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128-3.アーネスト=ラピュンツェル③(アーネスト視点)

お待たせ致しましたー






 *・*・*(アーネスト視点)








 まったく……アクシア様の再来かと思いかけたわい。


 ローザリオンの鼻垂れ小僧が、任務の任期を終えてから見つけたらしい、アクシア様の忘れ形見でいらっしゃるマンシェリー王女。


 セルディアスに戻られて、もう少しでふた月になるらしいが。本日、赤児の時以来久しぶりにお会いしたとは言え。


 堪えに堪えなければ、思わず号泣しそうになった。それほど、王女殿下はあの方にそっくり過ぎたのだ。


 快活な笑顔などは、アクシア様と違い過ぎたが。それでもあの方が亡くなられた頃を少し若くした程度。ちょうど、あの方が陛下に輿入れなさった頃か。


 それくらい、瓜二つだったのだ。



「もう! シュライゼン様、危ないんですからやめてください!」



 そして、兄君だとは知らずに、彼の方を叱り付ける表情も腰に手を当てる様も。ご本人は赤児の時に、セルディアスから離れられたのに、アクシア様と同じ過ぎだった。



「う、うう……ごめんなんだぞ。冷めても美味しかったカレーパンは、焼き立て……揚げたてだとさらに美味しいんじゃないかって」


「そこは否定しませんが。火傷をしたらもっと大変です!」


「……うう」



 ああ、そのやり取りも。


 儂が覚えている限り、アクシア様や陛下がまだ幼い頃。アクシア様の手料理を盗み食いして、お怪我されそうになった陛下を叱りつけていた時とほとんど同じだ。


 お互い、ご両親の容姿をよく受け継いでいるので、本当にそっくりじゃった。



「ほっほ。シュライゼン様、父君と同じことをされましたの?」


「アインズさんですか?」


「えー? 父上とー?」



 姫様は、まだ陛下がご自身の父君であられることと。この国の王女と言う真実を、神によって知られることを妨害させられている。だから、今は他人行儀なのも無理はない。


 とりあえず、儂の興味を惹きつけてやまない、ニーダーポットと言う魔導具については、姫様と話し合ってだいたいの構想が出来た。


 あとは、姫様の異能(ギフト)にある技能(スキル)。タイマーと言うものを見せていただいたので、時計とは違う数字の表記がかなり難しいだろう。


 そこと魔石を……と考えるのはやめて。明日の孤児院へ差し入れに行くのに持っていくと言う、シーフードカレーパンと言うのを馳走させてもらうことになった。



「ほう? コロッケのような見た目じゃな?」



 コロッケよりはさらに大きく、ひと口でかぶりつくのは難しい。


 昨日食べたのは、卵のサンドイッチだったが、美しくて思わず食べずにはいられない衝動に駆られたのだ。……恥ずかしながら、殿下の久しぶりの悪戯にかかってしまったがの?



「はい。生地を伸ばして、具を載せたら。両端をしっかり閉じて具が出ないようにするんです。そうしたら、コロッケのようにパン粉をつけて揚げます」


「ふむ。カレーと言うのは、チャロナ……ちゃんの前世で好まれた食材かの?」


「はい。食材と言うよりかは料理ですね。普通はご飯、お米と一緒に食べるんですが。パンとも相性がいいんです」


「なるほど。シュライゼン様が躍起になるわけじゃ」


「ぶーぶー」



 まったく、婚約なされてから落ち着くと思えば、父君同様に子供っぽいままですの? 儂もあまり他人事とは言えないが、とりあえずこれを今から食べるらしい。


 久しぶりに会うシェトラス達はまだ調理しているが、儂とシュライゼン様といただくことになり。


 揚げたてなので、紙に包まれたそれを手にしたら。


 簡単に食事の祈りをしたら、すぐさまかぶりつく!




「んん!?」


「美味いんだぞ!!」



 少し辛味のあるとろっとした部分もだが。エビやホタテ。イカなどが下処理されてふんだんに使われている。


 磯臭さはなく、海の幸の旨味を閉じ込めて、ただただ美味さが際立っている!


 それはおそらく、このカレーと言う部分のお陰だろう。強過ぎない辛さで、それがやわらいでいるとは言え。



「パンが……パンがこんなにも美味いと思えるのはやはり素晴らしい! この二百年間、一度もなかった!!」


「え!? アーネストさん、そんなお年なんですか!?」


「おっと。言い忘れておったの? 儂は、こう見えてハーフエルフと人間との間に生まれたから、老化と寿命が人間よりはまあまあ長いんじゃ」


「セルディアスの生き字引とかまで言われているんだぞ!」


「ほっほ。否定出来ませんなあ?」



 長生きはするものじゃ。


 弟子を取らずでいた儂が、カレリアという少女を唯一の弟子として。


 のんびり、と研究に明け暮れていた日々を送っていたのだが。


 こう言う刺激は、大歓迎じゃ。加えて、アクシア様の忘れ形見。


 彼女が望む魔導具を、なんとしてでも世に出せる形にせねば。そう意気込むことが出来たのだった。

次回はまた明日〜

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