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132-4.将来のために(ユリアネス視点)

お待たせ致しましたー






 *・*・*(ユリアネス視点)








 次の機会は、きっともう無い。


 なのに、それを告げられなかったのはあの子が悲しむから。


 だから、少しばかり嘘をついたのだった。



「辛い?」


「ええ。けど、仕方がないわ」



 狭間に転移で戻ってきてから、私とフィルドは眠気が限界だったシアを空間に寝かせた。


 寝た途端に、体を白いモヤが覆うが私達は払うつもりはない。


 これは、この世界と密接する彼女が治める世界に必要な力だからだ。



「……いよいよ。俺達の仕事も間近、か?」


「そうね。けど、ここまで順調過ぎるのも神として疑いたくなるくらいだけど」



 姫とカイルキアをうまく取り持つためにも、シアの覚醒は必要不可欠。


 美味しい栄養素は、十分に蓄えが出来たし。その時期も間近だ。


 あとは、姫の願いがどちらかを知れればいいのだけど。



「……大丈夫だって、ユリア」



 考えが顔に出ていたのか、夫はにこにこしながら声をかけてくれた。



「……あなた」


「大丈夫だって。眞白(ましろ)の覚醒に必要なのも、この世界の改革に必要なのも揃った。だから、姫の願いもいずれ確定するって」


「けど。まだ強固派は完璧には断絶出来ていないわ」


「それこそ、俺達の出番でしょ? 今回は特別ゲストにも来てもらえそうだし」


「……特別ゲスト??」



 私の知らない間に、誰を……? と思っていたら。実態ではないが、空間を接触する時に聞こえる水音が響き渡り。


 誰かが、この狭間にやって来たのを知らせてきた。



「……やあ? フィー?」



 呼び名を呼んだが、カイルキア達の幼馴染みだったあの男ではない。


 私達以上に肌が白く、漆黒の髪に同じく濃い黒の瞳を持つ、黒衣の少年。


 我が孫であり、シアの将来的な伴侶となる(くろ)の世界の主神である最高神。


 フィルザスが、水鏡を利用して久しぶりにこの空間にやってきたのだった。



『ほんと。久しぶり、爺様に婆様?? 本当に、今力を制御してその姿でいるんだね??』


「相変わらず、性格がねじ曲がっちゃって」


『それ、爺様が言っちゃう??』




 ほんと、長兄のクロノソティスに顔だけじゃなくて性格まで似ちゃって。可愛さの欠片もないんだから。


 けど、そんな来訪の愚痴を聞くためにこの子はこの狭間に来たわけじゃない。


 浮かんだままのシアを一瞥したら、苦笑いしたけれど。



「あの子だよ?」


『この子が……シア? ディーシア??』


「ええ、そうよ。フィー? あなたの妹でもあり、将来の妻よ??」


『……まだ赤ん坊??』


「この段階にまで成長するのに、かなり時間をかけたけど。でも、覚醒は近いわ。あとほんの少し」


『……僕は。爺様達の世界のなにを担えばいいの??』



 フィーが問いかけてきたら、私達は向かい合ってから頷いた。



「フィー。お前には、生と死の再生を担う神として、ある秘術を形にして欲しい」


『? 爺様達なら出来るじゃん??』


「お前だから、だ。シアのためを思って、預けてやってほしいんだ」


『……わかった。この子に必要なら』



 自分の妻となる妹のためなら、って素直に肯定するのは憎たらしいわね?


 けれど、フィーは軽く指を鳴らしてから、私達の前に黒曜石のような結晶体を召喚させたのだった。



「ありがと。そっちの時間で、あと二年くらいしたら。シアも覚醒するから」


『絶対絶対だよー? 僕待ちくたびれたもん!』


「はいはい。そっちの仕事も頑張りなよ?」


『う……はーい』



 そして消えていった孫の精神体を見送ってから。


 私達は老成した元の姿に戻ることとなった。

次回はまた明日〜

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