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157-1.レディになるため?

お待たせ致しましたー






 *・*・*










 ドレスの裾を掴んで、深々とお辞儀。


 顔が地面につくかつかないか。そんなとこまで腰を曲げて。


 だけど、美しく、見せなくてはいけない。


 この重要ポイントを抑えて、頑張ってはみているんだけど。



「はい、もう一回」



 メイミーさんに却下と言われてしまったので、私はへなへなと絨毯の上に座り込んでしまった。



「……うう」


「もうちょっともうちょっと。優雅に可憐に、よ? 形は出来てきたけど、まだ自然にとは言い難いわ」


「……頑張ります」



 誕生日パーティーから、式典に近づくにつれ。メイミーさんのご指導がどんどんスパルタになっている気がする……。


 そりゃ、孤児が国王陛下の前で挨拶するんだもの。中途半端なマナーだけで披露するわけにはいかない。


 せっかく、体が筋肉痛に慣れてきたとこなのに、また逆戻り。


 あと四日に迫ってきたので、メイミーさん達も必死なのだろう。


 終わってから、レクター先生に治療していただいている時は、先生に苦笑いされちゃったけど。



「お疲れ様」


「うう……うう。本当に、当日大丈夫なんでしょうか?」


「大丈夫だと思うよ? だから、姉さんも必死なんだよ。君を出来るだけ完璧なレディに仕上げたいんじゃない?」


「でも……勲章を受け取ったからって。私孤児だったのに」


「こらこら。その勲章を与えてくださったのが陛下なんだから」


「……はい」



 たしかに、陛下のご意向に私なんかが逆らえるわけがない。


 ないけど……異能(ギフト)があるだけの私なんかに、そこまで優遇させていただいているのは。多分、『パン作り』のお陰だと思う。


 あの時、崖から落ちて。前世の記憶を蘇らせなきゃ、それは出来なかった。


 冒険者じゃなくて、全然違う生活をしていたかもしれない。今もだけど、今の生活に私は満足しているのだ。



「とりあえず、あとちょっとだよ? 素敵なレディになって、貴族達を驚かせようじゃないか?」


「え、え〜……?」


「な・る・の。とりあえず、午後は仕事に戻るんでしょう?」


「……はい。ゴマを使ったパンを作ろうかと」


「楽しみにしてるね?」


「はい」



 痛みが完全に消えてから、コックスーツに着替える時。


 首に、カイルキア様からいただいたクローバーのネックレスをつけて。鏡を見てにやけてから、ネックレスを服の下に入れて。


 ロティと一緒に、厨房に向かうことにしたのだった。

次回は水曜日〜

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