表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

577/825

143-3.宮廷料理人①(シュライゼン視点)

新キャラ登場






 *・*・*(シュライゼン視点)







 今日の俺のすべきことは。


 先日のパン教室で、マンシェリーに分けてもらった『食パン』をとある人物に食べてもらうことなんだぞ!


 宮廷料理人の長。


 そして、シェトラスの師匠。


 魔法鞄(マジックバック)に入れていたから腐敗も味落ちもしない。


 出来立てではないけど、最高の状態で食べさせることが出来るんだぞ!


 あの人には、今日に合わせて時間を作ってもらい、俺とか爺やが普段使う調理場に来てもらうことにした。



「……参上致しました、シュライゼン殿下」



 現れた人物は、小柄。


 久しぶりに会うけど、相変わらず小柄だ。


 体格もだが、背丈も。


 同席しているアーネスト殿と同じハーフエルフだけど。俺よりは断然歳上でも彼らにとっては若い。


 風貌とかも、アーネスト殿が初老の域なら……彼女(・・)はまだ俺くらいか。


 それくらい幼いのだ。けど、ゆうに百歳は越えているらしい。



「待ってたんだぞ! フレイズ殿!」


「極秘とは伺いましたが……何故、アーネスト殿まで?」


「ふふん! 儂の二番弟子となった者と関係があるからじゃ!」


「!? あの噂は……嘘ではなかったんですかの?」


「当然よ! じゃが、フレイズ。その者の正体は極秘じゃ」


「ほほう?」



 とここで、アーネスト殿が厨房に防音結界を張ったんだぞ。



「我が二番目の弟子となったのは、長年行方知れずだったマンシェリー王女殿下じゃ。……現在、お主の弟子の一人であるシェトラスがいるローザリオン公爵家に滞在している。あの鼻垂れ小僧のカイルキアが、数ヶ月前に見つけたのじゃ」


「!? 王女殿下が! 私の弟子のシェトラスのところに!? 何故……何故城に帰還させないのですか!?」


「色々あって出来ないんだぞ。だが、その代わりに彼女が手がけてくれたものを、今日はフレイズ殿に食べてもらいたいんだ」


「? 食べて欲しいもの、ですかの?」



 魔法鞄から、食パンを取り出して。まずは包丁でスライス。


 マンシェリーが言うにはそのままでもいいらしいが、トーストと言う手法がとてもいいらしい。


 気をつけながら、人数分を窯に入れてバターを載せて炙っていく。


 焦げすぎず、かと言えコゲ目は少々つけて。


 バターが溶けてパンに広がっていったら完成だ。



「バタートーストなんだぞ!」


「?……聞いたことがない方法ですな?」


「とにかく、何も言わずに食べて欲しいんだぞ!」


「このパンと王女殿下が……? 殿下がおっしゃるのでしたら」



 自分でも、パンに関しては全然だと知っているので。マンシェリーが手がけた食パンをトーストにしたものを恐る恐る手に取った。


 香ばしく、バターの甘い香りに引き寄せられたのか。


 我慢が出来ずにひと口。


 バターの部分ではなかったが、ひと口食べただけなのに、顔が見た目通りの少女のごとく綻んでいった。



「……どうじゃ?」



 アーネスト殿が聞くと、フレイズ殿はこくこくと首を縦に振った。



「美味いで片付けられない!? なんじゃ、このパン! ふわっと、カリッとほんのり甘いのに香ばしい!! むせないし、噛みやすい! なんですか、このパンは!?」



 自分でも作れないパンを賞賛するあたり、マンシェリーの実力が本物だとわかったのだろう。



「俺達も手伝ったけど、ほとんど我が妹が手がけたパンなんだぞ!」


「!? しかし……【枯渇の悪食】で潰えたレシピをどのようにしてここまで?」


「マンシェリーは、神に愛された子だったんだ。前世の記憶を蘇らせて。パンの職人だった知識と経験。あと、異能(ギフト)を与えられてこのパンが出来たんだ」


「!? 素晴らしい……と言うことは」


「うん?」


「あの弟子は、毎日のように姫様のパンを……! 素晴らしい手ほどきを目の前で!!」



 ムッキー! と腹が立ったのか残ってたパンを咀嚼しながらむくれるのだった。



「そして、元々の素質もあった錬金術も一番弟子と遜色ないと判明してな? じゃから、もし城に戻ってもいいように儂の弟子にしたんじゃ」


「……なるほど。で、私を呼ばれた本来の用件は?」


「近いうちに、あの子が王女だと言うことを明かすための式典をするんだ。そこで、おバカな臣下達にマンシェリーのパンを食べさせる予定ではいるんだけど。先にフレイズ殿には知って欲しかったんだ」


「……たしかに。いきなり突きつけられても誰も食べようとはしませんな?」



 で、俺が残して置いた食パンの残りをじーっと見つめるのだった。


 まだ食べたそうだったんで、スライスしてからそのまま渡してあげた。



「式典は約二週間後。マンシェリーも日々行儀作法を受けている。王女に戻るかどうかはわからないが、帰還は一度させるつもりだ」


「ふむ。私は当日に同席させていただいて、このパンなどの素晴らしさをバカ共に伝えれば良いのですかの?」


「そうして欲しいんだぞ」


「……一度。お会いしたいですなあ」


「じゃ。あと一回だけパン教室があるから。行くかい?」


「是非!」



 味方が増えることは大いに嬉しいんだぞ!

次回はまた明日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

こちらの作品も出来たら読んでみてください。
下のタイトルから飛ぶことが出来ます。



名古屋錦町のあやかし料亭~元あの世の獄卒猫の○○ごはん~


転生したら聖獣と合体〜乙女ゲーム攻略のマッチングを手助け〜
ツギクルバナー
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ