【記念SS】人形を作ろう!
500話突破記念SSですん!
*・*・*(アインズバック視点)
ぬいぐるみ作りは、まず材料から吟味せねばならない。
布
綿
リボン
糸
飾り付けの宝石
などなど
男にしてはあるまじき趣味だと思われるだろうが。いつのまにか得意となっていたのだから仕方がない。
念願だった、好いていた女性と結ばれる以前からも、彼女に喜ばれ。
弟には少々飽きられたが、アクシアのためにと腕前は成人以降もメキメキと上達してしまい。
服飾にまで手を出せば、それもまた技術をモノにしてしまったために。
「うーん……今回はどうすべきか」
行方不明であった、愛娘が見つかり。
まだ父親として名乗り出てはいないが、はじめての生誕の祝い。
であれば、俺の持てる技術を集めて、最高のぬいぐるみを作るべし!
それしかない! と思っているのだが。
既にふたつ、手作りのぬいぐるみを贈っているのでどうしようか悩んでいた。
「愛玩タイプの魔物もいいが。人形……あの子を模したヴィスクドールも捨てがたい……」
だが、後者はアクシアにはいまいちだったので、娘のあの子も嫌がるかもしれない。だが、あの子のこれまでを占めているのはホムラでの生活に加えて……異世界での前世の生活。
俺達セルディアス王家の生活は含まれていない。
なら、逆に喜ばれるかもしれない。
そうと決まれば! と、出来るだけ愛らしいヴィスクドールを作ろう!
俺はすぐに材料をカイザークに手配させて、執務を無理矢理終わらせてから取り掛かることにした。
「始めるのですね、陛下」
「ああ。かなり久しぶりに作るが、マンシェリーの祝いのためだ! 愛らしく美しく作るぞ!」
石膏を準備して、一から顔の造形をする。
それで人形の顔が決まってしまう。いくら王家に属する者でも、時間は有限にしかない。慎重もだが、素早くとり行う。
顔が決まったら、身体、手足と続き。
陶器なので、焼き上げてから冷ますまでが一連の仕事。
うまくいったら、割れないように結界で保管。その後に、俺の得意とする縫い物!
衣装は、カイザークから報告を受けた、マンシェリーが式典当日に着る予定でいる正装のデザインから写し取り。
そっくり同じに縫っていく。こればかりは時間をかけたいので、何日かに分けて作業をした。
「ふ、美しい」
我ながら惚れ惚れしてしまう程の出来栄えだ。これだと、等身大の女性の衣服まで縫えそうだが。女官やお針子達の仕事を取ってしまうのはいけない。
これはあくまで、俺があの子の父親として作っているだけなのだから。
「ああ、アクシア。いよいよあの子が帰ってくる!」
城にとどまってくれるかまではわからなくとも。一度でもこの城に戻って来てくれる。
積年の思いが実現出来るのなら、神よ。
我が子を一度でもいい。赤ん坊以来の抱擁を許していただきたい。
人形の目を作りながらも、俺は思わずにいられなかった。
次回はまた明日〜




