140-1.デート出発
お待たせ致しましたー
*・*・*
デート。
デート!!
デート!!!!
今日こそデート!!
昨日の爆睡事件にはならずに、朝一番に目が覚めたので。一緒に起きたロティと身支度を整えてから、厨房に向かう。
まだ寝ててもいいのに、とシェトラスさん達には言われたが。今日はおやつ以降にお屋敷に帰ってくる予定なので、改めてパンの焼成などをお伝えするためだ。
「いってきますね」
「『「いってらっしゃい」』」
『でふぅううう!!』
朝ご飯をしっかり食べてから、待ち合わせである玄関に向かい。
今回も、カイルキア様は冒険者風の軽装。でも、こざっぱりとしていてとっても素敵。
ほんと、なんで今回も私なんかをデートに誘っていただけたかはわからない。
とりあえず、ロティは私がカイルキア様の横に着くと影の中に入ったのだった。
「……では、行くか」
「は、はい!」
「今日は川に向かう。釣りの予定だ」
「釣り、ですか?」
「俺の提案だが、嫌なら変えるが」
「いえ、是非!」
釣りなら出来る。
何故なら、前世の記憶が蘇るまではへっぽこ冒険者の端くれだったからだ。
毎回じゃないけど、魔法も戦闘も今と違ってペーぺーだった私には、唯一パーティーの皆とも出来た共同作業のひとつだった。
(……もうすぐ三ヶ月くらい経つけど。皆どうしているんだろう?)
雑事全般を私に任せていたのに、いきなり自分達でするのって結構大変だと思うけど。でも、過ぎたことを心配し過ぎてもいけない。
カイルキア様の手を取って、私は二度目の乗馬をすることになった。
少し駆け足で向かうことになったが、まだ緊張はするけど周りを見る余裕は出来た。
背中を預けるのも、前よりはマシだと思う。相変わらず私は好きな人に触れているから心臓はバクバクだけども!!
「……ここいらは、公爵家の領地でも。全体の半分もない」
森に入る前に、カイルキア様が話しかけてきた。
「私はお貴族様の事情をほとんど知りませんが。カイル様が治める領地が、全部じゃないんですか?」
「ああ。俺はまだ当主を継いで一年も経っていない。継承はしていても、まだまだ父上達がやりくりしている部分も多いんだ」
「……大変ですね」
「毎日パンを作っているお前に比べたら、書簡を見るか。たまに視察に行くくらいだ。大した手間はない」
「それでも、ですよ」
ファンタジーな世界としか、今だと認識していない私でも。お偉いさんとかのお仕事事情はほとんどわかっていない。
だから、毎日お仕事を頑張っていらっしゃるカイルキア様のお力になれるように、美味しいご飯しか作れないけども。
「……そうか。……あと少しで着く。時間が早いから、釣りをしてから弁当でいいか?」
「! はい! 今日はお米じゃなくて、ミニハンバーガーをたくさん用意させていただきました!」
「あのサンドイッチのようなものをか?……なら、釣りで腹をすかせねばな?」
「はい!」
なので、急ごうとカイルキア様が手綱を掴んでいない手で、私の腰回りに腕を回されて!?
さらに密着することになり、私は悲鳴を上げるのを堪えたのでした。
次回はまた明日〜




