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128-2.アーネスト=ラピュンツェル②

お待たせ致しましたー






 *・*・*









 昨日の今日だけど。


 今朝方、シュライゼン様からの魔法鳥がカイルキア様のもとに来たらしく。


 例の、ちょっと問題がある、カレリアさんのお師匠さんであり宮廷の錬金術師さんが。


 今日、このお屋敷に来られることになりました。やっぱり、私の話題は錬金術師さんの興味をくすぐるものでしかないからかな?


 まあ、私だったら興味津々になっちゃうだろうし?


 とりあえず、明日の定例会の準備を進めてていいからとも添書きがあったそうなので、シーフードカレーパンを作っていたのだが。


 最後に揚げる手前で、シュライゼン様が例の錬金術師さんを連れてきてくださったのです!



「お初にお目にかかる、チャロナ=マンシェリー嬢! アーネスト=ラピュンツェルと言う。我が弟子であるカレリアが世話になったそうだが」


「い、いえ! カレリアさんにはこちらがお世話になりっぱなしで」



 なんと言うことでしょう。


 もっと偏屈なイメージをしていたんだけど、実際はカイザークさんや執事長のゼーレンさんに負けないくらいのイケオジでした!


 イケオジ過ぎて、眩し過ぎるくらいに!


 ロティは『ふぉー!?』と大興奮状態だけど。


 握手した時の、大きな手はたしかにおじいさん特有のシワのある手だけど、職人さんのような力強さを感じた。



「お嬢さんのことについては、僭越ながらシュライゼン様やカイザーク殿からいくらか聞いている! 早速だが、儂に作って欲しい魔導具とはなんだろうか?」


「えっと……この子、ロティが変身する発酵器(ニーダーポット)と言う魔導具なんですが」


「ニーダー……ポット? それはお嬢さんの前世での知識か何かで?」


「はい。変身させてみますね? ロティ」


『にゅううううう!! 変換(チェンジ)ぃ!』



 どうやら、電化製品を理解してもらうのに、シュライゼン様とカイザークさんがほとんどお伝えされたようだ。


 けど、その方がいいかもしれない。専用の電化製品だなんて、必要がなければ誰も作ろうとしないから。


 だから、エアコンとかがないのかな?


 この世界は、日本のように四季があるから、夏は暑くて冬は寒いのに。


 お貴族様は暖炉があるから平気なのかな?


 とりあえず、ロティには変身してもらうと、アーネストさんは水色の目をまん丸にしちゃいました。



「精霊の、変身? にしては、精巧過ぎる魔導具。……なんだ? なんなんだね、この魔導具は? 上と下に扉があるがガラス窓まで」



 おーおー。研究者の顔が発動した!


 たしかに、発酵器をいきなり見たらこんな反応するよね? シェトラスさん達も最初は驚いていたし?


 今、シェトラスさんはエイマーさんとレイ君と一緒にカレーパンを揚げてもらっています。



「これが、発酵器(ニーダーポット)。簡単に言うと、パンの生地を膨らませるために使う保温と保冷の魔導具です」


「保温はわかるが、保冷? せっかく温めた生地をわざわざ?」


「えっと……私が前世で教わった技術の中に。いきなりパン生地をパンの形にすると、手にべちゃべちゃひっついて打ち粉を必要以上に付着させてしまいます。それを抑えるためですね? パンの食感にも関わってくるので」


「……ほう?」



 あ、目が光ったような気がした。これは興味をさらに持った可能性が高い。なので、上の段の扉を開けて。アーネストさんに手を入れてもらった。



「上はとりあえずこんな感じです」


「なんと!? 蒸し暑いな? この中で生地を膨らませるのかね?」


「失礼ですが、アーネストさんの調理経験は?」


「ごく普通程度だね? 昨日シュライゼン様に頂いたパンは美味だったよ! 君のその説明を聞いてさらに納得出来たね!」


「ありがとうございます。パン生地の発酵……膨らませるためにはある程度の湿り気と温度が必要な場合が多いんです。だから、魔導具で調整していい具合にするんです」


「ほう?」



 日本の家庭だと、ホームベーカリーやオーブンレンジとかで出来たけど。はたまた、可能な人はこたつで作るくらいだし。パン作りに慣れた人なら、パン生地に温度と湿度が必要なのはわかるのだが。


【枯渇の悪食】で一度何もかも消滅したこの世界では、その常識も一度で全て消えてしまった。


 その大災害から、エリザベート様や私のような異能(ギフト)の持ち主が、おそらく現在の状況まで持ち直したのに。


 なんで、パンは一度もなかったのだろうか?



「しかも、この魔導具ですが。上下とも、温度や湿り気の調節が出来る様になると尚嬉しいです」


「心得たよ。その適切な温度は……儂は冷感しかわかっていないが、暑いのだとどれくらい必要なんだい?」


「そうですね。この世界には温度計がないので」



 そこからは、アーネストさんにカレーパンの試食をしてもらうまで、あーだこーだと話し合うのだった。


 で、近くで待ってたシュライゼン様ですが。カレーパンのいい匂いに負けて、先に出来立てのを手にして火傷をしちゃいました。

次回はまた明日〜

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