127-4.第三回パン教室④(エリザベート視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(エリザベート視点)
まったく、恐れ入ったわ。
異世界の知識もだけれど、姫の調理技術も。かなり分厚いサンドイッチだと、見栄えも大雑把だと普通は思うのに。
出来上がりが、どれもこれも美しく。
そして、味も一級品ばかり。
本当に、神がお与えになられた異能様様だわ。
卵も、果物も。どれもが美しく。
食べるのがもったいないと思うくらいの出来栄え。けれど、ひと口食べたら止まらなくなりそうだったわ。
カイザーク殿が手掛けられたカスタードクリームと言うのは、卵の味が濃くてとても美味だった。
それが、果物ととても相性が良くて。たしかに、これだけの美味は手間をかける必要があるわと納得が出来た。
「では、私やシェトラスさん達は昼食の提供がありますので。皆さんは、食堂で召し上がってください」
「まあ、いいの?」
「さすがに、提供までは。ゆっくり休んでください」
本当はあなたもだけれど……は言えない。
姫は姫でも王女。けど、まだこの子はアクシアの娘と言う真実も何も知らない。
カイザーク殿から伺ってはいるけれど、まだ王女と言う真実などを告げようとすれば……その神によって記憶を改竄させられるのだそうだ。
それに、我が孫であるカイルキアと結ばれそうで出来ないことも。
ああ、何故神はこの子にそれだけの試練をお与えになられるのだろうか。
このセルディアスに戻ってこられたのだから、もういいのではと思うのに。まだ、神にはお許しいただけない。
かと言え、わたくしが伝えてもきっと同じでしょう。
だからここは。耐えるしかないのだ。
お昼用にと、姫に切り分けていただいたサンドイッチはどれもこれも美しかった。
「盛り付けられると、さらに美味しそうに見えるんだぞ!」
「はい、そうですわね!!」
「材料を準備しちゃえば、そこまで難しくはない。けど、ひと手間を加えれば。サンドイッチも人気の品になる。マ……チャロナの教えてくれた方法を守れば、城でもまだマシなサンドイッチが食べられるかもしれないね!」
今、マンシェリーと言いかけましたね? 殿下?
わたくしが目配せすれば、すぐに今のあの子が名乗っている名前に言い換えたけれど。
距離があるとは言え、姫がいつこちらに来るかはわからないもの。油断出来ないわ。
とりあえず、姫と一緒に作ったサンドイッチ。
女性用には、ひとつをさらに半分にしたものにしてくれている。男性ならともかく、女性には重過ぎるもの。
冷たい、姫直伝らしいミックスハーブティーをひと口飲んで、口の中がさっぱりしてから。
わたくしはまず、ひときわ目立っている半熟卵とタルタルソースの方から手を伸ばした。
「……まあ!」
白身は特別味がないのに、ぷるぷると柔らかく。半熟の黄身の部分を食べれば、トロッとしたものの後にやってくる卵本来の旨味。そこに、マヨネーズで強めに味付けしたソースと相性が悪いと言うことがなくて。
いつまでも、いつまでも食べていたい味だった。はしたないが、アイリーン共々あっという間に一個を食べ終えてしまった。
「美味しゅうございますわ!」
「美味しいんだぞ!」
アイリーンも殿下もとても喜んでいて。カイザーク殿も味わって食べていた。
そこまでは良かったのだけれど。
カイルキアがやってきてから、おかわり合戦と化してしまい、久々に先先代夫人として全員叱りつけたわ。
次回はまた明日〜




