124-4.今はまだ(ユリアネス視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(ユリアネス視点)
また、ひとつ。
あの子達のレベルが上がった。
当然だ、蒼の世界のいるところでは、人気の料理をまたひとつ生み出したのだから。
最近は、レベルアップさせてもチャロナに情報を与えることも控えているのだが。
今回は、違う。
ナビゲーターシステムを、改善すべく。今私は、『ロティ』の意識に潜り込んでいた。
「……さて」
ロティの意識。
おそらく、神である私やフィルドしか潜り込めないだろうが。
白い空間の中に、二つの緑の卵型の大きなカプセル。
ひとつは、今の幼いロティ。
もう一つは、彼女を成長させたかのような……。いいえ、姫をさらに成長させたかのように、美しく彫刻のように眠っている女性。
「…………アクシア王妃」
死んだ、とされているシュライゼン王子や姫の実母。そして、あの親馬鹿国王の最愛の妃。
何故、この空間にいるかは今彼らには語れない。
「……今が。その時でないから」
はやくても、姫の生誕祭と成人の儀をとり行える式典の時だ。
どうなるかはまだわからないが、彼女の願いは『姫のために魂を捧げる』こと。それが、死の間際に彼女が私達最高神に届けてきた願い。
だから、私やフィルドは彼女の願いを聞き入れ、かつ彼女の伯母が料理に関する異能を持っていたので。
迷うことなく、その娘に『幸福の錬金術』を与えて、異世界から核となる選ばれた魂を埋め込ませた。
当然、将来の安寧を与えるべく、婚姻の繋ぎでもある『魂繋ぎ』もきちんと組み合わせて。
ただし、娘ひとりでは不安だろうと。異能を通じて、案内人を召喚させた。核となっているのは、己の母親の魂とは知らずに。
だからこそ、娘には自分の容姿が凡人だと認識させているのだ。
他国で敢えて育てさせたとは言えど、来たる時までは王女と認識させてはいけない。
期が熟して、己の母親との選択を誤らないために。
なので、一度夢で会合させた記憶は封じたのだ。
「……もう少しだけ、待ってね? あなたにも彼女にも、良い選択が出来るように」
王妃の方の膜を触れば、ほんのわずかに鼓動が伝わってきた。
眠りにはついているが、意識はあるのだろう。しかし、まぶたが開くことはない。娘との会合で、相当な魔力を使ったのだから。
「さて。今はアップデートね?」
振り返って、ロティの膜に触れれば。
気がついた彼女は、にっこりと笑いながらこちらに手を伸ばしてきた。
「……アップデート。追加、抽出!」
『でっふでふぅうううう!!』
声が、力が重なり。
私は己の力の一部をロティに分け与えるのだった。
次回はまた明日〜




