152-4.最後のお菓子教室②(フィルド視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(フィルド視点)
いやはや、まあ仕方ないと言うのは仕方なかろう?
チャロナのための式典が近い。
この孤児院に来れるかどうかは、チャロナが選択することによって変わってくる。
であれば、差し入れやお菓子作りが出来なくなるのも仕方がない。
儂は、『リアン』と言う少年となって孤児院の子供達の中に紛れ込んでいた。ここの子供達も勘がいい。
以前のクラットと同じように、チャロナが姫であることを知ってはひろめてしまうやもしれん。
じゃから、昨日から潜入して、子供達の様子と内なる声に耳を傾けいたんじゃ。何人かは、紛れていた儂のことを疑問に思ったがの?
とりあえず、儂はケイミー達と同じ班になった。
まずはクラットと一緒に、チョコレートを刻む作業じゃ。
子供用の包丁で刻んでいくのは、少々骨が折れるわい。
「ふんふんふん、ふふふーん?」
鼻歌を歌いながら刻むくらいの余裕はあるぞ?
ユリアやシアのために、時々作るからのお?
今日のチョコ菓子は、ケーキなのにバターを使わんらしい。興味深いのお?
「リアン、はや!?」
「そーぉ?」
ジジイ言葉は出さんぞ?
一応今はぴちぴち? の少年じゃからのお?
「うんうん。リアン君だっけ? 手際いいね?」
チャロナが来おった。
目の色は変えているが、小さい少年になっているから全然気づかれていないようじゃ。
ま、当然気付かれぬように認識不可の術をかけておるからの?
「お姉さん、これどんなお菓子になるの?」
「ケーキに近い感じね? 材料が少ないけど、ココア蒸しパンよりはチョコの味がすごいはずよ?」
「「「「へー?」」」」
なるほど、なるほど?
孫のレイアークもまあまあ自炊は出来るんじゃが。この子には劣るかもしれんの?
それから、チョコをボウルに入れて牛乳と一緒に湯せんで溶かして。
ケイミー達が混ぜてくれた卵と砂糖を、少しずつチョコのボウルの中に入れてかき混ぜて。
その間に、クラットがふるった小麦粉を、粉気がなくなるまでしっかり混ぜて。
で、おそらくチャロナの銀製器具から出した、長方形の型。
それに流し込んだ順に、窯に入れて焼いていく。焼いている間に、片付けをしているんじゃが。
『『『いい匂い〜〜〜〜!!』』』
暴力的なくらい、いい匂いがするんじゃ。チョコが熱で焼けて、ふわっと部屋の中に充満する匂い。
シアが居たとしたら、よだれ洪水かの?
いや、あれは少し成長したから違うかもしれんの?
焼き上がったら、余計に匂いが強くなり。子供達の食べたい欲求が強まっていくが。
チャロナは、待ちなさいと言い聞かせてきた。
「今のまま食べちゃうと、せっかく綺麗に焼けたお菓子が崩れちゃうからです。もう少しの辛抱ですよ?」
『『『……はーい』』』
いやまあ、そうなんじゃが。
儂も辛抱出来ん!!
この幸せの香りに包まれては、片付けに集中出来んわい!?
次回はまた明日〜




