125-4.真実と説教(リリアン視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(リリアン視点)
荷馬車に乗った時にいたのは。助けてくれたマシュラン以外に僧侶の男性に、大きな弓を背負った……多分、弓者の女性が待機していたので、おそらく、マシュランのパーティーメンバーだろう。
私もだが、マシュランが来ると無表情だったのが少し落ち着いたように見えたから。
「マシュ、そちらが例のマザー?」
「あ、うん。無事だったよ。ジェラ、この人手足をキツく縛られていたんだ。手当てを」
「ああ」
こちらに来るように、と端的に伝えてきた僧侶の男性は。杖と武具が一体になったステッキを持ち、目元だけ和らげた。
どうやら、マシュランよりは表情は乏しくともいい人らしい。いいえ、姫が在籍していたパーティーだからこそ。
ありがたく治療を受けることにして、まず両手を差し出せば。ジェラはステッキを私の手首のあたりにかざしながら、聞き取りにくい詠唱を紡ぐ。
同時に、手首の痛みが少しずつ和らぎ、その次に足と順番に治療され。完了した時に、また新しいメンバーが戻ってきた。
「だーめだめ! 首謀者全然見つかんない! どっかにとんずらしたかもしれないわ!」
魔法師だろうか?
随分と勝気な女性が、ステッキ片手にこちらへとやってきた。
「そうか。とりあえず、ギルドにも通達されていたマザーだけは見つかったよ! ありがと、シミット」
「え、マジ!? マザー見つかったの!?」
「ただ、彼女だけだけど」
「そっかぁ」
そうして、私が座らせてもらっているところに、マシュランと弓者の……ミッシュと言う無表情の女性。さらに、副リーダーらしい重戦士のメルクキスと言う男性も一緒に乗り込むことになった。
他にも、捜索隊は組まれていたらしいが、上官がいきなり来るよりも顔見知りになったメンバーがいいだろうと彼らに話をすることになった。
と言うのは表向きの理由で。
知りたかったのだ、チャロナが彼らといた期間どうだったのかを。
だから、私が希望して、孤児院跡に戻るまでに彼らを護衛に頼んだのだ。
「……すみません。ご無理を言って」
「いいえ。……僕達しか事情を知らないでしょうし」
「そう……ですね。姫のことはどこまで?」
「と言っても、僕らは姫の正体を知っただけです。何故、このホムラであなたがいらした孤児院で生活をされていたのかは……ほとんど」
「そう……ですか」
なら、どうしてカイザーク殿が姫様をセルディアスにお戻しなさった機会についても。
不思議に思うことはあったが、彼らには真実を話してもいいだろう。
吹聴している雰囲気もなかったからこそ、信用は出来たから。
「「「「真実??」」」」
「これは……おそらくセルディアス王家でもほとんど知る者はおりません」
「そんな重大な話を僕らに……?」
「あなた方だからです」
アクシア様がどのようにして、姫様をお守りなさって亡くなられたか。カイザーク殿が寝ずに五日をかけて、王家の異能を受けてこの国に姫様を亡命させたかを。
その真実を知った彼らは、一斉に目を丸くしたのだった。
「……そんな」
「「……チャロナ、が」」
「……姫、が」
「けれど、この国を去るまであの方にはお伝え出来ませんでした。伝えなかったことが正解だったか、今の私でもわかりません」
「…………伝え、無くて正解だったと思う」
ポツリと呟いたのは、ミッシュだった。
「「「ミッシュ??」」」
「姫……チャロナは、ずっと雑用係になってても笑顔だった。その裏に、今聞いた……真実がもしあったとしたら。絶対あんな笑顔になれなかった」
「姫様……が?」
「……あなたのお陰、だと思います。私は出会ったばかりだから、あなたをよくは知らない。けど、出会ってすぐに思った。チャロナはあなたに似ていた」
二年一緒にいただけでも。二年だけの絆は紡げていた。
姫様は彼らをどう思われていたのかはわからないが、きっと彼らは姫様がいた頃救われていたかもしれない。
離れてひと月以上だと言うのに、こんな言葉が出るのだから。
「……ありがとうございました。姫様を気にかけていただいて」
「けど、僕は最悪の別れ方をさせました……」
「最悪の?」
そうして、マシュランが告げた真実を聞かされた時は。
さすがの私も怒りが込みあがり、そこにいたメンバーもだが。外で歩いていたメンバーも巻き込んで、孤児院一斉の大説教のように叱ったのでした。
次回はまた明日〜




