156-1.勧誘したのは(マシュラン視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(マシュラン視点)
ホムラのシュリ城から僕らが去ったのは、マザー・リリアンからチャロナが孤児になった経緯を聞いて、一ヶ月後だった。
メンバーのそれぞれが、考える時間が必要だったからだ。たしかに、冒険者としてはあまり役に立たなかったが、雑事や家事に関してはピカイチだった彼女のことを。
(……誘ったのは、僕だったっけ?)
と言っても、最初は……故郷だったセルディアス王国の亡くなった王妃様。アクシア様に瓜二つ過ぎて、なんでこんな僻地にいるんだと思ったくらい。
あの時はホムラじゃなくて、全然違うところだったから、僕は内心『なんで? なんで?』と最初は混乱しちゃったけど。
姫様は、何も知らなかった。
それどころか、孤児だったって言うし。
だから、僕は決めた。
送り届けようと。
その意味で、戦闘向きじゃない職業だったけど、彼女をメンバーに入れて。
でも、何をさせてあげていいか、リーダーとしては悩んだが。彼女がすすんで、自分から雑事などをするようになり。
他にも、採取なんかも頑張ってくれたので、ある意味このパーティーにはなくてはならない存在になったんだけど。
(……一年前、くらいだったかな?)
セルディアスの使者に遭遇することになり。
一年以内に、セルディアスに姫様を帰還させるようにしろと。
ちょうど一年くらい経って、僕は忘れかけていた。僕が最初に彼女をメンバーに入れた理由を。
だからって、僕の口からだと信じてもらえないと思ったから。
脱退させる、のに。最悪な形で彼女を追い出したのだから。
今思えば、馬鹿な事をしたとわかっているのに。
どうして、あんな形にしてしまったのか。
今も、よくわかっていない。
「……でも、今は」
城にすぐに戻れなくても、公爵様のお屋敷に匿われているのなら。
きっと、本来のお姫様のような生活を送れているかもしれない。
僕らと一緒にいた時の、家政婦のような生活じゃなくて。
「それでも、セルディアスにも危機はあるんだ……」
マザーが言っていた、ほとんど庶民だった僕も知らなかった城の事情。
強固派だなんて、僕は知らなかった。姫様は城に帰れば何不自由のない生活を送れるだろうと思っていたのに。
実際は魔の巣窟になっていた。いくらお父上の陛下や兄上の王太子殿下がいらっしゃっても。
幸せになれないだなんて、あんまりだ。
「それに、マザーまで狙われてただなんて」
今は、マザーは孤児院の再興までシュリ城へ匿われている。僕らが、彼女の側にいる意味ももうない。
だから、僕らはもう用済み。
ただの冒険者に戻るだけだ。
それでいいと思っていたのに。
別れた直後もだが、姫様のいない日常に戻るのには少し寂しさを覚えた。
そう思っていたら。
「……え? なんて?」
「……だから」
「ラトと付き合ってる」
「え、ほんと?」
とりあえず、目的は具体的になかったが。
何故かまたセルディアスに行こうと言う提案が出たので、メンバーで向かっている途中。
僕は、メンバーのミッシュから。剣士のラトと付き合っている事を告白されたのだった。
次回はまた明日〜




