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145-3.第五回パン教室③(フレイズ視点)

お待たせ致しましたー






 *・*・*(フレイズ視点)









 違う。


 違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!


 全然違うんじゃ!!


 私がかつて師に教わった、再現しようと苦心されたレシピとまったく!!


 チャロナ嬢(王女殿下)からご教授いただいた、パン作りは何もかもが違っていたのだ。


 生地の捏ね方、扱い方。


 無心に叩きつけるどころか、とても丁寧で。


 全然、全然違ったんじゃ!?


 おまけに、生地を寝かす方法まで違う。


 それに、姫様がお持ちの独特の技能(スキル)


 時間を短くするなど、きっと世界中でどこにもないだろう!!



(これが……王女殿下の前世での経験と異能(ギフト))



 かつて、【枯渇の悪食】によって失われたレシピそのもの。


 そして、サンドイッチにするための具材も全然違うんじゃ。


 卵だけでなく、魚を使うとは初めてじゃ。


 味見させていただいた、強い酒精を感じる水のような酒を使って臭みを抜く方法。酒とは、ワインなどで料理の旨みを足す程度しか知らないでいたが。


 いったいどうなるか。


 少し、いや、だいぶ楽しみじゃ。


 とにかく、先にシャケを揚げるそうじゃが。



「シャケに、両面に軽く塩と胡椒を振って。あとは、衣をつけていきます」


「お姉様? 衣と言うのは?」


「リーン様。コロッケを食べたことはありますか?」


「お忍びで少々」


「あと、以前に召し上がっていただいたメンチカツもですが。パン粉をまとわせるまでの下準備です。それを衣と言います」


「まあ!」



 コロッケの手順と同じく、粉を軽くつけ。溶き卵、最後にパン粉。


 それを、姫様の契約精霊であるロティが変化した魔導具のような調理器具。普通とは違うフライヤーに入れていく。


 上質な油の中で踊るように揚がっていくシャケは、実に美味そうだった。



「出来ました」



 揚がったら、シェトラスが切り分けて味見をさせていただけるようだった。熱いので、フォークでいただくことになったが。せっかく作ったタルタルソースもと、ほんの少量つけて食べれば。



「ほっふ!? うっま!!」



 たしかに、臭みがほとんどない!


 シャケの風味はするが、それだけだ。


 揚げて、衣がサクサク。中は火がきちんと通って柔らかくてジューシー。そこに、作ったタルタルソースが加わると。これまで見知っていた揚げ物の概念が変わってしまった。



「美味いんだぞ!」

「美味ですなあ?」

「美味しいですわ!」

「ええ、本当に」



 おかわりが欲しいところだが、これはあくまでパンの材料に過ぎない。


 だから、今からパンを形作る方法を伝授していただかなくては。


 まずは、私のこれまでの常識を改めて捨てなくては。



「基本は、分割と大きな差はありません。このように手の上でしっかり丸くさせるだけです」


「……それだけかの?」


「これも慣れないと苦手な人は多いです。きちんと閉じ目を下にして、表面をつやつやにしなくてはいけません」


「お、おう……あれは大変だった」



 生地を分けるまではまだ良かった。じゃが、そこから軽く丸める部分。


 毎日指導を受けているシェトラスよりも、キツく生地を丸めてしまい。何度やり直したか。


 なので、試しに姫様が綺麗に丸めていくのを見てからやってみたが。


 ぎゅーぎゅーに潰しかけてしまい、アイリーン殿やエリザベート殿と同じようになってしまったのだ。



「……難しいですわあ」


「本当に。チャロナさんとシェトラス達はすごいわね?」



 そう。姫様に、シェトラスとエイマーは。音が聞こえそうなくらい、素早く丸めては鉄板に載せていき。


 あと少し、は我々が練習するためにと指導をしながら丸め方をご教授してくださった。


 私には姫様がついてくださった。



「うーん? 一度、調理台で丸めてみてください」


「こうか?」


「一定の方向だけでなく。なんと言いますか……閉じ目を内側に巻き込むイメージで転がしてみてください」


「巻き込む?」


「閉じ目も大き過ぎると、焼き上がりの時に横に広がっちゃうんです」


「ううむ……」



 フレイズ=アルトリュ、138歳。


 まだまだ若輩者に過ぎんと自覚したのじゃった。

次回はまた明日〜

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