しかった。
姫様のパンはいつも美味しいけど、今日のもすっごく美味しかった!!
姫様の前世の知識にあるクリームチーズに慣れてきたつもりでいたけど……今日のは格別に違ってた!!
「……はぁ〜……美味しかった」
ホムラの皇室からいただいた、特上の黒ゴマという種子に似た食材。
そのままだと、不思議な香ばしさがあって、ちょっと脂っこいけど。調理すると大変身するのだ。
ゴマダンゴって言うのにも驚いたけど、葉物野菜でサラダみたいなのが出来るのが。油も取れるらしいが、姫様にその知識はないそうなので、さすがに作れないらしい。
とりあえず、これまでフィルドさん達からいただいたアズキにダイズと一緒に、姫様の畑のスペースに喧嘩しないように植えさせてもらった。
このお屋敷の畑全体には、ラスティ叔父さんの番であるウルクル様のご加護のお陰で、すぐに収穫出来る。ましてや、姫様に直々にご加護の一部をお与えなさったのだから、成長速度が早い。
なので、今日姫様が作ってくださった黒ゴマのパンに使えて、それがとってもとっても美味しかったのだ!
「……もっと食べたかったぁ」
白パンに黒ゴマを混ぜたので、最初は食欲が出てこなかったが。
ひと口食べれば、それはまったく気にならず。
ゴマダンゴとは全然違うが、パンにさらに香ばしさを感じて。中に入っているクリームチーズが温かくて、普通のチーズとは違って伸びはしなかったけど……さっぱりとしていて食べやすかった。
これは、夢中になって、六個も食べてしまうくらいだったの。
ちょっとだけ、エイマーさんに怒られてしまったけど。後悔はしていない。
明日も食べたい、とは思った。思った……けど。
「……姫様。あと四日で」
このお屋敷から、いなくなってしまうかもしれない。
ご自分の本当のご身分が、王女殿下だと知ったら……。
「……でも。旦那様のことは」
もし、ご婚約されたら……このお屋敷に戻ってこられるのだろうか?
この間の誕生日パーティーで、陛下は号泣なさっていらっしゃったけど。……姫様はお城で過ごしたことがほとんどないのなら。
やっぱり、このお屋敷から出て行ってしまうのだろうか。
畏れ多くも、友達になっているとは言え。……寂しくないわけがない。
一緒に過ごして、サイラ君とは恋人になれて。前髪を切る勇気ももらった。
だけど、寂しいものは寂しい。
「エピア!」
収穫作業をしていたら、サイラ君がやってきた。この時間帯なら、飼育用飼料の材料を取りに来たんだと思う。
「……お疲れ様」
「お疲れ! いやー、あのダイズのカスとか上げてっと魔物達の調子がいいんだよ」
「? そうなんだ?」
菜園についてはともかく、魔物の飼育は専門外だからさっぱりわからないのだ。
だが、調子が良いのならいいことだ。
「おう。コメの殻とか上げてもいいんだよなぁ? あのフィルドさん達ってしばらく来れないんだっけ? 色々聞きたかったけど」
「……そうらしいね」
急に来て、急にこのお屋敷に馴染んだかと思えば、また急に去った人達。
マックス様の契約精霊、レイバルス公のお知り合いらしいけど……どこで知り合ったんだろうか?
レイバルス公は、マックス様が幼い頃に出会ってからずっとご一緒らしいのに。
「あ、エピア」
「? なに?」
「姫様、明日また別のチーズのパン作るかもって」
「ほんと!?」
その情報に、今まで考えていたことが全部吹き飛んでしまった!!
次回は金曜日〜




