140-2.川で釣り準備
お待たせ致しましたー
ドッキドキの乗馬が終わったのは、清流が美しい川に着いた時だった。
ジークフリート君から前回同様に抱っこで降ろしていただき、ちょっと足がガクガクしたけど大丈夫だった。
日本のように舗装されているわけではないので、岩とか石とかがまばらだったが。それもまた自然の造りだ。
川は深そうには見えないが、遠目から見ている時に魚が跳ねるのが見えた。
「……チャロナ。ひとつ聞きたい」
「はい?」
ジークフリート君を自由にさせてあげてから、カイルキア様がこちらにやってきた。
「……お前は。虫は平気か?」
「? はい、大丈夫ですが」
「釣りの餌にする、虫をまず探す。出来るか?」
「はい!」
ああ、たしかに。
あのパーティーの女の子でも、シミットとかはミミズに似た虫を手にするのとか全然ダメだった。
逆に私とかは、孤児院で遊ぶ感覚で捕まえたりして。リンお兄ちゃんが居た頃も釣りに出かけたりしたので大丈夫だったのだ。
「……そうか。とりあえず、探すか」
「はい!」
それからだいたい十分後。
石の囲いを作って、その中に大量の虫の集合場所を作ったのでした。
「……これくらいなら大丈夫だな?」
「はい。この辺りは何が釣れるんですか?」
「イワナ、とマスだな。ニジマスと言うのも居たはずだ」
「……日本と同じです」
「魚の種類がか?」
「はい。他にもあるんですが」
前世の世界が関連しているのか、それとも単純に似通った世界なのか。わからないが、今ここでカイルキア様と話し合ってもきっとわからない。
だから、話はやめようと告げて、カイルキア様はご自分の魔法鞄から二人分の釣竿を持ってきてくださった。
「これだが」
「立派ですね!」
「フィーガスが釣り好きだったからな? 旅をしていた時も何度か買い替えたが、今回はチャロナにも使いやすそうなのを選んできた」
「ありがとうございます」
リールとかはないけど、しっかりした竿に強度がありそうな糸に釣針。
怪我をしないように受け取ってから、私達は餌をつけて岸辺に向かう。滑らないように歩き、岩場ではなくて砂利のところで。
私は一応ワンピースだからだけど。
「餌がいい物だから、きっとすぐ釣れるだろう」
「頑張ります!」
どれだけ釣れるかわからないが、釣り過ぎも良くない。
生態系云々もあるが、魔法鞄には生物はほとんど入らない不思議な仕組みなので。ブロック肉はともかく、生きた状態は難しい。
私の無限∞収納棚はまだ試していないけど、出来るかな?
そして、釣りがスタートしてから十分も経たないうちに。
お互いに大きなマスを二匹ずつ釣れたのでした。
「でかいな……?」
「大きいですね?」
「……解体して、俺の魔法鞄に入れるか」
「私がしましょうか?」
「いいのか?」
「はい。冒険者の時は毎日のようにしていたので」
「……なら。俺は小ぶりなのを釣ってこよう。それはここで食べるか」
「はい」
不思議。
最初の時は、あのパーティーにいたことをカイルキア様の前で話しても泣きじゃくっていたのに。
まだ数ヶ月程度の今では、少し懐かしい思い出になっていたのだ。
次回はまた明日〜




