122-3.ホットケーキ実食
お待たせ致しましたー
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悠花さんやロティ達が作ってくれた、ホットケーキのセット。
そこに、レイ君のロイヤルミルクティーが加われば。ちょっとしたお茶会に様変わりしてしまった。
「んふふ〜! ホットケーキミックスは、あたしが一から手作りしたわよ!」
「え、悠花さんすごい!」
「ホットケーキ、ミックス?」
「パンケーキの元になる、配合した粉よん。ベーキングパウダーとか砂糖とか先に混ぜちゃうのよ」
「ほう? 泡立て器で混ぜるのかい?」
「違うわよ〜? チーちゃんのポリ袋があったから、それ借りてシェイクしたわ」
「シェイク?」
「振って混ぜることです。お酒なんかでカクテルを作るときにも言いますね?」
「……今更だが、転生してきた君達の知識はすごいな?」
「そうでもないわよ?」
食べる前に、悠花さんはミルクティーをひと口飲んだ。
「? 違うのかい?」
「……そうね、ちょっと皆勘違いしてると思うわ」
と言いながら、ちらっと私を見てきたので、私もわかってしまった。
「エイマーさん、【枯渇の悪食】がもしなかったら。この世界の食文化も、もっと成長していたと思いませんか?」
「そう、だね……? たしかにその可能性はあっただろうが」
「私と悠花さんのいた世界も同じです。随分昔に大きな戦があったりもしましたが、そこから頑張って自国や他国の料理を取り入れてアレンジしたり、考えて考えて成長させたんですよ。だから、当たり前だったんです。料理も、それ以外も」
「当たり前……?」
「知識と経験が。初心者冒険者でもわかるレベルくらい、当たり前だったのよん。だから、チーちゃんのパン作りはともかく。あたしでも出来る料理は本当に大したことがなかったわ」
「……そう、か」
「とにかく! 冷めるから早く食べちゃいましょう!」
「「うん!!」
たしかに、せっかくの焼き立てを冷ましたらもったいない。
室温で柔らかくしたバターを、綺麗に焼けているホットケーキの上に載せて。
ジャムは何にしようかなと、ジャムの入ったポットを見たら。少し珍しいものがあった。
ケシの実のように粒々としたものが入っているジャム。
これは、もしかして?
「悠花さん」
「んー?」
「この粒々したのって」
「そうよ〜? エリザの婆様から直伝のいちじくジャムよん! シェトラスが昔教えてもらったんだって」
「! じゃ、まずはこれにする!」
旬のいちじくだったら、絶対に美味しい!
ましてや、エリザベート様がシェトラスさんに教えたのならきっと。
トロッとしたジャムをたっぷり載せて。切り分けてから、ひと口。
「〜〜〜〜!!」
「どう?」
「おいひい! もちもちしてて、普通のホットケーキと全然違うよ!」
「そりゃぁね? 米粉を少し入れてあるから」
「あ、それで!」
ケーキの部分は、ふわふわしてるのにもちもちと食感が良くて、優しい甘さ。そこに溶けたバターの塩気にいちじくのジャムの素朴ながらも優しい甘さが、なんとも言えない。
悠花さんの料理の腕前は、以前のおにぎりとかで知ってはいたけど。ここまで凄いとは思わなかった。
『おいちーでふぅううう!!』
ロティも気に入ったのか、フォークでちょっとずつ切り分けながら食べていた。けど、口周りはブルーベリージャムでベトベト。
すかさず、隣の席にいたレイ君が洗浄で綺麗にしてくれたが。
「うん、美味しい! パンケーキよりは食感がしっかりしているが、ジャムやバターとの相性がいい! これだけのものを君が作れるとは」
「配合と焼き加減だけ注意すれば、そんなにも難しくないわよん?」
「けど、悠花さん。これお店出せるよ!」
「うふふ〜、OLと言うか一人暮らしだと好きに作れるじゃない? 朝飯ついでについつい作っちゃってたのよ」
「なるほど」
私も前世、パン屋に就職してからは一人暮らしだったけど。家での自作以外に、売れ残りのパンを従業員価格で買ってたりしてたから。ほとんどパン食だったなあ?
けど、粉の配合でも米粉を入れるだけでこの食感。
私はいいことを思いついた!
「ねえねえ、悠花さん。エイマーさん!」
「「ん??」」
「次回の定例会ですが……子供達が簡単に作れるおやつで。米粉のクッキーを作ってみようかと思ったんです。米粉なら、お米よりも比較的安価で手に入りますし」
「いいね?」
「パンケーキ作るの難しいものね? 窯の使い方を覚えるいい機会だわ」
「明日試作します!」
パン屋ではちょっとしたお菓子も作っていたし、米粉パンも製作してたから材料があったのだ。
どんなレシピにしようか、今から楽しみ。
とりあえず、悠花さん達お手製のホットケーキは3枚で満腹になりましたとさ?
次回はまた明日〜




