134-3.好きな人が可愛い
お待たせ致しましたー
*・*・*
何か、あったような。
そんな気がするのに、思い出せない。
でも、今は。
好きな人に、新しいおまんじゅうを食べてもらわなくては!!
レクター先生が『行っておいで?』と言ってくださったから、ロティといるんだけども!!
カイルキア様は、いつも通りの無表情で出迎えてくださったんだけど。ほんの少し……違和感を感じた。
なんだっけ? と思っても思い出せない。
だから、気を取り直してカスタードまんをロティと一緒に応接スペースのテーブルに用意したのだ。
「お待たせ致しました。カスタードまんです!」
「カスタード……は。クリームパンやこの前のゴマダンゴに使っていたのか?」
「はい! おまんじゅうにもとっても合うんです!」
コンビニの中華まんは本当にバリエーション豊富なので。しょっぱいものから甘いものまでなんでもござれ。
特に、カイルキア様は甘いものが大好きだから、きっとカスタードまんも気に入られると思う。昨日の肉まん騒動もすごかったからね?
『トロトロ甘々でふよぉおお!!』
「ほう? 熱いカスタードか?」
『でっふ! でっふぅうう!!』
ロティも進めてくれたお陰で、わずかだけどカイルキア様の口元が綻んで。思わず、胸がキュンとするけど、はしゃいじゃいけない。
カイルキア様が綻んだのは、カスタードまんによ?
だから、私にじゃない!!
とりあえず、カスタードまんだからコーヒーを淹れさせてもらい。先に手にとっていたカイルキア様は中華まんの柔らかさに改めて驚いていた。
「やはり……パンと似ているようで違うな??」
「材料はパンとそこまで大きな違いはありません。発酵もさせますし。違いは焼くのではなく、蒸すからだと思いますが」
「……そうか。いただこう」
そして、なんのためらいもなくかぶりつき。
大きなひと口で、カスタードのところまで行き着いたようで、無表情でもほっぺが赤くなった。
「どう……でしょうか?」
味見はしたけど、カイルキア様の好みの味付けなのかは心配だったから。
カイルキア様はよく噛んで飲み込むと、うんうんと頷いてくださった。
「濃厚だが、いい甘味だ。周りのパンのような部分ともよく合う!……意外だ。コーヒーの方がいいな?」
ひと口召し上がってから、私が淹れたコーヒーも飲んでくださり、キョトンとした顔になった。
(か・わ・い・いぃいいいいいいい!?)
ちょっと強面だけど、美しい男の人なのに可愛いってなにこのギャップ!?
これがギャップ萌えと言うのか? 言うのか!?
とにかく、用意したカスタードまんを三つ全部食べてくださったので、私はいちいち可愛い反応をされる雇い主に内心悶えながら耐えて。
終わったら、ワゴンを押しながら退室したのだが。
胸の辺りが湿ってた感触に気づき、何だろうと懐を探ったら。
スミレ色の、綺麗なハンカチが出てきた。けど、なぜか湿っている。
このお屋敷でお世話になってから、身の回りのものも色々いただいたけれど。こんな綺麗なハンカチは見たことがない。
誰の? 誰の?
まさか、カイルキア様が?
けど、おかしい。
さっきまでのやりとりで、私はカイルキア様からハンカチなんてお借りしていない。
とここで思い出したのだが。
だいぶ前に、カイルキア様からカーディガンをお借りしたのをすっかり忘れてて。
とりあえず、メイミーさんに洗濯の方法を教えてもらうのに。一度シェトラスさん達に半休をお願いしに行ったのだ。
次回はまた明日〜




