136-4.久しぶりの美声(フィーガス視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(フィーガス視点)
まさか、姫様からもう祝いの品をもらえるとは。マックスから知らせを受けた時は、カーミィと一緒に驚いたもんだぜ。
普通の菓子と違い、崩れやすいもんだと実際に食べてわかったが。これならカーミィも気にいる品だと確信は持てた。
だもんで、軽く姫様の魔法訓練を終えてから自分の屋敷に戻り。表面上、まだ懐妊したばっかなので腹は目立っていないが、少し服を着込んだ愛しの婚約者が出迎えてくれた。
「おかえりなさーい」
「おう。帰ったぜ? 姫様からの祝いのやつがこれだ」
「わー? お菓子?」
「先に試作の方でちぃっと食っちまったが、美味かったぜ?」
「わーい!! お茶しよしよ!!」
軽いもんだったから、すぐに渡せば踊り出す勢いでテーブルに持って行った。メイドを呼んでも良かったが、姫様んことを話すのでカーミィが淹れてくれた。
まだまだスムーズに動けるので、無理ない範囲で動くようにしている。
箱を開ければ、一度姫様に見せてもらったが、相変わらず美しい紋様と焼き加減。ホールでもらえるとは思わなかったようで、カーミィはほう、と感嘆の吐息を漏らした。
「すげーだろ?」
「……うん。すっごい!! お師匠様から、二番目の弟子にするって聞いた時はびっくりしたけど、納得!! パンも凄いけど、お菓子作りもピカイチだもん!!」
「一番弟子のお前さんは、なんで料理はダメなんだろーな?」
「むー……。わかんない」
「とりあえず食おうぜ? こいつにはコーヒーも合うらしいが、ミルクティーでも美味かったぞ?」
「ほんと?」
「俺がミルク取ってくっから、紅茶頼んだ」
「うん!」
料理はダメ。けど、一度姫様に見てもらったお陰か、ダメ加減がマシになったとはいえ。まだまだ独創的な料理になるカーミィは、茶やコーヒーを淹れる技術は上がった。
俺のために、という理由が強く。婚約してから仲良くなった屋敷の古株メイド達にきちんと習い直したからだと。ほんと、いじらしい婚約者だぜ。
取ってきてから、いい香りのする紅茶をカーミィが淹れてくれたので、早速ひと口。ミルクを入れてなくても、芳香が鼻をくすぐる美味い紅茶だった。
「……また腕上げたな?」
「えっへへー。今はコーヒー飲めないから、紅茶は頑張ってるの!!」
そう言って、ぽすんと俺の腕の中に収まるこいつが可愛くて仕方がない。
そこで、俺は意識して『魅惑の美声』を久しぶりに発動させた。
【……俺だけのために、だろ??】
「ちょ、フィーさん!?」
わかってて使ったら、カーミィの体から力が抜けて。へにょへにょになりながら俺にしがみついてきた。
【はっはっは!! たまにはいいだろ??】
「もう、もうもうもう!! その良い声で話さないで!? せっかくのお菓子食べれない!!」
「……へーへー」
もう少し遊びたかったが、たしかにその通りなので。
俺がカーミィの代わりに、菓子を切り分けて食べさせてやったのだった。
次回はまた明日〜




