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121-4.必要なこと

お待たせ致しましたー






 *・*・*









 大変、大変。


 そりゃもう大変!


 普段は使わない筋肉や姿勢になると、体が悲鳴を上げると言うわけだが。


 今はまさにそれ。


 エイマーさんと一緒になって、お行儀が悪いけど床にへたれ込んでしまっているのだ。



『ご主人様ぁ〜〜!』



 ロティが飛んできてくれたが、抱っこする余裕はない。


 全身の筋肉を使った勢いで、ひーひー言ってる状態だから。だから、顔の前に来てくれてからぽんぽんと頭を撫でるので精一杯だった。



「はい、ダンスのレッスンお疲れ様です。本当は……お辞儀のマナーもやる予定だったけど。無理そうですね? お着替え手伝いますから、お風呂にしましょう」


「「そうしますぅ〜〜」」


「チーちゃん〜、今日のおやつ。あたしがホットケーキなら作ろうかしら?」


「ホットケーキ!?」


「なんだい、それは?」


「なんですのん?」


「文字通り、あったかいケーキよん! 以前のスフレパンケーキより薄いけど食べ応えはあるわ。じゃ、ロティちゃん借りるわよ〜?」


『でふ?』



 と言って、悠花(ゆうか)さんはロティを抱っこして去って行ったのだった。


 なんで、ロティまで?


 異能(ギフト)の『幸福の錬金術(ハッピークッキング)』は私のだから、ナビゲーターのロティだけを連れて行っても意味がないのに。


 それか、単純にレイ君のためか?


 とにかく、私達は一刻も早く体を休めなくてはいけない。そのためのお風呂!


 シャミー君のお仕事もここまでなので、お礼を言ったら彼は持ち場に戻って行った。


 彼が帰ってから、急いでドレスを脱ぎ。あの苦戦していたコルセットを外してもらえば。新鮮な空気が吸えたかと思うくらい、楽になった。


 それから、簡単な普段着に着替えてからお風呂直行!


 けど、メイドさん達に支えてもらわないと無理なくらい、足がガクガクしていた。なので、お風呂も介護される感じで入ったわけです。



「……メイミーさん、ありがとうございますぅ」


「ふふ。授賞式前の付け焼き刃とは訳が違うもの? 疲れて当然よ」


「……覚えなきゃ、ダメです?」


「そうね。将来的には必要よ? アインズ様からのご指示とは言えど、あなたがきちんとしたパン作りを広めるもの。凄いことなのよ? 自信持って?」


「は、はい……」



 体と髪をわしゃわしゃ洗われながら、そんな会話をする。


 そう。私は毎日、好きなパンを作ってお屋敷の方達に喜んでもらっているが、それだけではない。


 孤児院への差し入れ定例会もだし、お貴族様であるシュライゼン様やエリザベート様にもお教えする立場になった。


 この世界は、大飢饉だった【枯渇の悪食】のせいで一度すべてのレシピが失われてしまったのだが。エリザベート様のように異能がなければ、おそらく再現出来なかっただろう。


 その最終形態が私の異能ではないと思うが。思うけど……いずれ、エスメラルダさんのように察しの強い人が何人も出てきておかしくはない。


 今はまだ、大っぴらに出来ないのだから。



「さ、泡を落とすわよ? 目を閉じて?」


「……お願いします」



 けど、私ひとりの意志ではどうにも出来ないところまで来ているから。


 日々、頑張ってパン作りや日本の料理を作るまでだ。


 そのために、美味しい料理をたくさん作る。


 今はまだそれでいいと思えた。


 そして、メイミーさんにピカピカに洗われてから。同じく、メイドのアシャリーさんに洗われたエイマーさんと一緒に湯船に浸かり。


 心身共にリラックスしてから、悠花さんの作るホットケーキを食べに食堂に向かうことにしたのです。


 けども……実際は自室でエイマーさんと一緒にぶっ倒れるくらいの筋肉痛に襲われたのでした。

次回はまた明日〜

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