146-1.待ち侘びる(アインズバック視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(アインズバック視点)
あと、半月。
やっと半月だ!
マンシェリーが、この城に戻ってくるのだ!!
やっと、父親と名乗れるのだ!!
……親子となれても、その後のあの子の希望がわからないでいるが。
何せ、神からの掲示とは言え、幼児期から孤児で過ごして。つい最近、前世の記憶を取り戻して甥のところでパン作りをしているのだ。
王族の生活を望むかと周囲は思うかもしれないが、俺は違うと思っている。
今までの質素な生活を続けて、カイルキアのところでいきなり不自由のない生活を望むどころか、自分で働く方を選択したのだ。提案者はレクターだったが、あの子の持つ異能のためだ、仕方がない。
「だが……ああ、マンシェリー! 俺をお父さんと呼んでくれるだろうか?」
式典の準備は順調だ。
湧いてくるバカな強固派の対応も、順調に進んでいる。
マンシェリーには、勲章を与える式典と偽っているので、そちらの偽装も抜かりない。
マンシェリーには、バカ息子伝に、式典で臣下達に食べさせるパンを考えて欲しいと伝えたが、どんなパンになっているのか。
久しく口にしていないので、俺も食べたい!
「たーべーたーいぃいいいいいいい!!」
バカ息子とカイザーが羨ましい!!
毎日でなくとも、定期的にマンシェリーが手掛ける美味いパンが食べれるのだから!!
ああ、式典の前にもう一度会いたい。
だが、『莫迦』どものせいで下手に俺も動けないのだ。
「陛下。お腹が空かれたのですか?」
戻ってきたカイザーに、俺はキッと睨みつけたのだ。
「戻ったか? シュラは」
「殿下は、フレイズ殿とご一緒に。パン作りの復習をなされていらっしゃいます」
「? 復習?」
「フレイズ殿が、姫様に習われた方法にやはり衝撃を受けましてな? 私めよりも、殿下を御指名なされてアーネスト殿のところに向かわれました」
「……例の魔導具か?」
「はい。二回に分けた発酵の工程が特に難しいですので」
「…………土産は?」
「はい。今回はきちんと」
カイザーが魔法鞄から取り出したのは、三種類のサンドイッチのようなもの。
ようなもの、と思ったのは。俺が若い頃、お忍びで城下で見てきたパンのどれとも違うからだ。
「これが、式典で食べさせるやつか?」
「いえ。今回は我々のためにです。式典では普通のサンドイッチになさるようです」
「なるほど。で、卵以外は見たことがないが、中身はなんだ?」
「左のフライはシャケです。右は、あまり陛下にはお出ししていない、サバと言う青魚を塩焼きにしたものになります」
「サバ……たしかに、俺が口にする機会はほぼないな?」
結構生臭くて、王族が口にする機会がほぼない。
しかし、鼻を近づけてもその独特の臭みがほぼないのだ。マンシェリーはどのようにして、それを無くしたか気になるが。まずは、食べてみよう。
フライは俺の好物だから、最後に。
まずは、卵から。
絶対美味いと断言出来るそれは、香ばしく、素晴らしく柔らかいパンとの相性が抜群だった!
「美味い!! この卵もだが、やはりマンシェリーが手掛けるパンは最高だ!!」
「ですな。この卵はコカトリスのものですが、滋養にいいですからね?」
「ああ。……さて」
勢いで飲むように食べてしまったが、問題のサバ。
サバの上にはレモンのスライスが一緒に挟まっていた。魚にレモン……合うのか? と、恐る恐る口に入れてみたが。
「!?」
多少、魚特有の臭みはあるが、気にならない!
塩でシンプルに味付けして、焼き目が香ばしい皮。冷めているのに、ふっくらとジューシーな身。
サバ特有の脂身にも臭みはなく、むしろ、肉のような蕩けるような旨味と舌触り。
パンとの相性もさることながら、いったいどうすればこうなるんだ!?
「……殿下。そちらには、神が姫様にお与えなさった『酒』で臭みを抜かれたらしいのです」
俺が夢中になって食べ終えたら、カイザーがそう切り出してきた。
「神が?」
「定期的に、夫婦のお姿でご交流されていらっしゃったそうなのです。他にも、まだ未発見かもしれない食材を」
「……マンシェリーのためか」
「おそらくは」
だが、それを活かせるのも、あの子の技術だ。
莫迦な臣下共は、どう驚くか楽しみだが。
当日のパンも実に楽しみだ。
最後のシャケのフライも味わって食べようと思ったが。
これも美味すぎて、また飲むように食べてしまったのだった。
次回はまた明日〜




